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9 爽太君の相談相手

 その日の夜、圭介さんは7時ころ家に戻り、ご飯を食べていたが、爽太君は一緒に戻ってこなかった。

「爽太は、また残業?」

「いや、あと1時間もしたら帰ってくるんじゃない?」

 圭介さんは、そう言っていたが、1時間しても帰ってこなかった。

 9時半過ぎ、お店の片付けも終わり、

「先にお風呂入って、くるみさん」

と瑞希さんに言われて、お風呂に入った。


 お風呂からあがると、リビングで爽太君が、夕飯をもくもくと食べていたところだった。

「あ、お帰り。お疲れ様」

と言うと、爽太君は、少しだけ顔を上げて、

「ただいま…」

と答えた。そしてまた、もくもくとご飯を食べだした。

「爽太、食べ終わったら食器片付けておいて。お母さん、お風呂に入ってくるわ」

 瑞希さんが、着替えを持って、リビングに来てそう言った。

「うん」

「あ、私が片付けておきます」

「あら、悪いわね。そうしてくれる?」

と言うと、瑞希さんはバスルームに行った。


「コーヒーでも淹れる?」

と聞くと、

「う~~ん、すぐに寝たいからいいや」

と、爽太君は答えた。リビングではテレビがついていたが、爽太君は、まったく観ていなかった。

「圭介さんは?」

「部屋に行ったから、寝たか、パソコンしてるか…」

「そう。じゃ、クロも一緒に行ったのかな?」

「うん、ついていってた」

 お茶を飲むと、爽太君は、

「あ~~~~~~~。腹いっぱいになった!」

と、満足そうに言った。


「ああ、そうだ。ね、くるみさん。今度の水曜の夜、ご飯でも食べに行かない?」

「え?」

「俺、明日あたりから、けっこう暇になりそうだから、水曜、定時に上がれそうなんだ。そんなことそうそうないし」

「定時って何時なの?」

「5時半だよ。うちの会社、9時始まりで、5時半に終わるんだ」

「知らなかった…」

「はは…。ほとんど、不規則だったしね」

「いいよ。私も何もないし…」


「ほんと?じゃ、車出すからどっか、ドライブがてら、夕飯食べに行こうよ。どこがいいかな。何が食べたい?」                  

「なんでもいいよ。爽太君の食べたいもので」                   

 爽太君は、どこがいいか、嬉しそうにわくわくした感じで、考え出した。

「ドライブ好き?」

と聞くと、

「え?うん。何で?」

と聞いてきた。

「だって、嬉しそうだから」

「そう?そうかな…」

と、言いつつも、やっぱり嬉しそうだ。


「じゃ、どこがいいか、決めとくね」

「うん」

「さて、母さんが出たら、俺も風呂はいって寝ようかな」

「そうだよね。早くに寝れるときには、寝たほうがいいよ。うん」

「うん」

 でも、爽太君は、なかなかその場を離れなかった。私は、爽太君の食べた食器を運んで、キッチンで洗い出した。すると、横に爽太君が来て、

「手伝うよ」

と言ってきた。

「え?大丈夫だよ。休んでて」

「うん」

と言いながらも、爽太君はその場を離れずにいた。


「今日の、あの子」

 私は、思わずそう口走り、あ、何を聞き出そうとしてるんだと、途中で止めたが、

「桂木さんのこと?」

と、爽太君の方が、桂木さんの名前を出してきた。

「え…うん。名古屋から来たって…。わざわざ爽太君に会いに来たんだね」

「うん…」

「爽太君が、前に言ってた、好きだったっていう子でしょ?」

「え?うん」

「変わってた?変わってなかった?」

「全然、変わってなかったよ」

「そうなの?五月ちゃんとはまったく、違うタイプだったね」

「え?そう?」

「うん。ああいう子がタイプ?」

「いや。別に…」

 爽太君は、言葉数がやけに少ない。あまり桂木さんのことは、話したくないのかもしれない。


 私は、黙って食器を拭いて片付けた。

「カウンターで聞いてた?」

と、いきなり爽太君が、聞いてきた。

「え?何を?」

「俺らが、話してた内容」

「あ…。途中までね。ごめんね。聞くつもりはなかったんだけど…」

「うん…」

 なんだか、ばつが悪い、そんな感じだ。まるで、盗み聞きでもしていたかのような…。


「なんか、驚いちゃって、俺…」

「え?何に?」

「うん…。桂木さんが、まだ俺のこと思ってたこと…」

「……」

「転校してすぐには、メールのやりとりもしてたんだ。それが、いきなりこなくなってさ」

「向こうから?」

「うん…。だから、もう駄目になったと思って、俺もメールしなくなって、それっきり」

「そうだったんだ」


 爽太君とリビングに戻った。そして床に座り、爽太君は話を続けた。

「会いに来てくれるとは、思ってもみなかったな」

「嬉しかった?」

「え?」

「会えて、嬉しかった?」

「うん。でも、緊張した~」

「そうなんだ…」

「うん。俺ってもしかして、つくづく女の人が苦手なのかなって思った」

「え?」


「だって、あんなに緊張したり、何話していいかわかんなくなったりしたらさ、やっぱそう思うよ」

「誰に対しても?」

「うん。五月ちゃんでも、桂木さんでも、会社の人もそうだし…」

「そう…」

 あれ?じゃ、瑞希さんの言う、爽太君の好きな人って?

