表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殿下、私は困ります!!  作者: 三屋城 衣智子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/82

80. するりと言葉が落ちたんです




「これで準備は整った。ルル……俺とどうか、結婚してほしい」




 言うなりレイドリークス様は、私の手の甲にそっとキスを下ろしました。


 ピュィィイッ、とトルディ様あたりから口を鳴らす音も聞こえます。


 私は皆の前でとか、先ほど事件があったばかりなのにとか、思考がぐるぐるしながら、この場にいるお父様へ視線をやりました。

 お父様は……何だか嬉し涙を堪えながら口が許さんの形に歪んでいるようです。

 どうしましょう。


 こんな時なのに、どうしましょう。




 気持ちは打ち震えています。




「……は、い」


 思わず、抑えていた気持ちの中から言葉がするりと出てしまいました。

 両手で口を抑えましたがもう遅く。

 彼は、びっくりした後周りを見渡し、シュッと立ち上がると私を抱き締めます。

 複雑な気持ちから、今は手をその背中に回すことはできませんでした。




 どれくらい経ったでしょうか。




「……あー……レイドリークス、そろそろやめなさい」


 威厳のある国皇陛下の声がその場に通りました。


「なぜですか、もう少」

「もう夜も遅い、そこな彼女も疲れているであろう。結果はちゃんとお前達にも伝える。事後処理は大人に任せておきなさい」

「……わかりました」


 彼はそういうと、そっと私を離してくれました。

 ……少し悔しそうに見えるのは、きっと気のせいです。

 ドギマギしていると、お父様がこちらへ来るのが見えます。


「ルルーシア、恐らく後日陛下から説明がなされるだろうと思う、馬車を用意するから今日はもう帰って寝なさい。良いね?」

「はい、お父様」


 正直、何だかとても疲れていたのでお父様に言われた通りに、その日は家に帰って寝ることにしました。




 帰宅後、日記の続きは何だったんだろうと思い、読みかけだった所から最後まで目を通してみます。


 『私は訳がわからなかった。何故、赤茶なの、おばあちゃんは、あなたの何? 尋ねるとその人は言った。「私はかつて大魔法使いと呼ばれた者。リリアは私の最愛にして、聖女。寿命が違うのが苦しくなって彼女を手放した愚か者だ、だから私は世にはもう出ない。彼女も表に出るのをとうにやめていたと聞く。けれどせめて、我が子、我が孫たちの行く末くらいは、良きものにしたい。ま、つまりはただの好々爺なのさ」私はこの人の最後の願いを、この家に残すことに決めたけど、これで良かったのかと今でも思う。』


「この記述の人が、ウィッシュバーグ先生、だったんですね……」


 私は考えを巡らせました。

 ウィッシュバーグ先生の苗字、言われてみれば首都リッシュバージュととても似通った名前です。

 パズルの欠片がパチリパチリとはまる音が聞こえてくるよう。


 けど、何だかすごく体力を使った感じがして、本当に眠いです。

 私は一つあくびをすると最低限の寝る準備を済ませ、ベッドの中に入って目を閉じたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