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殿下、私は困ります!!  作者: 三屋城 衣智子


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72. 心配されるんです

 結局療養には四日を要しました。


 四日目の朝にようやく普段と同じように動けるようになり、学校へと向かいます。


「姉上。言いたくないけど大人しくしてろよ? 傷は縫っただけなんだろ、あんまり動くと傷口開くかんな」

「わかってますよ、気をつけます」


 年長者のはずなんですが、馬車の中でガリューシュにまで釘を刺されてしまいました。


 学校へ着きクラスへ行くと、カシューが慌てて私の元へとやってきました。

 何日ぶりでしょうか、彼女の顔は今にも泣きそうです。


「ああ、ルル!! ララと心配していましたのよっ。あなた、あんな…………っ。無事で、よかったですわ」


 言うなり本当に泣いてしまって、ゆっくりと傷にさわらぬよう抱擁されます。

 私はそれに抱擁で返しながら、言葉を発しました。


「無茶をして、ごめんなさい。魔獣を前に功を焦ってしまいました。次は、気をつけます」


 そう、この話はあのグループとお父様や治療にあたってくださった方だけの秘匿なので、対外的には私の失敗として話すことになっていました。

 いずれ世に出る話かもしれませんが、今は拙いそうなので。


「そうね、そうしてもらえたら友人として安心だわ。もう、傷は良いのかしら」

「はい、内臓は全く。傷口の方は、まだくっついたわけではないので、少しは痛いですけど」

「無理はしないでね? 何か不便があれば言って頂戴、わたくしにも手伝えることがあるかもしれないもの」

「わかりました、困ったことがあればカシューに伝えますね」


 そう言ってもらえたのが嬉しくて、私は満面の笑顔でそう答えました。

 目の前のカシューが少し歪んで見えますが、気のせいです。


 私達はその後、授業開始のチャイムが鳴るまで、休んでいた間の授業などの話に花を咲かせたのでした。




 その日はつつがなく授業を済ませ、帰宅しました。

 数日は穏やかな日々が続きます。




 ある日の放課後、私は改めて建国の伝承が知りたくて学校の図書室へと、カシューと共に赴きました。

 初めて入ったその場所は、紙とインクと時代の匂いがします。

 今読んでいる日記と通ずるものがあり、感慨深く辺りを見渡すと、書架へと足を向けました。


「ルルは建国のことが知りたいんでしたわね、でしたらこちらだと思いますわ」


  彼女はそう言うと、確かな足取りで書架の間をすいすいと目的地へと向かいます。

 聞けば、たまにララとここで勉強会を開いてるのだとか。

 次に私も参加させてもらう約束を取り付けている間に、お目当ての場所へと着きました。

 すると該当図書のあるあたりで、見知った人物が本を片手に思案しているのを見つけます。


「……殿下?」

「……ルル。どうしてここに?」


 殿下が目当ての書架にいるので、自然私達の方から近付く形になりました。

 カシューが殿下の手の中をちらりと見遣りながら尋ねます。


「わたくしたちは建国時のことを調べに。殿下はどうしてこちらに?」

「俺も似たようなもの、かな? 建国記についてなら、この本とこの本が割と詳しく書かれていたよ」


 彼はそう言うと、私に書架から本を取り出し手渡してくれました。


「あ、ありがとうございます。殿下の探している情報は見つかったんですか?」

「残念ながら。あとは城にある文献くらいかな。父上にお願いしようと思ってるんだが、閲覧できるかどうか」

「何故調べているのか、お聞きしても?」


 カシューが興味深く、というよりも好奇心いっぱいに尋ねます。


「ん? ああ、ルルに求婚しようと思って」

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