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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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ファンドン

とある山奥に、とあるサーカス場があった。

真っ暗な森の中に、紫や桃色の不気味な色彩で彩られたそのサーカス場は佇んでおり、訪れる者は誰一人としていなかった。

しかし、「住人」はいた。


薄暗いサーカス場の中には…無人のまま動いている遊具や巨大な道化師の人形、天井から吊り下げられた傷だらけの星形の装飾品が。まるで廃墟のようだった。

こんなサーカス場でも、自宅のようにくつろぐ物好きもいるのだ。



サーカス場の奥地で、赤と青の服を着て、同じ色合いの帽子を被った男…リューガが、このサーカス場でも比較的綺麗な椅子に座ってくつろいでいた。

その周りには、操り人形のような角ばった挙動の道化師たちが。

椅子のすぐ下には小さな階段、階段の下には、像が二本立ちをしたようなモンスターが、リューガに膝をついていた。

「…で、何の用でここに来た?ファンドン」

ファンドンと呼ばれた像モンスターは、大きな鼻を軽くずらしながら顔をあげた。

小さな目だが、その目には強い意思が宿っているのがリューガには分かった。

「私、長いものには巻かれたい性格なのです。ほら、私、長い鼻を持っていまして…」

「それで、俺のもとに就職したい訳か?」

リューガは深く座り直す。今まで自分が色んな場所に転々と職探しをしていたのだが、まさか自分が就職者を受け入れる立場になろうとは。

リューガは一言だけ、「面接」をした。


「お前は、自分を悪一色に染められるか?」

「勿論でございます」

リューガはため息をつく。


そして、左手の人差し指から槍のような形状の桃色の光線を射出する。


光線は、彼のすぐ近くにいた道化師たちの胸を貫き、壁に当たると、激しい熱を放ちながらゆっくりと消えた。

うつ伏せに倒れる道化師たち。特に意味もなく部下を殺害したリューガを見ても、ファンドンは一切怯まなかった。

その目を、リューガは認めたようだった。

「良いだろう。悪に満ちたサーカス団、ファンマリスへようこそ」

リューガは、いよいよ本格的に動き出していた。



その頃…れなたちは修行の為に町内マラソンを開催していた。

先導するのはラオンだ。紫の長髪に人工の汗を光らせながら走る姿は中々美しい。

その後ろでは、既に汗だくのれなとドクロ。アンドロイドのれな、ラオンと死神のドクロだが、その体力は種族関係なしに個人差があった。

「あと五十周で千二十六周目だ!!二千まで頑張るぞ!!」

三人とも体育系だが、ラオンはその中でも飛び抜けている。仲間が疲れていようとも関係ない。

ついにれなとドクロは膝をついてしまい、歩道のど真ん中で息を切らしていた。

ラオンは容赦なく二人の胸ぐらを掴み、自分の顔へ引き寄せる。

「お前ら!!こんな所まで来て恥ずかしくないのか!」

今日は家でゆっくりしてる予定だったれなは号泣、ドクロも今にも泣き出しそうに、目の前の紫色の鬼を見つめていた。

「持久力を鍛えるんだ!!この先、どんな相手が現れるか分からないだろ!?」

まあ言ってる事は正論だった。だからと言って、物事には加減というものがある。ラオンはそれを知らない。

ここまでしなくても、体力は鍛え上げられるはずだ。一度に色々な物事をぶちこんでいたいラオンにはこのくらいが丁度良いようだった。

「ほら、次だ!行くぞ!!」

二人の手を強制的に引っ張ろうとしたその時…。


三人のすぐ後ろのビルから、突然崩壊音が響き渡る!

見ると、ビルが屋上からヒビが入り、そのヒビを綺麗になぞるようにビルが分断されていっていた!

たまらず走り出す三人。瓦礫が地上に次々に落とされ、れなたちや通行人の耳を刺激する。

地上を滑るように迫ってくる瓦礫を跳ねてかわし、頭上から落ちてくる瓦礫を伏せてかわす。

次々に落ちてくる瓦礫のなか、れなたちは元凶の姿を目撃する。

「あいつだ!」


倒壊したビルの上に、空を飛んでいる怪人がいた。

像の頭を持ち、赤や黄色で彩られたカラフルな服を着ている、何やら陽気な姿だ。

ビルを拳で打ち砕き、その瓦礫をこちらに向けて投げつけている。

小さな目は、れなたちに向いていた。


「よし…」

走りつつ、ラオンは飛んでくる瓦礫の軌道を読み取り、その隙間に飛び込んだ!

紫のスカートのポケットからナイフを取りだし、切り裂けるサイズの瓦礫を切り分けながら飛び、像モンスターに刃を向ける。

その像モンスター…ファンドンは、向かってくるラオンを見てニヤリと微笑む。

「そろそろだ、行けお前ら!」

ファンドンが鼻を振った。


同時に、青空に謎の光が出現する。

紫色の禍々しい光だ。危険を察知したラオンは空中で一時停止し、空を見上げる。


「…何だあれ!?」


空から落ちてきたのは…道化師の人形たちだった!

