4. 見つかるんです
と、ガラッと引き戸を開け入ってきた生徒がいました。
私は戸が開く前にカーテンの裏にこっそり隠れているので、あちらからは見えないはずです。
ほっとしかけて、でも油断ならないと思い直して息を潜めます。
カツ、コツ、カツ
「ふふ、見つけた。ルル、そこでなにをしているんだい?」
「ひゃぁ! なななな、なんで?!」
「だって、ルルの可愛い脚がカーテンの下からのぞいているよ?」
初歩的ミスです!!
私は皇子殿下の手前無視するわけにもいかず、カーテンから出ました。
「で、殿下、先程は私を運んでいただきありがとうございました」
「礼には及ばないよ、合法的に触れて役得だったからね」
気を失う前に見た光景にお礼を言うと、なんだかとんでもない発言を返されて。
誰か、助けてください。
「あの、その件なのですが」
「なんだい?」
「えっと、私の方にずっとずっと前やらの記憶がさっぱりないのです。人違いで」
言うよりも早く、殿下がさっと近寄り私の両横のカーテンを掴んで閉じ込めてきました。
おでことおでこをくっつけられて、視線が――近い。
「……ルルは、忘れてしまっているんだね。少し寂しいけれど仕方がない、か。俺も昔は貧弱だったしね。……約束、守ってもらいにきたから覚悟しておいて」
それだけ言うと、殿下は拘束を解いて手をひらひらさせながらまたねと言って去っていきます。
私は熱くなったおでこを抑えながら、ずるずるとその場にしゃがみ込みました。
しばらくその場を動けないまま――おでこばかりか頬まで熱くなった気がして。