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2. 求婚なんです
「さて、皆には私レイドリークス=カルマンの、この場を借りて一世一代の愛を捧ぐ我儘を、どうか許してほしい。…………ルルーシア」
……?
空耳ですね。
「ルルーシア=ジュラルタ」
空耳空耳……じゃない、んです?!
しっかりと名前を呼ばれ、私の周りはパンケーキを真ん中から切り分ける幸福のように、人がいなくなりました。
そこへとろけるような笑みを男前な顔面に浮かべ、皇子殿下が一歩一歩ゆっくりと歩むのが見えます。
そして私の前まで来ると片膝を突きこう言ったのです。
「ルルーシア……もうずっとずっと前から、朝も昼も夜も思い浮かべない日はない程に、君に焦がれているんだ。どうか俺のものになって? 愛しい君」
殿下に取られその甲に割とねっとりとキスをされた手には、フォークを握ったままでした。
ああ、なんてロマンティッ…………クじゃ、ないです!!
思い描いた結末と違った上、火中の栗を否応なく拾わされた私は、美味しいご飯だけは転がすまいと手の角度やらを器用にも調節しながら、倒れました。