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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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ブラックバルーンガール

テクニカルシティは、ファンドンの襲撃によって真っ二つに両断されていたようだった。

急遽町の復興作業が開始され、生き残った人々は働き詰め。角材やコンテナを持った人々が行き交う忙しい光景となった。

れなたちはと言うと、前回のファンドン戦でのメンバー、れな、ドクロ、ラオンが葵に事情を説明していた。

以前別のメンバーは葵をリーダーとし、別の大がかりな依頼に当たっており、テクニカルシティの惨状を知る術はなかった。

「話を聞く限り、ファンドンは何者かの差し金かしらね」

「急に出てきて急に町切って急に去っていく、あそこまで意味不明な襲撃者いないよ!!!」

どうもれなの着眼点がおかしいが、今は町の復興が先だ。

町を切って何が目的なのか、まだ目的がはっきりしていないのがまた不気味なところだった。


その頃…町の復興を担当している作業員たちは、地割れをコンクリートで埋め込む大がかりな作業に取りかかっていた。

黄色いヘルメットの下から汗を流しながら懸命に働く作業員たちの目は中々に不機嫌そうだ。

特に髭面の男達は酷かった。若い作業員たちにほとんどの作業を押し付け、自分達は作業用コンテナに座り込みながら彼らに怒号を浴びせるように指示を出していた。

「おらぁさっさとその辺のもん片付けろや!!」

まだ正しい作業手順も分からないような作業員でも関係ない。汗だくになりながら危険な地割れの付近を歩き回り、せっせとコンクリート液を流し込んだり地表調査をしている。

髭面たちは隠し持っていた酒を飲みながら互いに色々と愚痴を吐いていた。


ここで、誰の目にも見えない何かが一同の頭から湧き出していた。

黒いオーラだ。気体のようだが、まるで生きているかのように不気味にうねりながら何かに吸い寄せられていく。

青空のなか、その黒いオーラはあまりにも目立っていたが、人間達は勿論、れなや葵、死神であるドクロの目にも映っていなかった。

これが目に見えていたのは、今この場ではたった一人。


空中に浮かぶ、黒く、短いツインテールに漆黒に染まったワンピースを着た少女がいた。れなたちと丁度同じくらいの年齢に見える。

黒いオーラは、少女の右手の平に吸い込まれている。

「やはり悪意を集めるなら人間を狙うべきね」

オーラを吸い終えた少女は、ゆっくりと空を浮遊し、どこかへ向かっていく…。




「…あれ?どうしました?先輩!!」


…黒いオーラを放っていた髭面たちは、先程までの憎らしい活気を失い、光を失った目で地面を見つめていた…。


異常事態にも気づかず、れなたちは町の復興作業をぼんやりと見つめていた。

最新式のクレーンが町の瓦礫を持ち上げ、指定位置に置いていく。一見すると何の変哲もないただの作業風景だが、先程のように人間は分からない場所で醜い悪態をつくものだ。そして、それを利用する者も…。




黒い少女は、地上に降り立っていた。

その少女の体からは魔力が放たれていたが、れなたちでも気づかない程に微量の魔力だった。

これにより、少女は一同に気づかれる事なく、目立たないビルの路地裏に降り立った。


「ようやく来たか」

「遅れてごめんね、はい」

少女の目の前には、像の頭を持ち、赤い服を着た怪人が、膝をついて待機していた。

この惨状を引き起こした張本人、ファンドンだ。

少女は、ファンドンに右手を向け、その陽気な笑みを悪魔のように歪ませた。

「さあ、相応の働きを見せてね、リューガ様の為に」

少女の手から、先程の黒いオーラが噴出される…。

ファンドンはそれを浴び、同時に全身に力が漲ってくるのを感じていた。

「やはり悪意の力は凄まじいな、どいてろ」

少女は笑いながら後ずさる。

ファンドンは大幅に強化された魔力を早速解放し、手元に巨大な斧を出現させる。

斧を大きく振りかぶり、寂しく薄暗い路地裏を紫色に照らし出す。

禍々しい光が、この町に更なる災厄をもたらそうとしている…。


だが、何とか間に合った。



「おらああ!!」

豪快な叫び声が響いたかと思うと、ファンドンは何者かに殴り飛ばされた!

