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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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バリアを張れ!

「あの時の二人はリューガの部下だ。やつらをどうにかしない限り、私達は不利だろう」

事務所にて。ラオンは一同のリーダー的な立場である葵と粉砕男に、これからの事について提案していた。

この前の一件はファンドンが町を破壊する事で町の人々にストレスを与え、その時に出てきた悪意をブラックバルーンガールことBBGが悪意を吸収するという一連の行動が見られた事から、リューガはテクニカルシティを彼らの実力を確かめる実験場にしていたのだろう。

事実、つい最近までリューガは部下など連れていなかった。いくらやつが強いとはいえ部下の扱いに関してはまだそこまで知識が深いとは言えないだろう。

それもこれも、リューガが本気で潰しにかかってくるのも時間の問題だった。

しかし起きる事件はリューガだけではない。困った悪人たちが、次々に事件を起こしては事務所に依頼がやって来る。リューガ一人に集中できたらどれだけ楽になるだろうか。

「あーくそ!一日でもこの町を平和にする方法ないのかよ!?」

元々苛ついていたラオンは両手を振り下ろし、目の前のテーブルに叩きつけた。

テーブルには丸い穴が二つ空けられ、彼女の苛立ちを完全表現していた。


「その事なんだけど…」

部屋の隅で三人の会話を聞いていたドクロが話に入ってくる。何か案でもあるのだろうか。

「私もそういうの考えてたの。そこである二人の顔が思い浮かんで…彼女たちなら、何かできるかも」

顔を見合わせる三人…。



ドクロが推薦した人物二人を、なるべく人目につかない森へと呼び寄せた。


一人は、黄色い着物に桃色の柔らかそうな髪、黄色いハートの髪飾りと四葉のクローバーの髪飾り…クローバー族の幼い少女、四葉。

そしてもう一人は、ツヤのあるピンクのポニーテールにピンクの瞳、ピンクのワンピース…とピンクづくめの少女。

四葉はついこの間も関わったが、もう一人の少女、風船ちゃんと関わるのは随分と久しぶりだ。

平和な森のなか、切り株の上にのってドクロは二人に事情を説明した。

二人を選抜した理由は、四葉は幸せを司るクローバー族であり、幼いながらも周囲の空間と魔力を操る能力が多少身に付いている。

風船ちゃんは不完全ながらも、相手の心を落ち着かせる浄化能力を持ち合わせていた。いずれも、平和に物事を解決する可能性を秘めた少女たち。

呼ばれて嬉しそうな風船ちゃんが、満面の笑みを浮かべてドクロに聞く。

「私たちは何をすれば良いの?どんな事だってやってみせるよ!」

相変わらず健気で仲間思い。風船ちゃんに続いて四葉も笑って頷く。


ドクロは、二人の癒しの魔力を結合しあう事で新たな癒しの魔力を生み出せるのではないかと考えていた。

癒しの魔力というのは人の心の肉体を癒す為の魔力。

通常の魔力は基本的に相手を傷つけるという邪気がなければ発動できない、いわば癒しとは対となる邪悪な力。

はっきりとした殺意と敵意を持つ者ほど、相手が放った癒しの魔力には弱い。

二人の癒しの魔力は極めて弱いが、二つの魔力を合わせる事で反応を見せあい、新たな力が誕生する事もある。

ドクロは、この癒しの力でテクニカルシティを一時的に守る事を計画していたのだ。

これには四葉も風船ちゃんも賛成し、跳ね上がる。

ほぼ同時、同じ動き。完璧なシンクロだ。

これなら上手く行くかもしれない…と思ったのだが…。


「でも…魔力の扱いには互いの波長を合わせる必要があるのよ」


そこからは中々大変な作業となった。

四葉と風船ちゃんを全く同じ高さの切り株の上にのってもらい、互いに精神を集中させる事で魔力の質をあわせなくてはならないのだ。

精神を集中させるので、かなりの体力がいる上に一回や二回では成功しない。成功するまで互いに気を使いあわなくてはならず、気まずさも相当なものだった。

何より気まずいのは、お互いに謝りあう二人の間で魔力を調べているドクロだが…。


二人の精神集中が始まってから約一時間後、ドクロはようやく二人の魔力の波長が合い始めたのに気がついた。

「頑張って!!もう少し!!」

この頃には二人とも汗だくだ。気まずさを振り払い、今の調子を継続させる為に応援するドクロ。

二人はお辞儀をしあい、もう一度目を閉じて精神を集中させ始めた…まさにその時だった。

邪魔が入ったのは。


「させるかぁぁぁ!!」

勇ましい声が響き、森の中心に衝撃が走った!

