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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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悪乱修羅の襲撃 前編

悪鬼たちの本拠地…岩山の裏側にて。

元から強い力が溢れていたこの場に、更に強い力が生まれようとしていた。

罰悪修羅とリューガに見上げられ、赤い肉塊…悪乱修羅が全身から腐臭を漂わせながら脈打っていた。

この悪乱修羅は今までに死んでいった悪鬼たちの魂の塊。怨念と憎しみに満ちた恐怖の修羅。あと千人の悪鬼の魂が加われば、悪乱修羅は完全となるのだ。

張り付いた目玉や口は、笑っているようにも見える。脈打つ様子も、まるで踊っているかのような、様々な事を考えさせるような不気味さに溢れていた。


リューガは、右のポケットから青い石を取り出して、罰悪修羅に献上する。

「どうぞこれをお使いくださぁい」

黙ってそれを受けとる罰悪修羅。

この石は、リューガが集めてきた千人の悪鬼たちの魂の塊。同じ魂の塊である悪乱修羅とは違い、神秘的な光を放っている。

罰悪修羅は同胞たちの魂を掲げ、悪乱修羅に向ける。

石の光は強くなり、やがて完全に光に包まれると、悪乱修羅に向かって飛んでいく…。

光はそのまま悪乱修羅に取り込まれ、一体化する。

ここでリューガの仕上げだ。

「こいつも使うとより良くなりますよー」

今度は左のポケットから、エメラルド色に輝く石を取り出した…。

罰悪修羅は、リューガの異様な笑みを見つめ、大きく頷きつつも、内心深く怪しんでいた。

(この男…かつて世界を守った伝説の勇者と、悪意の化身である悪鬼を固めようというのか…。こいつの辞書に容赦という言葉はないようだな)

感心するところもあるものの、この容赦ない男がなぜ自分達悪鬼の味方をするのか…?



…まあ、考えてても仕方ない…。

とにかく、計画自体は順調だった。

「いくぞ。悪乱修羅を使い、必ずあの計画を実行する」




おぞましい光景が展開されるなか、れなたちは何も知らずに修行の岩場で激しい戦いを繰り広げていた。

と言っても仲間同士で互いに拳を放ちあう修行であり、決して仲間割れした訳ではない。

…最後に勝ち残った者に十円玉千枚、すなわち千円が与えられるという回りくどい賞金で、かなり殺気立っていたが。

「千円は私がもらう…!」

紫の長髪を振り乱しながらラオンがナイフを振って葵に向かっていき、葵は緑のサイドテールを振って空中飛行する事でサイドテールをラオンにぶつけて怯ませつつ空中戦に持ち込む戦術を使っていた。

「れなたちのやる気が出るからと思ってたけど…やっぱり賞金は無しの方が良かったかしら」

れなは、葵とラオンとは逆方向の場所で粉砕男と戦っていた。

ひたすら飛び込んで拳を叩き込もうとするれなを、粉砕男は二メートル程の体を器用に動かして回避。

黒目のない目でれなを見下ろし、隙あらば背後を突こうと側転までする。

「やれやれ、金の力は恐ろしいな」

れなの頭頂部を右手で掴みつつ、背中を左手で押す事によって勢いをつけ、そのまま右手を離す事で地面に叩き落とすという荒業を仕掛ける粉砕男。背中への衝撃に任せた攻撃に、れなは地面に打ち付けられるしかなかった。

