35. 内緒話なんです
ひとしきりもふもふ? されたあと、私達は食事にする事にしました。
カシューのお家の料理も、皇宮に負けず劣らずの豪華さで目を見張ります。
「す、凄いです!」
「我が家の料理人は皆ライバルと、追いつけ追い越せ薙ぎ倒せといった風情で、いつも競っていたものだから見た目も派手ですのよ」
わたくしは素朴なものも好きなのですけれど、とはカシューの言です。
お野菜の色味をふんだんに使った色彩豊かなご飯、そんな経緯で出来上がったのですね。
感慨深く、お料理をいただきます。
「それにしても、出会ってまだ日が浅いけれど、こうも噂にのぼり続けるのも難儀ですわね。ルルはその……しんどく思ったりはしていなくって? イヤーカフも、着けたままで……」
カシューがご飯を食べる手を一旦止め、心配そうに聞いてきました。
どうやらこの件について心配したのもあって、昼食に誘ってくれたようです。
「しんどくない、といえば嘘になるでしょうか……」
内緒ですよ、と言って初めての、友達への内緒話を始めます。
お二人なら吹聴するような真似はしない、なんとなくそう確信がありました。
「実は初恋の人だったんです。私は家を継ぐのが決まってまして……お婿さんになってほしいなって、思った時もありました」
言葉にしたら、少し泣きたくなります。
「今はもう、難しいことはわかってるんです。ただ、この気持ちを伝えて、すっぱり諦めたいなって思ってて…… イヤーカフも、なんていうか決意証明みたいなものなんです」
そう言いきると、カシューが頭を撫でてくれました。
「家柄っていうのは、やっかいなものね。わたくしも婚約者とは家格が上の家の子に何くれと横槍を入れられてしまって、それはもう苦労しましたのよ……あの当時は、どうして気持ち一つで相手と一緒にいられないのか、と憤慨していたわ。……昔も今も、貴族の女子は不自由なものですわね」
「そんなことがあったのですね。婚約者の方とのお話を聞いても?」
今思うと、そんなにドラマチックでもなくてよ? と言いながら、カシューが自身の話をしてくれます。
そこへララジニア様が自分の視点を交えてくれ、しんみりした雰囲気から和気藹々としたものへと変化しながら、楽しい昼食は終わったのでした。
ちなみにカシューの話は、とてもロマンチックで素敵でした! 一冊本が書けそうな程、お二人の気持ちが素晴らしい中での横槍、手に汗握りました。
また今度の機会に、ララジニア様のなれそめも聞いてみたいな、と思う私なのでした。