「桂木さんと付き合ってたときは、もっとドキドキしてたんだけど、そういうのもなかったし」

「ふうん…」

「……」


 爽太君は、黙ってこっちを見ていた。私も、爽太君の顔を見て、

「あれ?でも、私も女なんですけど…」

と言ってみた。

「え?」

「私といても、緊張している様子ないね」

「うん」

「そう。あ、家族みたいなものだからかな?」

「うん、そうかな…」

「お姉さんみたいな、そんな感じ?」

「……」

 爽太君は、何も言わなかった。


 お風呂から上がってきた瑞希さんが、

「爽太、お風呂いいわよ」

と言ってきた。

「あ、うん」

 爽太君は2階に上がり、着替えを持って下りてきて、バスルームに向かった。

「じゃ、おやすみなさい。くるみさん」                   

 瑞希さんはそう言うと、2階へと上がっていった。


 私は、なんとなく自分の部屋に行く気になれず、そのままリビングで、テレビを観ていた。

「家族みたいなものか…」

 爽太君にとって、私は唯一話しやすい女性なのかな。喜ぶことなのかどうなのか、考え込んでしまった。

 しばらくぼ~~っとテレビを観ていると、爽太君がお風呂から上がってきた。

「あれ?まだ起きてた?」

「うん。なんか寝れそうになくて…」

「そう…。あ、ビールでも飲む?」

「え?」

「俺も、なんか飲みたいし…」

「寝たかったんじゃないの?」

「うん。でも、ビール1本飲んだほうが、寝れそうだし」

「うん。いいよ。付き合うよ」

 爽太君は、キッチンに行き、缶ビールを2本持って来た。


 プシュって開けてから、ビールを美味しそうに爽太君は飲んだ。なんでも美味しそうに、飲むものだな…。私も、缶を開けて飲んだ。

「なんか、つまみでも食べる?」

「ううん。こんな時間に食べたら太るし、いいや」

「え?痩せてるじゃん。気にすることないよ、全然」

「それが、そうでもないのよ。最近、ちょっとずつ増えちゃって…。ここのご飯が美味しいからかな」

「そう?全然気にすることないのに。春香の方が、ぱっつんぱっつんしてる」

「春香ちゃんは、若いからよ」

「そうかな?」

「うん。肌も綺麗だし」


「くるみさんも、綺麗じゃん。今、すっぴんでしょ?」

「え?うん」

 そうだった。すっぴんだった。忘れてた。それに、パジャマだし…。でも、一緒に暮らしているんだから、そんなこと気にしていられない。

「くるみさんさ、化粧とると、幼くなるね」

「え?そう?」

「うん。ちょっと雰囲気変わる」

「そうかな…」

 なんか、恥ずかしいな。


「一緒に暮らしている特権。そうそうすっぴん見れないよね?」

「うん。こんなパジャマ姿だって」

「そうか。そうだよね」

「本当にもう、家族みたいなもんかもね」

「うん」

 爽太君はそう言うと、にこって嬉しそうに笑った。

「あ、このあとにやる番組、観たことある?」

「ううん。ない。この時間部屋に行ってること多いし」

