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私の義弟がイケメンすぎる件 リザローズ視点

私はリザローズ・ウィルウッド。

この王国建国時代から王家に勤める由緒正しい公爵家の一人娘だ。

お父様もお母様もとても仲睦まじい夫婦で、お父様に至ってはお母様を溺愛していた。

私も溺愛してくれるような殿方と結婚して幸せになりたい~!と思うような理想の夫婦だった。

しかしお母様は生まれつき体が弱かったようで、お二人が望んだ跡取り息子は授かることなく、私が9才の時になくなってしまった。


後妻を取るつもりのない父は、遠い親戚に母や私と同じ銀髪の男の子がいるので、養子として引き取ると告げて来た。

私は公爵家は私が継ぎます!とお父様に言ったけど、お前には苦労をかけたくないのだ、と寂しげに笑う。

お父様がお母様がいなくなってから、色々大変なことはわかっていたから、何も言えなくなってしまった。


しばらくして私は10才になった。

その日はいつも夕方過ぎないと(夜遅くに帰ることもしばしばある)お父様が昼過ぎに帰って来た。

後ろに銀色の髪がチラチラ見える。

お父様が私を見て立ち止まると、後ろにいた少年に声を掛けて隣に立たせる。

「今日からリザの義弟になる、ラルクだよ。

まぁ義弟と言っても、リザとは10日ほどしか誕生日も違わない。

明日からリザとともに色々学ばせるつもりだ。

何かあれば、ラルクに教えてやってくれ。」

「はい、わかりましたわ」

と答えて少年に初めて視線を合わせた。


その少年は驚くほどに端正な顔立ちをしていた。

伏し目がちの目はとても大きく、睫毛は髪の毛と同じ銀色で瞳の深いブルーと重なり神秘的な印象になる。

恥ずかしそうにチラチラとこちらを伺うように見てくる仕草さえ、頬擦りしたくなる小動物感があった。

高く整った鼻梁、その下にある唇も薄くピンクで緊張しているからか、真一文に結んであるのがかわいい。

私より少し背が小さく感じるが、それがまた庇護欲をそそる。

つまり、目の前に天使のような男の子が立っているのだ。

実はかなりの面食いの私!

なに、この状況!神様ありがとう!!一生分のラッキー使いきったのかしら?

と心の中ではしゃいだ。もちろん顔はポーカーフェイスで。


沈黙を続ける二人に、何かを勘違いをしたお父様が

「姉弟になるのだから、仲良くするように…」

と声をかけてラルクを連れて行ってしまった。


はぁ…お声を拝聴したかった…。

でも夕食の時に仲良くお話しましょう!

そう思い直しルンルンで自室に戻ったのだった。


しかし夕食の時間もいつも通りの静かな時間になってしまった。

お父様とだってお話しないのに、ラルクとはなぜお話できると思ってしまったんでしょう。

そういえば、いつも無表情で、なに考えてるかわからないわって同年代の令嬢たちから陰口を叩かれ悲しかったのを思い出した。

しかも素直になれない性格のせいで、話せばツンケンした感じになってしまうので友達もいない。

つまりコミュ力ゼロなのに、義弟となんて、なに話すんですか~!!

ラルクもきっと人見知りに違いない、全く話さないもの。

お父様も社交界ではそれなりだけど、お家ではお母様ばかりお話して、聞き上手に徹してたから場を盛り上げるとか無理そう…。


次の日からマナーや、ダンス、歴史などのお勉強も、ラルクも一緒に受けることになった。

ラルクは始めこそ授業についていけずに、難しい顔をしていたが、きっと元が素晴らしいのだろう。

まるでスポンジに水が吸収されるように全てを完璧にこなすようになってしまった。

でもラルクと会話したい私は、うざがられるのを分かっていて公爵家とは…とか、マナーがいかに大切か…とか、社交界ではあまり表情に出さないことが大切よ…とか、分かりきってることばかり注意しちゃうの。

ラルクはそのうち私が話かけると嫌な顔をするようになり、勉強の時間以外では距離を置くようになってしまった。

きっと嫌われたに違いない。

それが悲しくて仕方なかった。


***


ラルクが来てから半年が過ぎた頃だった。

夜中にラルクが私のベッドに潜り込んで来たのだ。あんなに私とは距離を置いていたのに!

しかも彼は寂しかったとか、私に会いたかったとか、僕のこと嫌いになった?とか、上目遣いで聞いてくる。

大切な家族のこと嫌いになるなんてあるわけないわっ!!

