39. 断りたいんです
お父様は、今、何を?
私の様子がおかしいことに気づいたのか、言い方を変えてきいてくれます。
「ルルは、第三皇子とは懇意にしていないのだろう?」
「勿論です!! 絶対に、何の関係もないと断言できます!!」
あんな、嫌な体験をして関わり合いになんかなりたくないです! 向こうは何か思うところがあるようで、割と頻繁に見かけましたが全てかわしきりました。
大変でした……。
そんな思いがのりにのった返事だったので、お父様が珍しく目を白黒させています。
「そう、なんだね? ではこの話はおしまいに……と言ってやりたいところなのだが、少々問題が出てきてしまっていてね……」
「問題、ですか?」
「件の第三皇子が、お前に懸想して婚約を申し入れてきている」
あの。
何も感じてなさそうだった皇子が。
け、懸想??
……やられました、これは、何がしか仕掛けにきています。
お父様に相談しなかったのが悔やまれます。
逃げまわっていたのも今思い返せば悪手だったのでしょう。
思い通りにならない私に業を煮やし、手段を変えてきたのです。
「それは、断れない類のものですか?」
「あちらの公爵家の跡取りが決まる前なら可能だった……だが今は少し難しくてね。いきなりで陛下も驚いてらして、あちらからの保留で良いとの言質はとっているんだが」
お父様が言外にルルはどうしたい? と聞いてくれます。
「お父様、私好きな人がいるんです、振られる予定ではいるんですけど……けじめをつけるまではどなたとの縁もお受けできません。それに……」
私は正直に第三皇子との間にあった、短いけれど薄気味悪い邂逅を包み隠さず話しました。
「……そんな事があったのだね。それは辛かったろう。第三皇子の件は私の方で何とかしておこう。ルルは何も心配せず学校で彼にあったら全力で逃げる事。良いね?」
「はい、ありがとうございますお父様」
「なに、これくらい可愛い我が子のためなら何ということはない。頼ってくれて嬉しいくらいだ」
子供の力になれるのは独り立ちするまでの短い期間しかないからね。と、お父様は笑いながら頭を撫でてきます。
私は子供扱いついでに最近あった出来事、特にお友達が出来た事などを父と子として語らった後、執務室を後にしました。




