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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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狙われた獄炎刀

他の山々に囲まれ、全く目立たないある山に、強大な存在が潜んでいた。


赤い体に茶色いローブを羽織った巨大な赤鬼、罰悪修羅が岩の玉座に座り、その周囲には小さな小鬼たちが頭を下げて敬意を示している。

岩山に大穴を空けただけの空間で、とても根城とは言えないような貧相な場所だったが、悪鬼たちにはこれくらいが丁度いいのである。

ぽっかり空いた入り口の大穴から、冷たい風が入り込む。


罰悪修羅は、その風から殺意を感じ取った。


霧に紛れ、一人の男が無数の悪鬼に臆する事もなく近づいてくる。

黒いスーツを着ているが、その髪の毛はボサボサで不格好。

「悪鬼諸君、こんばんは。今夜も惨めですなぁ」

…リューガだ。


リューガがスーツを着てきた理由は簡単。悪鬼たちの根城へお邪魔させていただくせめてもの礼儀…ではなく、ボサボサな髪の毛とのギャップで悪鬼たちの怒りを誘う作戦だった。

単純な下級悪鬼たちは見事に引っ掛かり、激怒する。

「貴様なんだその格好は!身だしなみくらいちゃんとしろ!!」


直後、彼らの足はリューガの念力で地から離れ、天井に押し付けられ、動けなくなる。

更に無理な体勢で押し付けられたものだから、弱い悪鬼たちはすぐに息ができなくなり、やがて動かなくなった。

残された罰悪修羅は、部下の死にも何の情も抱かず、ただリューガだけを見つめていた。

リューガが、先に問う。

「罰悪修羅、お前の目的はなんだ?」

「…簡単だ。人間を潰し、悪鬼の世界を作る。その為にはまず、必要な物がある」

罰悪修羅の重い声は、威風堂々と暗闇に響いていた。

必要な物…部外者のリューガにも計画を明確に説明する罰悪修羅の自信は相当なものだ。

「へえ、その必要な物って?」




「獄炎刀が必要なのだ」



獄炎刀。それは、彼ら悪鬼の産みの親であり、この世に地獄、罪の概念を作り出したシンと言う邪神を打ち倒した伝説の刀。


実はそれをかつて振るったのは正に今リューガと対立しているれなであり、シンを倒した後、力を失った獄炎刀は研究所の倉庫にしまわれている。


れなという小娘ごときが主を倒した事は、既に罰悪修羅の耳に行き届いていた。

「確かに我が主を倒したのは見事だ。しかし、鉄屑ごときでできた娘に獄炎刀の力を完全に引き出す事などできはしない」

リューガは、目を細めて黙って聞いていた。

罰悪修羅は、獄炎刀を奪い取り、その力を悪鬼である自分の力で完全に引き出すつもりなのだ。

確かに、地獄で生まれた悪鬼であれば地獄で作られた獄炎刀の力を引き出すなど造作もない。

リューガはこの話を聞き、新たな「就職先」を発見したと確信した。





「あ!見つけた!!」

その頃れなたちは、研究所の倉庫を漁って刃のない刀を発見していた。これこそが、力を失った獄炎刀だ。

当時シンを倒した時っぽく振るってみせるれな。当時と比べると炎の刃がない事もあり、とにかく軽くて持ちやすい。

「ほりゃあああああ…」

やる気のない叫びと共に獄炎刀を振るう。二階で研究の仕事をしている博士に迷惑をかけないように大きな声を出さないよう考慮したのだが、このやる気のなさにはもう一つの理由がある。

この刀が本調子なら、これでもかと言うくらいに役に立ってくれるというのに、今ではこんな姿。

ため息をつくれなの姿を、妹のれみは虚しそうに見つめていた。


しかし、今ではこんな姿でも強力な力を秘めた刀だ。

誰かが必ず狙ってやって来るに違いない。れなにしては珍しく、先の事を色々と想定していた。

…まあその思考をもう少し辿っていけば、この後ゲームしようという考えにすぐに行き着くのだが。

まあ何であろうと、れなの考えは的中する事になる。


「お姉ちゃん、なんか変な音しない?」

れみの一言で、れなは耳を澄ました。確かに、何か妙な音が聞こえてくる。

カン、カン、といった感じの、鋼を打ち付けるような音が…。

どうやら研究所の屋根の上から聞こえてくるようだった。何かおかしなものがあっても嫌なので、二人は直ぐ様屋根の上へと飛行していった。


研究所の白い屋根の上…そこには、招かれざる客が肩を並べて待っていた。

一人は、真ん中から赤と青の二色に分かれた服を着たリューガだ。れなとれみの緑の瞳に、いつもの嫌らしい笑みを浮かべていた。

もう一人は背中を丸めた小柄で灰色の鬼…顔だけは厳つく、左手には四角くて銀色の鋼を持っている。

「リューガ!お前…!」

下手に戦わない方が良いと分かっていたが、れなたちは一応構えをとる。

屋根に照りつける日の光とは逆に、リューガからは冷ややかな殺気が漏れていた。

「まあそう構えるなよ。俺は新しい場所へ就職したんだし、祝ってくれや」


不思議な事に、何となく分かった。こいつは、悪鬼のもとについたのだ。

隣でリューガに服従しているかのような素振りを見せる悪鬼が何よりの証拠だった。

「俺ったら優秀でさぁ、もう上層クラスにまで昇格しちまった訳よお」


れなとれみはただただ睨むばかりでまるっきり話を聞いてない事に気づいたリューガは、珍しく残念そうに咳払いをした。


「…さて、今回の目的はズバリ獄炎刀だ」

「なに!?」

れなは、何としてもここを通すものかと両手を広げる。

獄炎刀を今更何に使おうとしてるのかは分からないが、こいつにだけは渡してはならない!

