63. 守るんです
「俺がやつを引きつける! 他の三人は魔獣の後脚に集中攻撃してくれ!!」
彼は言うなり魔物めがけてかけていき。
魔獣も来たのを迎え撃つ気で、レイドリークス様を捕捉するとその牙を彼へと向け体を駆動させました。
「わかりましたわ! 灼熱の太陽の如き炎、きたりて球となり向かえ!!」
「わかりましたよっと。突風粒となりて数多、駆けろ!!」
「っはい! えーと、泥、固まり飛べ!!」
べしゃ。
と、残念な音がして私の顕現させた魔法は地面と同化してしまいました。
ごぉぉぉぉという轟音と共にカシューとトーモリエ様の放った魔法は、彼の剣を受けている魔獣の後脚へと向かっていきます。
と、魔獣が感知したのか微妙に自分の体をずらしました。
それと同時にレイドリークス様の剣を口で咥えてしまいます。
「チッ、外した!」
「すぐに次の言祝ぎをしましょうっ」
言うより早く魔獣の前足が上がりました。
彼をその爪で引き裂くつもりです。
間に合わない!!
――嫌っ! レイドリークス様が傷つくのは、もう見たくないです!!
パァァァアアアア!!
何か手立てをと思っていると突然魔獣の後脚あたりから眩いばかりの白い光が立ち上がり、魔獣の後ろ足を飲み込みました。
明るすぎて目が開けていられません。
あたりの光が少し落ち着いた頃、目を開けます。
見ると、魔獣の後ろ足二本は完全に消失し体のなくなった部分の表皮は炭化したようで、血は出ずに、ただ魔物の生命機能は停止したようでした。
何が、起こったのでしょうか。
茫然自失としていると、どこからか不穏な空気を感じ取り、魔獣よりそちらへと意識をやることにします。
どこ。
どこなんです?
気づいた時には相手の方が動いていました。
今から制圧したのでは間に合いません。
私は、目的を変更するとレイドリークス様と相手との間のライン目掛けて全速力で走りました。
武器として携帯していた短剣をせめてもと投げつけて一瞬だけ足止めします。
「レイドリークス様、避けてください!!!!」
間に合え!!
願うように両足を動かします。
早く。
もっと早く!
どうかこの優しい人を、これ以上傷つける事がありませんように。
これまでの努力よ、どうか願いを叶えて!!
相手は最初直接手にかける気でいたようです。
声をかけたのは失敗だったでしょうか、けどそんなことはもうどうでもいい。
「!! ルルっ!!」
間に合ったので、どうでもいいです。
お腹に衝撃を受け、私はもんどりうって倒れました。
「ルル!!」
「ルルーシア様!!」
私の総力を上げたおかげか、ぎりぎりのタイミングでレイドリークス様の前面に躍り出れました。
お腹が、熱いです。
視界の端に映ったのは、先ほど逃げた彼でした。
潜り込んでいたのでしょう、そしてタイミングを図っていた。
気が昂っていたのか、気づくことができなかったのは私の落ち度か、未熟さ故か。
考えても仕方がありませんが、何だか思考がうまくできず、体もうまく動かすことができません。
「ルル!! 誰か救援を!」
「はいっ!!」
誰かに、助け起こされました。
あったかい。
「すぐに救護がやってくる、気を確かに、ルル!!」
わかっています。
けど、何だか、眠くて、寒いです。
それに、痺れて……いる、よ…………な……
「ルル? ルル?! ルル――!!!!」