その大きさは人間ほどもある巨大な人形で、個体によって帽子と服の色、化粧の柄が異なっている。

道化師人形たちは地上に落ち、瓦礫まみれの道路に虫のように群がり、逃げ遅れた人々を襲い出す。

ラオンはファンドンよりも人形を優先し、空中から急行下、一般人に襲いかかる人形たちをナイフで一気に切りつけていく。

ラオンが通り抜けると同時に倒れていく人形たち。

れなたちもようやく事態の深刻さを理解し、互いに顔を見合わせ、拳を構える事で波長を合わせあう。

地を蹴って飛び出し、残りの人形たちを殴り倒していき、途中隙を見せた人形は殴らず持ち上げ、ビルの上のファンドンに投げ飛ばす。

ファンドンはこの抵抗も予測の範囲内のようで、鼻を軽く振るだけで人形を突き飛ばし、隣のビルに叩きつけた。

ビルの壁から白い砂煙があがる。


「今だ!」

砂煙があがった事でファンドンの視界が一瞬遮られた隙は見逃さない。

れなとドクロはすかさず空中飛行に移り、ファンドンに拳を向けて突っ込んでいく!

二人の息ぴったりの拳は、ファンドンの硬い皮膚をも突き通す衝撃を打ち放った!

相手の実力を甘く見ていたファンドンは瓦礫で片付けてしまおうと思っていたようだが、この一撃で自らの誤算を認めたようだった。

両腕を構えた防御姿勢のまま後ろに滑っていき、気合いで静止する。


れなはファンドンの前に立ち塞がり、こう聞いた。

「この像さんめ!一体何が目的だ!?」

ファンドンは武人らしく両足を曲げ、深く戦闘姿勢をとる。

目を閉じ、全身の魔力を手先に集めていくファンドン。

「お前達に我が主の事を知る必要はない。お前達もこの町の瓦礫となって死ぬのだ」

言い終わると同時に、ファンドンの手元に紫の光が集まり、巨大な光の斧が形成される。

ファンドンが斧を振りかぶり、そのまま振り下ろし、足場であるビルに思い切り叩きつけた!

同時にビルには無数のヒビが入り、ファンドンが地道に破壊していた時とは比べ物にならない勢いで倒壊していく!

崩れてく足場から逃げようとする二人だが、ビルにはまだ逃げていない人がいるはずだ。

崩れていく足元のビルにあえて飛び込み、地上に降り注ぐ瓦礫のなか、ビルにいた何人もの人々が落ちていく姿を目撃する。

落下中の瓦礫を殴り付けて破壊しつつ、落ちていく人々を抱き抱えて救出。今まさに壊れていく現場からの決死の救出劇だった。

ものの数秒でビルは倒壊するが、何とか皆を救出できた。

両手で持つ、脇に挟む、両足に挟む…とかなり無理矢理な体勢での救出となったが。

「やはり話に聞いていた通り…。数人の犠牲者も出さぬのか…」

空中飛行して複雑な表情を浮かべるファンドン。しかし、戦闘中にまた隙を見せてはいけないと思ったのか、気づいたかのように斧を振りかぶった。

再び魔力を集中させ、斧に魔力を集め出す。

ファンドンの莫大な魔力は、斧を更に光り輝かせ、強大なエネルギーでテクニカルシティ全体を神々しく照らし出した。

その光の中心に飛んでいるファンドンの姿は、天使と見間違える人がいてもおかしくなかった。


そんな突然現れた天使は、この町に更なる災厄をもたらそうとしていた。

「少し荒作業となるが、致し方あるまい」

その危険な魔力の塊である斧を町の中心に向かって投げつけてくる!

その際、猛烈な勢いで回転しながら飛んで行く斧から放たれる魔力の風は、地上のラオンや救出した人々を解放していたれなたちも動けなくなってしまう程のものだった。


斧は地面に衝突すると同時に小さな爆発を引き起こし、同時に大地を揺れ動かした!

それが、大地に直接魔力を送り込み、振動させているのだとラオンには分かった。

分かりやすく言えば…この状況はまずいという事だった。

「まずい!皆逃げろー!!」

ラオンの叫びで一斉に逃げていく人々。何から逃げれば良いのか訳も分からず怯えながら走り去る姿はファンドンには滑稽に見えたに違いない。


逃走劇と同時に、大地が荒々しく音をたてながらヒビ割れていく。

まるでガラスにヒビが入っていくかのような勢いだった。ヒビは徐々に広がり、やがて地割れとなって逃げ惑う人々を飲み込みだす。

地面に落ちていく人々。これがリューガならこの状況を全力で楽しみそうだが、ファンドンは彼らを哀れむような目で見つめていた。

「やばいな、これは…」

地割れに落ちそうになっている人々の手をとって助けつつ、ラオンは空中のファンドンに目をやる。

こんな事をして一体何が目的なのか、町を破壊しようとしているにはわざわざ町を真っ二つにするなど回りくどい事をする必要もなさそうだが…。

「…これでよい」

ファンドンの目的はどうやら町に地割れを起こす事のようだったらしく、被害をある程度確認すると、そのまま飛び去っていった…。

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