「面白いんだよ。たまに、会社に泊まりこむ時、観てたりするんだ」

「会社にテレビあるの?」

「うん、小さいのが」

「へえ…」


 しばらく二人で、テレビを観て、大笑いをしたりしていた。すると2階から、春香ちゃんが下りてきた。

「あ、ごめん春香。うるさかった?」

 爽太君が聞くと、

「ううん。のどが渇いただけ。私も部屋で観てたよ、これ」

と、春香ちゃんはそう答えた。

「え?じゃ、ここで観たらいいのに…」

「いいよ~~。なんか、邪魔しちゃうし」

「え?何が?」

 私と爽太君の二人が、同時に聞くと、

「なんか、二人いい感じだからさ。水飲んだらすぐに2階に行くから、私」

 春香ちゃんはそう言うと、水を飲み、さっさと2階に上がっていった。


「な、何言ってるんだろうな、あいつ…」

「うん。いいのにね。一緒に観て…」

「うん。ほんとに…」

 そう言って、爽太君は、しばらく黙り込んだ。

 その番組が終わり、テレビを消して、2階に二人で上がると、

「じゃ、おやすみなさい」

と、爽太君がにっこりと笑った。

「おやすみ」

 私も笑ってそう言ってから、部屋に入った。


 ほろ酔い気分で、ベッドに横になり、すぐに私はうとうとした。だが、5分もたたないうちに、気持ちが悪くなった。

「あれ?たった1本で酔ったかな?」

 しばらく、体を横に向けていたが、そのうちに気持ちの悪さもおさまってきて、私はいつのまにか、眠っていた。


 翌朝、少しまた、気持ちが悪かった。

「お酒、弱くなったのかな。それとも、たまたまかな」

 私は、顔を洗って気持ちが悪いのを、吹っ切ろうとした。

「おはよう」

 一階に行くと、瑞希さんがさわやかに、挨拶をしてきたので、私も極力笑顔を作り、

「おはようございます」

と挨拶をした。


 7時半になり、爽太君が起きてきた。

「おはよう。あ、今日はいい天気だ」

 お店にいたクロが、尻尾を振った。

「あれ?今日はお散歩行ってないの?クロ」

 爽太君が、クロにそう聞くと、

「今日はどうやら、朝のデートないみたいよ。春香起きてこないから。彼氏サーフィンしない日なんじゃないの?」                

と、瑞希さんが答えていた。   

「そうなの?じゃ、クロ、俺と散歩行くか?」

「ワン!」

 クロは、嬉しそうに尻尾をぐるぐると振った。


「くるみさんも行かない?」

 爽太君に誘われた。

「でも、お店…」

「ああ、大丈夫よ。多分もうすぐしたら、春香が起きてくるから、ちょっと手伝ってもらっちゃうわ。行ってらっしゃいよ。気持ちよさそうよ」

 瑞希さんにそう言ってもらい、行くことにした。

「はい。じゃ、行ってきます」

 私は、まだ気持ちの悪いのがおさまらず、外の新鮮な空気を吸ったら、よくなりそうな気がしていた。


 クロを連れて、爽太君は、嬉しそうに歩いていた。

「クロと散歩、好き?」

と聞くと、

「え?なんで?」

と、聞いてきた。

