77. 守るんです
私は咄嗟に前へと躍り出ると、ローゼリア様の放った広範囲に渡る炎の渦に水流をぶつけます。
「ルルーシア!!」
お父様の声が聞こえましたが、構ってられません。
言祝ぎそっちのけで無我夢中にローゼリア様の放つ魔法に対応します。
「しつこいっ!!」
「命かかってますからしつこくもなります!!」
「報われない思いなど、不必要なだけ! わたしは必要とされたい、必要としたい!! それの一体何が悪いの!!」
「悪くない! 求めることは悪くない!! っだけど、報われなくたってその思いから生まれる言葉がある! 行動がある! そこには変化があるんです!! その努力自体を、報われなかったからって笑ったり貶めたり無くしたりする権利は、誰にもないってわからせてやりますよ私は!!」
彼女が手当たり次第に燃やしたり爆発させたりするのを魔法で打ち消し続けました。
「何よ何よ何よ、何でも持ってるからって偉そうに!」
「持ってるかもしれません、家族は優しいです、友達もできました、愛する人だって応えてくれた! けど私にだって、暗黒微笑してた黒歴史くらいあるってんですよ!! 今違うからって、この前までの私を否定なんてさせません!! これは私が足掻いて手に入れた、やっとの未来なんですからね!!」
「わ、わたしだって、いろいろ頑張ったもの! 言葉遣いが悪いって言われたら直して、皇子の婚約者の座を取ってこいって言われたら取ったわ!! けどそれがなんだって言うのよっ!! もううるさいうるさいうるさいっ!!」
ローゼリア様が全力でもって応戦してきました。
拙い、私の魔法力では太刀打ちできません、けど――
守る。絶対に。
そう思った瞬間体の内側からまるで滴るように何かの力の本流が、うねりながら駆け上がってきました。
ドン!!
それは周りを巻き込み白く輝く光の柱となって上へ上へと昇っていきます。
やがて竜まで到達すると、弾けて光の粒となり沢山、そして遠くへと散らばっていきました。
「な、なに……??」
誰ともなく、その不思議な現象に声が漏れました。
上空を見ると立ち込めていた暗雲は消え、竜の姿も見当たらなくなっています。
と、目の前に何やらちびちゃい、カシュー達と話したことのあるような手のひらサイズの生き物がいました。
外見は、黒い鱗に覆われた体、緑の瞳に鼻先にある髭、尻尾があって臙脂色の蝙蝠のような羽根のある絵本に出てくるような竜に、似ています。
『あーよく寝た。てか誰だよ起こしたの、しかも寝覚めのわりーやり方ってゆーか? これだけはしてくれるなって、俺、言ってたよな??!!』
「??!!」