「ぐお!?」


…その相手は、右手にナイフを持ち、左手を地面につけてこちらを睨んでいた…ラオンだった。

紫色の髪が星のようなきらびやかな光を放っており、ファンドンの禍々しい魔力を押し払わんばかりの輝きだ。

ファンドンの力が以前より増している事に気づき、ラオンはポケットからもう一本ナイフを取り出した。

「来い!ラオン様の二刀流を見せてやる!」

その力を感じると同時に相手の目的を何となく理解したラオンは二本のナイフを振りながらファンドンに近づく!

ファンドンは斧を振り上げて反撃するが、この程度の反撃は見切っていたラオンは空中飛行して回避する。

ビルの壁を蹴り、別方向からナイフを向けて突撃する。ファンドンの後頭部にラオンの刃が迫り来る。


だがファンドンもまた、攻撃を見切っていた。

振り返り様に鼻を叩きつけ、ラオンを吹っ飛ばす。

「攻略を変えろ」

斧を振りかぶりつつ、まだ吹っ飛んでいるラオンに接近、あえてアドバイスを出す事で今の自分との差を見せつける。

斧は無慈悲に振り下ろされ、ラオンの腹部に直撃!

地面に叩きつけられると同時に、左右のビルの壁が凹んでしまう程の衝撃が走る。


その余波で、路地裏を中心に町全体の大気が大きく揺れ動いた。


ラオンは…地面に叩きつけられ、斧が突き刺さった腹部からコードや部品が飛び散り、無惨な状態になっていた。

地面もクレーターが出来上がっており、左右のビルは斜めに曲がり、人々の悲鳴が聞こえてくる。

それでもグリーン製のアンドロイドの生命力は凄まじいもので、苦しみつつもまだ笑顔を浮かべる体力が残っていた。

ファンドンは斧をラオンに刺したまま持ち手から手を放し、彼女を見下ろす。

「できればドーピングはしたくなかったが、致し方あるまい」

ラオンの目はファンドンではなく、ファンドンのすぐ横でニヤニヤ笑っている少女に向いていた。

自分を見つめてる事に気づく少女はファンドンの陰に隠れ、わざとか弱い少女を演じている。


「やあご苦労さん」

聞き覚えのある声が聞こえてくる。


拍手をしながらファンドンと少女の間に歩いてきたのは…道化師の格好をした男…リューガだった。

彼の顔を見た途端に、ラオンの紫の瞳に殺意が宿る。

「おお待てよ。そんな怖い目すんなよ」

勿論恐れてなどいない。むしろ動けない状態で殺意だけを向ける姿を滑稽に思い、顔に刻み込まれたような笑みを浮かべている。

「どうだ、俺の優秀な部下は。ファンドン、そしてブラックバルーンガールは」

ブラックバルーンと呼ばれた少女は、黒い髪を左手でいじりつつ、右手を振って無気力に笑っていた。

「どうもーブラックバルーンガールです。名前長いからBBGって略して呼んでね」

二人ともリューガの差し金だった。町が壊されても何とかなるといつものように余裕をかましていたラオンだが、相手がリューガであると知ると同時に初めて危機感を覚える。

「苦しんで死んでほしいからとどめは刺さないぜ。まあ頑張ってくれや」

背中を向け、ファンドン、BBGと共に姿を霧のように消していくリューガ。

ラオンは途絶えそうな意識のなか、手を伸ばすが、やはり間に合わなかった。



…その後、あの余波で異常に気づいたれなたちにより、ラオンは発見された。

今まで様々な組織に属してきたリューガが、今度は自らの組織を築いていたのだ。

今まで以上に大事になりそうだった。

「…クソッタレ」

意識を失う直前に、ラオンは小さく呟いた。

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