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悪役令嬢は甘えん坊の義弟に弱いらしい

そっと自室から出て、廊下を最奥のリザローズの部屋を目指す。

夜這いを仕掛けるかのような緊張感に手が自然と震える。

ノブを回すと、キィっと思ったより大きな音がなった。

さっと部屋に侵入して、音を立てないようにゆっくり手を添えながら扉を閉めた。

バクバクとうるさい心臓に手をやる。

少し息を整えてから、リザちゃんのベッドを覗きこんだ。


スースーと穏やかな寝息をたてる10才のあどけない美少女。

俺って28才で死んだんだよね、10才の女の子見てドキドキするなんて、マジ変態(^-^;

とか自分を落ち着ける。

いや、これから成長したら絶世の美女だし、これは先行投資的なものだから、それに今は俺も10歳だ!とか言い訳を考えながらランタンをベッドサイドに置き、布団に潜り込みリザローズの胸に頭をすりすりした。


「…うっ…んっ」目を擦りながら起きたリザローズに、

「リザローズ、僕…寂しいよぉ…うっうっ…」

とか泣き真似してみた。

すると天使のようにかわいいリザローズは、びっくりしながら起き上がり頭を撫でてくれる。

それに「どうしたの?」なんて心配してくれた。

「悲しい夢を見てさみしくって、リザローズに会いたくなっちゃったんだ」

「前の家族のことや、今の生活で公爵様やリザローズに迷惑かけてることとか、毎日夢に見るんだよ」

そう言って体を起こしながら上目遣いで悲しい顔を作る。

するとリザローズはぎゅっと抱き締めてくれて、

「そんな…ごめんね…寂しさに気づいてあげれなくて。」

と優しく背中を撫でてくれた。

なにこの生き物…!!

まじ天使です。尊いです。鼻血出そうです。

「僕こそごめんね。勝手に入って来て。

それにいつも僕を思って言ってくれることに対して嫌な態度をとって…

リザローズも去年お母さんを亡くしたばかりなのに、僕ってば自分のことばかりで…

もう僕のこと嫌いになった?」

そこでトドメの上目遣い…どうだ!!

「ラルクったらっ…

私こそ家族と離れて公爵家のために来てくれたあなたに寂しい思いをさせて…ごめんなさいね」

こてっと、首をかしげながら、眉尻を下げて、じっと見つめてくるリザローズ…

鼻血吹きかけなかっただけ、俺、(*^ー゜)b グッジョブ!!

パッと鼻を押さえてそっぽ向いた俺に、なにかを誤解したのかリザローズが

「これからも寂しかったら添い寝してあげるから、いつでも訪ねて来なさいね」

と髪に優しく触れる。

俺はばれないように鼻血をそっと手で拭うと、じっと潤む瞳で見つめて聞いた。

「いつまでも僕のことそばにいさせてくれるの?(いつまでも添い寝は有効ですか?)」

「もちろんよ、あなたは私の大切な人(家族)だもの」

この家に来て一番の笑顔でリザローズがこくんと頷いた。

やったどー!添い寝、確約いたしました。

このまま、既成事実作っちゃいましょ~!