「嬉しそうだから」

「あ、そう?うん。久々だからかな」

 浜辺につくと、クロは走り出した。爽太君も、クロを追っかけて走っていた。私は、石段に腰掛け、潮風に当たっていた。

「は~~、気持ちいい…」

 さっきまでの、気持ち悪さが消え、すっかり気分がよくなってきた。


 爽太君も、私の横に来て座った。

「暑くなってきたね。さすがに5月も半ばを過ぎるとさ」

「うん」

「来月には、海、解禁だ。早速、泳ぎに来ない?」

「え~~?」

「あれ?泳げないとか?」

「泳げるけど…。水着になるのが嫌だな」

「なんで?いいじゃん。」

「それに、焼きたくないし…」

「ああ。色白いもんね」


「うん。爽太君は、よく泳ぎに来るの?」

「来るよ。夏は、けっこう真っ黒に焼けるよ。すぐに白くなっちゃうけど」

「へえ。そうなの?」

「俺、色が白いの嫌なんだよね。なんか、ひ弱な感じしない?」

「ううん。全然。羨ましいくらいだよ」

「なんで?くるみさんだって、色白いじゃん」

「これは焼かないようにしてるから。焼いたらすぐ真っ黒になって、なかなか消えないよ」

「え~~?羨ましい。俺も、母さんに似たら、そうだったのに、父さんに似て、色白なんだよね」

「ふうん」


「春香は、すぐに焼けるから…。もうすでに黒いし」

「あ、そうだよね。そういえば、春香ちゃんはサーフィンしないの?」

「しないね。一回チャレンジしてたけど、どうやら向いてなかったみたい」

「そうなんだ」

「クロ!いい加減、こっち来て休みな!」

 ずっと浜辺を、走り回っているクロに、爽太君は呼びかけた。すると、

「ワンワン」

とクロは、爽太君のほうにかけてきた。そして、その後ろからもう1匹、クロそっくりな犬がかけてきた。


「クロちゃん?爽太君?」

「あれ?由樹さん?リリー?」

 黒いラブラドールと、綺麗な女性が爽太君の方に来た。

「久しぶり!」

 爽太君は、すごく嬉しそうに笑った。

 なんだ…?こんなに嬉しそうにする相手が、いるんじゃない…。そこで、私ははっと気がついた。もしや、爽太君が、好きな人ってこの人?

 そうだ。瑞希さんが、爽太君の好きな相手なら、爽太君の表情とか、誰を見てるかとか、誰と一緒にいたがってるかを観ていたらわかるって、言っていたっけ。この人かな…?


「リリー~~~!!!めっちゃ久しぶり~~~~!」

 爽太君は、目を細め、すごく嬉しそうにリリーって犬に抱きついていた。その横で、クロも、

「ワンワン」

と嬉しそうに、尻尾を振って、走り回っていた。リリーはそのあと、クロのほうに来て、2匹はすごく仲むつましく、くんくんと鼻をくっつけあったり、擦り寄ったりしていた。もしや、恋人どおし?

「あ、リリーっていってね、クロのお母さんなんだ」

 不思議そうに見ていた私に、爽太君がそう言った。

「え?」

 そうか…。


「由樹さん、こっちに戻ってるの?」

「そうよ。だんなが2ヶ月も海外に出張だから」

 だんな…?