森中に吹き荒れる暴風。四葉は耐え抜いたが、体が軽すぎる風船ちゃんはそのまま風にのって飛ばされそうに。

間一髪、ドクロは彼女の手をとってその場に留まらせる。

まだ吹き荒れる風のなか、ドクロは襲撃者を発見する。


現れたのは、巨大な槍を持った緑色のトカゲの怪人。

鱗に覆われた体に黒いアーマーを取り付けている。アーマーの重さも感じさせない軽快な動きで、槍を振り回している。

先端恐怖症の風船ちゃんはその場に座り込んで震えだす。

「俺はトカッゲ!闇姫様の命で、貴様らの命をもらい受ける!」

間抜けな名前の武人だった。久々の闇姫軍の刺客に、ドクロは両腕を回して気合いを入れる。

この魔力作業の妨害が目的ではないようだが、だからと言って放っとけない。

トカッゲは先制攻撃として、槍を振りかぶって飛びかかってくる!負けじとドクロも軽快に動いて回避し、トカッゲの槍は硬い地面を刺し貫く。

「ぬ、抜けん」

抜けない槍を必死に引っ張るトカッゲ。その隙を狙い、ドクロは左足を突き出したが、トカッゲは槍一筋ではなかった。

槍を一旦放置し、振り替えって両手を突き出してくる!両手の平から暴風が放たれ、ドクロはスカートを押さえて踏ん張らざるを得なくなる。

風船ちゃんを殺す気満々な技揃えだ…。風船ちゃんの為にも両手の拳を構えて足を踏み出すが、一緒に飛ばされてくる土砂が目に入って邪魔をする。

(くっ…このトカゲ野郎地味にムカつく!!)



しかし、トカッゲは油断していた。自分の後ろにいるのはたかが子供、どうする事もできないと…。


トカッゲの背中に、突如鈍痛が走る!

「ぐっ!何だ!?」

たまらず、しなやかな首を動かし、背後を見る。


そこには、両手を振り上げて魔力を集中させる四葉、そしてその四葉の頭上に、魔力で作られた尖った葉っぱが!

気をとられ、暴風の勢いが弱まる。

今がチャンスだ。


ドクロはトカッゲが振り替えるより前に、彼の顔面に魔力を込めた拳を炸裂させた!

「ゲカトー!!!」

独特な叫びと共に、トカッゲは空中で意識を失い、ド派手な土砂を散らしながら地面に落とされた…。


戦いが終わると同時に、四葉と風船ちゃんは今の調子を保ちつつ、お互いに魔力を合わせあう。

危機が去った後の緊張感もあってか、今度は一発で魔力の波長が合う。

「おお!」

ドクロの期待に溢れる声と共に、魔力は一同の頭上で桃色の輝く煙となり、広がっていく。


広がった魔力は森から飛び出し、より強く輝いた後、弾けるように大量の小粒に分散、森を中心に、テクニカルシティ全域に飛び散った!

人の目には見えていなかったが、全ての住人が、心の底から溢れ出すような幸福感にかられる。


「…オッケー。これで、邪悪なやつらの襲撃を免れる事ができるはずよ」

ドクロが親指をたてると同時に、四葉と風船ちゃんは軽く息を吐き、その場に倒れこむ…。

「だ、大丈夫!?」

駆け寄るドクロ。二人にとって、こんな運動は久々だった。



「リューガ様」



…遥か上空から一部始終を見守っていた監視者が、主にテレパシーを送る。

黒い髪を風になびかせる…ブラックバルーンガールことBBGが、不適に笑っていた。

「安心しろ。ゲームは長いほど楽しいだろ?」

BBGの頭に、陽気な声が響く…。

事態は、終息した訳ではなかった。

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