背中を撫でながら立ち上がるれな。ここが戦場なら、倒れたところへまた追撃が来るだろう。

れなにはまだまだ隙が多いようだった。

「あぁー…獄炎刀がまだ使えたらってよく思うよ」

かつて邪神シンを倒した際に振るった獄炎刀…。思えばあれを持った瞬間に、れなはプロのような刀さばきでシンをあっという間に撃破していた。

確かにあれほどの力があれば、どんな敵でも怖くないだろう。

あのリューガにでも勝てるかもしれない。闇姫だって、獄炎刀を簡単に攻略できるとも思えない。

…しかし、獄炎刀は一回使いきりだったのか、今は力を失い、れなの研究所の倉庫で悪の力を集める杖と一緒に並べられる形で置かれている。

今はあの刀の事は忘れた方が良さそうだった。


こんな調子で、修行は激しくも、のほほんと自分達のペースで続いていた。

十時に修行を始め、丁度十二時頃…。

「そろそろお昼にしましょう」

葵の声で、れなは飛び上がって喜んだ。子供かと呆れながらラオンもれなの後についていくが、そんなラオンも昼食への喜びのあまり両足が信じられない程に震えていた。

ようやく休憩できる…。



だがその時だ。

平和な町の中心で、突如振動が走った。


「!?」

大地に伝わってくる振動波に、れなたちは一瞬で切り替えた。


岩と岩の隙間を掻い潜るように、何か嫌なオーラが飛んでくる。

アンドロイドではなく、人工生命体である粉砕男はより鮮明にそのオーラの嫌悪感を感じられた。

急な耳なりに急な胸焼けに近い感じが襲いかかる…底知れぬ邪悪な力に、生物らしからぬオーラ…つまり、生気を感じないような力が放たれていた。

不快な感覚に屈する事なく、粉砕男は力強い声をあげる。

「…皆気を付けろ!!」


その時、地中に走っていた衝撃が、地上へと近づいてきたのを感じた。

同時に、僅かに感じていた殺気も、確実に感じられるようになった。


全員が地面からの攻撃を察知し、一斉に飛び上がり、近くにあった背の高い岩石によじ登る。


回避は成功だった。

岩場の大地を突き抜け、大量の赤い触手が飛び出してきたのだ。

その触手には大量の目玉がついており、表面は血管のような物で覆われている…どう見ても、地中でできた植物やら生物ではない。

感じられるこの力は、悪鬼の物に近いとはじめに確信したのはラオンだった。

「こいつ…恐らく悪鬼だ!」

襲いかかる触手の真上に飛行し、両手で握りしめたナイフを一気に振り下ろして触手を切断する。

謎の黒い液体が飛び散り、思わず空中から派手に落っこちてしまうラオン。

「き、気持ち悪!!?」


そのダメージに反応したかのように、れなたちの周囲から次々に飛び出してくる触手たち。

この触手自体が悪鬼なのか、それとも固有の悪鬼から放たれているのか…。

とにかく、地中に何かがいるのは間違いない。

戸惑ってる時間などない。

れなたちは互いに頷きあい、闘志を確認しあうと、空中に飛び跳ね、地中に向かって一気に急降下!!

全身に土を叩きつけながらそのまま地面を貫き、地中へと進んでいく。


地中は茶色一色に染まっていた。

目の前の土をひたすら堀りながら、一同はそれぞれ別々の穴を掘り進んでいく。

目の前に無限に出んばかりの土をひたすら掘っていくのは中々腕が疲れる。

れなは途中で弱音を吐きそうになるのを抑えながらひたすら地中に潜む何かを追い続けていた。


十分ほど、まっすぐ掘り進めた…。

今や地上がどうなっているのかは分からない。先程までは土に伝わってくる衝撃で何となく地上の様子が分かっていたのだが、今はどれだけ深く潜ったか分からないほどだ。自分達の知らぬ間に、地上が滅茶苦茶にされていない事を祈る一同…。

そして、それ以前にもう手が痛くて仕方ない。

相手は一体どれ程深い場所にいるんだ、れなはもう疲れを通り越して苛立ちさえ感じていた。

「あーもう!!!」

他の場所を掘っている仲間にまで聞こえる程の声をあげる。地中でもうるさいくらいに響き渡る大声だ。

そろそろ苛立ちが限界に達しようとしていたその時!


「わっ」

土を掘る手に、違和感が走った。


れなたちは辿り着いた。


深い地底の先に、土の先に、大広間のような空間が空いていた。

ついに辿り着いたのだ。


「危ない!」

危うく落下しそうになりながら、一同は空中飛行を発動して何とか地底の大広間を見渡せる状態になる。


自然にできたとは思えないような広間だ。

かと言って、こんな地底深くにここまで綺麗な穴を空けられるとも思えない。

こんなものを作れるのは、悪鬼かモンスターぐらいだろう。


「よく来た」


低い声が、大広間に響く。



声の主は…広間の奥に一人佇んでいた。

全く気づかなかった…。れなたちは、自分達がまだまだだという事を見事に思い知らされた。


「あれは…!?」

罰悪修羅が、相変わらずの威厳を放って立っていた。

れなたちは、話こそ聞いていたが罰悪修羅とは初対面。にも関わらず、自然と構えをとってしまうほどに、凶悪なオーラを放っていた。

れなたちを見上げる赤い目には、殺気ではなく、何か別のものに対する期待を感じられた。


…つまり、彼には強力な助っ人がいるという事だ。


罰悪修羅とはじめに目が合った粉砕男は、全身に走る戦いの悪寒を感じ取った。

そして、これから何が起きるのかも察知した。

「伏せろ!!」

粉砕男の指示と同時に、全員は一斉に空中飛行を解除、地中の地面に降り立った。


粉砕男の予感は当たった。


突如、目の前の壁を何かが突き破ったのだ!!

降り立ったれなたちと罰悪修羅が向かい合う位置に出現した何かは、罰悪修羅の姿をかき消すように土砂を撒き散らす。

両手で顔を覆いながら土砂を防ぐ一同。


土砂の中、見えたそれは…巨大な目玉がついた赤い触手である事が分かった。

異形の物体を前に、さすがのれなたちも軽く恐怖する。

大広間が崩れる事を悟り、粉砕男がれなとラオンを両腕に抱え、葵は崩れ行く地中の道を飛びながら、粉砕男に安全なルートを伝えていた。

迅速な対応だった。

「こっちなら土砂が少ないわ!急いで!」

轟音と共に荒れ狂う触手が次々に出現する。



激しく揺れ動く地上では、突如出現した赤い触手に多くの人々がパニックに陥っていた。

れなたちが地上に飛び出した際も、地上に頭を出した瞬間に、れなが思い切り頭を踏みつけられた。

「いってええな!!何すんねんこの」

れなが憤慨している途中で、れなたちは気づく。


恐ろしい事態が発生しているようだった。

いつもの平和な町に大量の赤い触手が張り巡らされ、触手についた目玉や口は嘲笑うかのように歪んで動いていた。

間違いなく、罰悪修羅の計画だろう。

「…!止めるよ皆!!」

もうここまで来たらやる事は一つ。町を襲う脅威と戦うまでだ。


れなたちは、赤い触手に向かっていった…!





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