「そうなんだ。じゃ、実家に?」

「うん。爽太君、変わらないわね。あ、この方は?彼女?」

「ち、違うって!うちの店で働いてるくるみさん!」

「あら、そうなの?てっきり彼女かと思っちゃった。こんにちは。初めまして」

「あ、はじめまして」

「由樹さん、言っとくけど、くるみさんの方が由樹さんより、年上だよ」

「え?そうなの?爽太君とそんなに変わらないのかって思っちゃった」


 由樹さんって人は、なんだか、明るくてちょっと雰囲気が、爽太君に似ている気がした。

「クロ、嬉しいだろ?久々お母さんに会えたんだもんな」

「リリーも、喜んでるわ」

「店来たら?母さんも喜ぶよ」

「うん。行こうかなって思ってたところなの。でも、まだ開店してないでしょ?」

「開店する前の方が話せるし、一緒に行こうよ。あ、でも俺、これから会社行かなきゃならないけど…」

「そうよね。平日なのに、なんでいるのかって思ったわ。会社行く前に散歩来てたんだ」

「うん。天気いいしさ」


「瑞希さん、元気?春香ちゃんや圭介さんは?」

「元気だよ。みんな変わってないよ」                  

 なんだか、爽太君は嬉しそうだった。私はやっぱり、心のどこかで、なんだ、緊張しない人もいるんじゃないって思っていた。

「ただいま!母さん!由樹さんだよ。それにリリーも!」

 ドアを開けると同時に、爽太君は叫んだ。

「あら~~~!由樹ちゃん!久しぶり。リリーも久しぶりじゃない!」

「お久しぶりです~~~!きゃ~~~、瑞希さん変わってない~~~」

 ものすごくテンション高く、由樹さんはそう言うと、瑞希さんに思い切りハグをしていた。


「由樹さん、前にうちの店でバイトしてたんだ」

 爽太君は小声で、そう私に教えてくれた。

「え?そうなの?」

「うん。で、うちで働いてるコックと結婚したの」

「え?」

「あ、今のくるみさんの部屋に住んでいた人と。今4つ星レストランで働いてて、多分、その関係で海外に行ってるんじゃないかな」

「へ~~。すごい!」


「俺、会社行ってくるけど、また、こっちにいる間に遊びに来るでしょ?」 

 爽太君は、由樹さんのほうに行くと、そう聞いた。

「うん。爽太君に会いに来るわよ」

「じゃ、その時にまたね」

 そう言うと、爽太君は、2階へと上がっていった。

 私は、クロの足を拭いてあげて、それから、開店の準備の手伝いをした。


 瑞希さんは、しばらく由樹さんと話しこんでいて、それから、

「あ、ごめんね、由樹ちゃん。そろそろ準備しなくちゃ。また、ゆっくり遊びに来て。あ、水曜日にどう?ご飯うちに食べに来ない?夜がいいかしらね。春香も爽太もいると思うし」

と、由樹さんに言った。

 水曜の夜といったら、爽太君とドライブに行く約束をした日だ。

「いいんですか?じゃ、リリー連れてお邪魔します」

「ご両親によろしくね」

「はい!」

 由樹さんは、リリーを連れて、去っていった。


「ああ、3年ぶりだわ。それにしても、クロ、お母さんのこと、覚えてたの?」

と、瑞希さんはクロのことをなでながら聞いた。クロは嬉しそうに尻尾を振った。

「ここで、バイトしてた人なんですか?」

「そうなのよ。3年前に結婚して、千葉のディズニーランドの近くに引っ越しちゃって」

「爽太君が、すごく嬉しそうでした」

「ああ、なついてたからね」

「なつく…?」

「お姉さんみたいにね。爽太がまだ、中学生のときから、うちでバイトしてたから。えっと、爽太より4歳年上かな」

「……。そうなんですか…」


 私は、ちょっと声のトーンが低くなってしまった。

「気になる?」

「え?いいえ!別に」

「本当にお姉さんみたいに思ってたのよ。そのころ、爽太、桂木さんのことが好きで、相談に乗ってもらったり」

「今の私みたいに…?」

「う~ん、そうね。そうかな?」                   

 やっぱりショックだった。爽太君の理解者は、私一人のつもりでいたし…。

 なんとなく私は、由樹さんって人の存在を気にしながら、何日間か過ごしていた。

 そして、水曜の夜に爽太君とドライブに行けることを、すごく楽しみにしていた自分に気がつき、行けないことを、がっかりしている自分に気がつき…。

 その何日間は、すっきりとしない、もやもやした気持ちのまま、過ぎていった。


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