「じゃあ明日からずっとリザローズと一緒にいるねっ」

寝るときも一緒だよってほっぺたにチュッとするとそのまま肩を押して一緒に横になる。

俺はやり遂げた感からすぐに眠気に負けて寝てしまった。

気持ちは28でも、やっぱり10歳だな…なんて寝落ちる寸前のんきに考えた。


リザローズは真っ赤になりながら口付けられた頬に手をあてて、スースーと寝息をたてるラルクを見つめた。

リザローズと同じ銀色のさらさらな髪を持った男の子。

新しい家族。大事な義弟。

はじめてラルクの甘えを受け入れて、リザローズは幸せを感じていた。

リザローズの艶やかな髪がラルクのがまぶたの上に落ちる。男の子にしてはきれいな寝顔のラルクをしばらく間近に見つめたあと、ほっぺたに口づけを返した。


***


しばらくは何をするにも義姉を追いかけて、今までの溝を埋めるようにお互いの話をした。

やはり冷たい印象を受ける外見に似合わず、父親思いの優しい少女だった。

母親が亡くなり寂しさを抱えているが、父親の悲しみを考えるとなかなか素直に寂しさを表せないようだった。

ツンケンした態度をとってしまう自分にもコンプレックスを抱いているようだった。28歳の大人の包容力で、巧みにリザローズの甘えを引き出す。

リザローズの心をこちらに向け、そして信頼を勝ち取っていった。

夜は寂しさが増すようで、最初こそ、俺が寂しいからという形で始まった夜の添い寝はリザローズの寂しさを埋めるためのものになっていった。

理解者は俺以外いない。

そう思わせることに成功したようだった。


***


リザローズの心を手に入れたところで、次は公爵の心を手に入れなければいけなかった。

養子に入り、一年。未だに公爵からの信頼は得られていなかった。

リザローズと仲良くしているのを知っているからか、リザローズがいないときに限り、

「リザローズの重荷にならないようにしっかり勉強をしなさい」とか

「リザローズや公爵家の面汚しにはなるな」などと警告してきたり

「リザローズは完璧だ、同じ銀色の髪に産まれたことを誇りに思うがいい」とか

「リザローズは高貴な方としか結婚はできない、間違いは起こさないように」と牽制したり

本当に親バカ全開だった。


つまりこの父親の心を捕まえることができなければ、リザちゃんとのラブラブな未来はないということになる。


そこで考えたのが、

(親子の溝を埋めて、しかも俺の株もあげちゃおう作戦)っだ!

まぁ作戦名がカッコ悪いことは多目に見てくれ(^-^;


夜の添い寝の時にリザローズの胸にすりすりしながら

「最近公爵様に嫌われてるみたいなんだ…ぐすん」とあざとく泣いて見せる。

するとリザローズは俺の頭を抱え込むように抱き締めながら(11才になって少し膨らんできた胸が気持ちいいことは内緒です←ロリコンめっ!!)

「まぁ!お父様ったら私のラルクにそんな心配をさせるなんて!

きっとラルクの勘違いに違いないわ!

だってこの間もお父様はラルクのことを本当に勉強熱心で、将来の公爵家も安泰だ、なんて誉めていたのよ」

と俺の顔を覗きこんだ。

俺を誉めてるなんて、初耳だったので、驚きに目を瞠る。

「本当に?…でも僕が公爵様のことお義父様って呼んだら嫌われちゃうよね。…ぐすん」

と眉尻を下げる

「そんなことないわ!!ラルクみたいな素敵な子供がいたら好かれこそすれ、嫌われるなんて、そんなことないに決まってる!

もし嫌うなんてことあったら、お父様とは絶交するわっ!!」

と父より俺を選ぶぞ発言まで飛び出した。


「本当に!?じゃあ今からお義父様のところに一緒に行って一緒に添い寝してもらいましょうよ!!」

リザローズもお義父様に甘えたいでしょ?

とにっこり笑うとリザローズはおずおずと

「ラルクと三人でならお父様と添い寝してあげてもいいわっ」

と久しぶりのツンを見せた。


***


真夜中にお義父様の寝室の前で、緊張の面持ちで二人で扉をノックした。


すると中から公爵の入室を許可する声が聞こえる。まだ起きていたようだった。

お義父様は椅子に腰掛けていた。二人を見ると目を瞠り、びっくりしたように

「二人してどうしたんだい?」

と声をかけてきた。

リザローズは緊張からか唇を震わせるだけで声がでないようだった。

俺も緊張はしていたが、この計画がうまくいかないことにはいちゃラブの未来はないと勇気を振り絞り声をあげた

「公爵様!いえ、お義父様!

僕たち話して決めたんです!

