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ばけのかわ

作者: 神崎翼

 諸君は、「化けの皮が剝がれる」という言葉を知っているだろうか。

「隠していた素性や物事の真相がばれてしまうこと」という意味の言葉だ。この場合の「化けの皮」は化けるために被ったものを指す。つまり狼が羊に化けるなら羊の皮、大人しい人間に化けるなら猫、といった具合だ。実際に被るのか、比喩表現としてなのかは問わず、化けるときには何かを被る、という認識が、おそらくこの言葉を生んだ。

 ところで、おばけは知っているだろうか。漢字では「御化け」と書く。様々な意味を含んでいるが、おおむね、幽霊や化け物を指す言葉である。


 さて、ここでようやく本題だ。

 私はおばけになりたい。昔から、それが私の夢だった。

 だが、当然ながら私はおばけではない。ではどうするか?

 ――――そう、化けの皮を被るのだ。


 誤解が無いように言っておくと、死にたいわけではない。これは自殺願望を綴った手記ではないのだ。私がなりたいおばけは幽霊ではない。つまり、化け物になりたい。そのために、私がおばけになるために、化け物になる為の「化けの皮」がほしいのだ。

 そうすると、問題なのがその「化けの皮」をどのように準備するか、ということである。ここまでオカルトや国語的な話をしていたところに申し訳ないのだが、何も「化けの皮」があたかも幻のような、口先だけの幽玄たるものである必要はない。現代は科学によって成り立つテクノロジー社会である。つまり、”創“ればいいのだ。

「理解してもらえたかな?」

 そのための実験のために連れて来られた『素材』が暴れたので、鎮静剤が効くまでの間の絵本の語り聞かせをするような気持ちで今までの経緯を語った。『素材』は徐々に混濁する意識にあらがうように強い眼差しでこちらを睨みつけて、唸るように猿轡の下から言葉を吐き出す。

「ば、け……も、の………!」

 私はにっこりと笑った。そう、私は、それになりたいのだ。


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