14. 豪勢なんです
始業が近いという事で、その場は挨拶のみで各々自分のクラスへと向かいました。
殿下はなんだか少し不満げでしたが、クラスメイトの方が来て引きずるように遠ざかっていきました――お世話、お疲れ様です。
その日の授業は、ほんの少しの悪戯以外つつがなく終えることができました。
ペンがなくなったりしたって、借りれば良いので問題がないのです。
ビビビビビビ
午前の授業が終わりました。
昼食へ向かう為素早く準備をしていると、背後から声がかかります。
「……ルルーシア、迎えにきたよ」
ちゅっ
今しがたした音は、殿下が私の頭頂部に唇を落とした音です……誰か止めてください。
この手合も反応したが最後増長させるのが目に見えているので、無反応で通します。
いい加減、私も“私につきまとう人などいない“という認識を改めなければ――本来軽く避けられるのです、それだけの技量を教え込まれてきた自負はあります。
次こそ避けて見せます!
私はそう胸に誓うと、殿下と共に前日利用した外広場へと向かいました。
「ようこそ我が城へ、お姫様」
「……確かに、これはまるでおとぎ話の晩餐のようです……! あ、お姫様ではありませんが」
「美辞にはぐらつかない、か……。ルルらしい。さ、座って」
たどり着いた場所は、前日と打って変わって敷物のデザインが変わっていたり入れ物がより可愛らしい感じになっていたりと、おもてなし用とわかる品物とそれに見合った食事内容になっていました。
「何故、こんなに……?」
縁取りにレースがあしらわれた敷物に座りながら、殿下に尋ねます。
「ルルと一緒に食事をする、と言ったら料理長が張り切ってしまってね。俺の片想いをずっと応援してしてくれていたものだから、止めるに止められなくて」
それでこんなに豪勢なことに……普段はちゃんと学生らしく慎ましいからね? とちょっと苦笑しつつも、その瞳はとても暖かいものが溢れています。
まわりを大切にして、自身も相手に大切にされている――私に対する態度はいかがなものかと思いますが、その姿勢にはちょっぴり感動しました。
と、その時。
「あれ? ルルーシア様!」
ん?
「……奇遇ですね。ローゼリア様もこちらで昼食を?」
「はい、そうなんです。けど遅れてしまったので、ちょうど良い場所がなくて……」
と、戸惑っている雰囲気を醸しながら彼女は言いました。
これは……ちょっと、あざといが過ぎるような……けど良いです! 望むところということで乗っかりますよ私。
「殿下、私の友人が困っているようなのです。一緒に食事をしてもよろしいでしょうか?」
ふふふ、これは断れないはずです!!
殿下の方を向きお願いをしたところ、彼は思案したのち返事をしてくれました。
「すまない、俺も今日で二回目なんだ。我儘だが今暫くは二人で語らいながら食事がしたい。回数を重ねればこの狭量な心も落ち着くと思うから、それからでも良いかい? ご友人には我が護衛が良い場所を見つけよう」
そう言って護衛に何事か告げると、あれよあれよとローゼリア様の姿は見えなくなってしまったのでした。