……」

まだ話してる途中なのに、

「二人の関係を認める訳にはいかないぞ!!」

と牽制を仕掛けてきた。

きっと夜二人で寝ているのをよく思ってなかったんだろうなと、ついうっかりジト目で見てしまった。

リザローズは意味がわからなかったようでポカンと口を開けた。

俺は分かりきっていた態度だったので、心がすんっとするのを感じながら、

「今日からお義父様の都合がいいときだけでいいので、リザローズと僕と三人で一緒に寝たいんです。

お義父様が真ん中です!」

特にお義父様が真ん中ですを強めに言ってみた。

すると、リザローズの添い寝が嬉し過ぎたのか、お義父様は顔をにやけさせながら、

「二人とも大きくなったと思ったけど、まだまだ子供なんだな」

とかなんとかもごもご小さい声で言いながら、リザローズの頭を撫でる。そしてなんでお前いんの?的な目で俺をチラリと見た

「リザローズもお義父様に素直になって甘えたいし、僕だって本当は公爵様をお義父様って呼びたかったんだ!甘えて一緒に寝てみたかったんだよー!ぐすん」

最近泣き真似ばかりしてる気がする…

するとお義父様は何か感じるものがあったのか、俺の頭も撫で始めた。

「そうだったのか…。

二人とも寂しい思いをさせていたんだね…

これからはいつでも甘えてきなさい。

私は二人の父親なんだから」

ガバッと公爵の広い胸に抱き締められる。

リザローズは安堵の涙を流して、公爵にしがみつきながら

「ラルクありがとう、お父様に甘えることできたわ、本当に本当に嬉しいの…」

本当に嬉しそうにきれいな涙を流すリザローズの顔が間近にあり、このドキドキが公爵にばれないようになるべく表情を作って二人を抱き締めた。


それからは公爵の仕事が遅くまでにならないときは三人で公爵の広い夫婦用のキングサイズベッドに寝ることになった。

布団をかぶりながら、今日あったことや、思ったこと、やりたいことなど、親子のたわいない会話をしながら寝るという、めっちゃファザコンな毎日を過ごした。

そのお陰か、リザローズとの仲を改善させたからか、公爵の信頼はうなぎ登り、本当の親子のようになっていった。

前のように「恥さらしな真似はするなよ」アピールはなくなったどころか、

公爵家に来た客人が俺を養子だろうとバカにした態度をとると、窘めて、味方になってくれるようになった。

しばらくすると、俺は公爵のお気に入りと認定され、誰しもが敬うようになった。


***


もうそろそろ13才の社交界デビューである!

王子との婚約話がきっと水面下で進んでいることだろう。

しかし、一足早く春の舞踏会で社交界でデビューしている王子の噂はあまりいいものを聞かない。

しかし王家との婚約話、お義父様も断るに断れないことだろう。

しかし今度の夏の舞踏会でリザローズと出会わせ、秋の舞踏会で婚約発表という大筋の流れはできているはずである。

そこで、だっ!

ついに(王子と婚約なんかさせないぞ作戦)決行の時である!



夕食のときに三人で和気あいあいと話していると話題は自然と夏の舞踏会になった。

ドレスやマナーについて、ダンスのこと、話はつきない。

頃合いを見計らって、切り出す

「社交界にデビューということはそろそろ私たちにも婚約などの話が舞い込んでくる頃ですね…」

お義父様の顔がピクっとするが、注意深く見ていなければ気づかないほどのポーカーフェイスだ。

リザローズは「婚約…」と少し思いつめた表情を浮かべる。

そこでたたみかける

「リザローズが婚約して、結婚してこの家から出て行くなんてやだよぉ…ぐすん」

未だに少年のような容姿を武器に泣き真似作戦を多用していた。泣き真似すれば大体のわがままを「しょうがなくってよっ!」とか少し照れ隠しのツンを交えた、リザローズが叶えてくれるのだ。

まるでどら○もんのように…

するとリザローズがお義父様に向かい

「私は結婚なんてしませんわっ!!ずっとずっとお父様とラルクと一緒がいいですわっ!」

とうるうるの瞳で懇願する。

「そうだよっ!僕もリザローズのいないのはやだよぉ!お義父様だって嫌だよねっ!!」

ときらきらの瞳で懇願する。

かわいい二人の子供たちを交互に見ながら、目をぱちくりさせてお義父様はふっと笑った。

「もう13才になるのに二人とも甘えん坊なんだから…

そうだな、リザローズが本当に好きな人ができて…、その人と一緒になりたいって人ができるときまで…、それまでは婚約はなしにしよう。」


うんっと自分に言い聞かせるようにお義父様がうなずく。

ふふふっこの作戦は半分まで成功したようなものだ!!


そこでもうひとつ爆弾を落としてみた!

「えっー!そんなのもうリザローズにはいるよね~!

リザローズは僕とずっと一緒にいる約束だもんっ!!

僕と結婚してくれるんだよね~!」

まるで家族ごっこでもしよ~と誘うように潤みがちの瞳を上目遣いにして、リザローズを見る。

すると顔を真っ赤にしたリザローズが頬を押さえるように両手を当てて、そうよねっと呟いている。

「お父様!私はラルクと結婚して二人で公爵家を切り盛りしていきますわっ!!」

ばんっとテーブルを叩いて立ち上がり、公爵に高らかに宣言するリザローズ。

さすがの公爵も、甘やかしている娘が決めたこと、頭ごなしに断るにこともできずもごもごしてしまった。

でも内心かわいい愛娘を手離さず側に置いておけるこの提案を喜んでもいるようだった。


そうしてなしくずし的に二人の婚約をもぎ取ったのである。


後日公爵が嬉々として、王家に婚約話を断りに行くのはもう少し話が詰まってからであった

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