添い寝だっていつでも、大歓迎よ!!

いつでもきれいなお顔見ていられるとか、幸せ過ぎる!

でも下心なんてないんだからねっ!


「じゃあ明日からずっとリザローズと一緒にいるねっ」

寝るときも一緒だよってほっぺたにチュッとするとそのまま肩を押してベッドに押し倒される。


えっーもしかして貞操の危機?

あーん、義理とはいえ姉弟なのにー!

でもラルクなら、良いわ~!

とか、考えていたら隣からスースーと寝息が聞こえて来たのだ。


そっと体を起こし彼の寝顔を堪能する。

本当にきれいな男の子。

幼いその子は私を受け入れてこれからも側にいてくれると誓ってくれた。

その事実が嬉しくて仕方なかった。

彼の白い瞼に私の前髪がかかるほど近づいて、しばらく彼の寝顔を見た。そしてお人形のように美しい頬に口づけた。


ラルク、私もしかしたらあなたに恋しちゃったかもしれないわ。

隣に眠る天使を見つめてしばらく眠れず寝不足になってしまったのは言うまでもない。


***


それからは、本当に仲の良い姉弟のようにいつも一緒にいた。

今までは別々にとっていたお茶の時間も、授業の時も寝るときだってずっとずっと一緒にいた。

二人は仲睦まじく、笑顔が絶えなかった。

どのお茶が美味しいとか、ダンスはどの曲が好き?とか、他愛ないものから、歴史や政治に関する難しい話さえラルクとは話が合った。

とても大人びた意見も持っていて、ラルクの聡明さは目を瞠るものがあった。

そんな彼だから私も少しずつ甘えてわがままを言ったり、素直に気持ちを話すことができるようになった。

もうラルクのいない生活は想像もできないほどに、私はラルクがいれば毎日幸せだった。


たまに行われる同じ年頃の令嬢や子息とのお茶会も、二人ならとても楽しかった。

ラルクは同年代の殿方の中でも郡を抜いて美しく、大人びた雰囲気を醸し出している。

ウィルウッド公爵家秘技ポーカーフェイスを習得した彼はクールで、なのに人当たりの良い雰囲気も兼ね備え、どこからどう見ても完璧で素敵過ぎる。ラルクは私の自慢だった。

周りの令嬢の私への態度も柔らかくなったのを感じる。

しかしそこにはラルクと、お近づきになりたいという思惑が見えていたから、お付き合いはそこそこにしたけど。


ラルクが言えば、ちょっとしたわがままくらい聞いてあげたい気持ちになった。

今度の茶会には参加したくないなってかわいい顔で言われれば二人だけのお茶会を開いた。

私の手に持ったクッキーを食べさせて~とおねだりされれば、あ~んと食べさせてあげた。

ピクニックしたとき眠いよ~と膝枕させられた時も、恥ずかしかったけど…

いつも「仕方ない子ですわねっ」ちょっと嫌な言い方をしちゃうんだけど、ラルクはいつもそんな私を目を細めて幸せそうに微笑んでくれた。


夜の添い寝もあれからずっと続いていたけど、ラルクはあれ以来キスしてこない。

いつも私の胸に顔埋めて、心臓の音を聞くと安心すると言いながらすぐ寝てしまうのだ。

彼の柔らかい髪を漉きながら、彼が寝息を立て始めるとつむじにキスを落とす。

そっと体を起こし、美しい彼の顔を見つめて堪能する。

瞼や鼻、頬に口づける。

彼の手を取り自分の胸に押し当てたことさえあった。

こんな浅ましいこと、彼に気づいて欲しいような、気づいて欲しくないような。

行為はエスカレートして、彼の寝巻きのボタンを外し、白い肌の胸元に口づけをして頬擦りして、心臓の音を聞いた。

本当に不思議。心臓の音って安心するのね。

私はその日本当に心からぐっすりと眠ることができたのだった。


その次の日からラルクが私に抱きついて眠るのではなく、私がラルクの胸に抱かれながら眠るようになった。

ラルクはかわいらしい顔で、

「リザちゃんのふわふわの髪の毛が気持ちいいから~」

と腕を広げて私を引き寄せ、抱き締めてくれる。

私のつむじ辺りにラルクが頬ずりしながらすぅすぅと寝息をたてた。

私もラルクの心臓の音を聞きながら、安心して眠りにつく。


ああ、できればこの幸せが一生続きますように。


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