だが、今回相手するのはどうやら隣の悪鬼のようで、リューガは無言で空中に飛び去っていった。

悪鬼は鋼を右手で打ち付けながら向かってくる。

「俺は剛白鬼ごうはくき!獄なんとかをよこしなぁ?」

見た目どおり、頭は悪いようだ。ついさっきまでリューガが言っていた獄炎刀の名前をすっかり忘れている。

鋼を打ち付けながら向かってくる剛白鬼!

れなたちは屋根への被害を考慮し、バク転して華麗に回避しつつ屋根から飛び降り、地上に降りる。

研究所に被害が出ないように戦いたいところだが、やつの目的は獄炎刀。

ここから離れる訳にはいかない。

敵より目的の物を優先する程度の知性はあるらしく、剛白鬼は研究所の壁にかけてある倉庫のシャッターを発見し、それをこじ開けようとする。

「ちょ!シャッター開けるならあのシャッター開けるやつ使えよ!」

れなは色々と心配するところが違う上にシャッターを開く棒、フック棒の名前が思い浮かばずにおかしな声で叫んだ。

剛白鬼に近づくも、鋼を持った左手で軽く殴り飛ばされてしまい、難なくシャッターを開けられてしまう。


無数の物品が無造作に積まれた倉庫を見て、剛白鬼はヤル気満々で獄炎刀を探しだした。

大きな荷物も軽々持ち上げ、その辺に投げ捨てる。人ん家の物を一体何だと思ってるんだろうか。



「あったどー!」

剛白鬼が叫ぶ。


叫びつつ掲げたのは、かつて博士が愛用していた孫の手。今ではれみに掻いてもらってるので、使わなくなった思い出の品だ。

「それは獄炎刀じゃないよ…」

さすがに呆れたれなの呟きで、剛白鬼は更に漁る。


次に剛白鬼が見つけたのは、白い手がついたマジックハンド。これはれなとれみが時々行うスカートめくり選手権の際に使われる非常に非常に大切な物だ。

「やめろー!!それだけはー!!」

れみが飛び出し、その小さな体で剛白鬼に抱きついた!

虫を払うかのごとくれみを振り払う剛白鬼。

獄炎刀を見た事がない剛白鬼は早く見つけ出したい一心で倉庫を本格的に荒らしだす。

人ん家の倉庫をゴミ捨て場同然に扱う剛白鬼にもう我慢ならない姉妹は本格的な戦いを挑む為、剛白鬼の肩を二人で同時に掴む。


しかし、その直後剛白鬼が持ち出した物に二人は仰天する事になる。


「…これか!」

それは獄炎刀だった。

力を失った事で本来あるべき地獄の炎でできた刃はなかったが、持ち手だけでもその威圧感は凄まじいものだった。

一瞬硬直してしまう姉妹を見て、剛白鬼は笑う。

「さてはこれが獄なんとかだな?」

ついに目的の物を手にした喜びに打ち震え、獄炎刀で鋼を打ち付ける剛白鬼。焦っていた二人は無言で獄炎刀を取りかえそうと手を伸ばすが、剛白鬼は鋼を二人の手の甲に打ち付けて反撃した。

「いいいってええええ!!!」

剛白鬼は高笑いをしながら、右手に獄炎刀を持ちながら突っ込んでくる。

勢いのままに鋼を打ち付け、様々な豪激で何度も頭を打ち付けてくる!



だが、痛がりつつも姉妹は何かおかしな事に気づく。

「…ねえ、あんた、なぜ獄炎刀使わないの」

れなの発言に、剛白鬼はよくぞ聞いてくれましたとばかりに直ぐ様答える。

「これは実に持ちやすい刀だ!俺のこの鋼で刃を作れば、きっと素晴らしい刀になるぜ!」

とんでもない事を言い出した。この名刀をこんな間抜けにアレンジさせてなるものか。何としてでも止めなくてはならない。

れなは右手の平にエネルギーを集め、青く輝かせる。


そして、青く輝く破壊光線、オメガキャノンを放つ!

研究所に当たらないように、剛白鬼一人に向かって凄まじい勢いでその場の大地を揺るがしながら飛んでいく。迫力だけでも圧倒されそうな光だが、剛白鬼は自ら向かっていく。



「ぎゃあああああ!!」

剛白鬼は先程の勢いが嘘のように普通にオメガキャノンに直撃し、普通に吹っ飛ばされた。

光線に吹き飛ばされて地面に頭部を叩きつけ、気絶した。手元の獄炎刀は勿論無事だ。

れなは獄炎刀を拾い上げ、剛白鬼を見下ろす。

「ついにこれにまで目を付けるやつが出てきたんだね…」

相手は着々と計画を進めていっている。

いつかは罰悪修羅とれなたちが顔を合わせあい、戦いにも発展するだろう。




それからしばらくして…。

「…ん?」

剛白鬼は、研究所の前で目を覚ました。

あの激闘の記憶が曖昧になっている。思い出すまでしばらく時間がかかったが、剛白鬼は思い出した。

「…俺は確か獄炎刀を取ろうとして、そして…」


ハッ、と気づいた。

左手にいつも握っている鋼がないのである。



れなとれみは、剛白鬼から奪った鋼を自室の机の上に置いて虫眼鏡で観察しまくっていた。

悪鬼の持っていた鋼…ここまで興味深いものも珍しい。

「それを返してくれええええええええ!!」

窓の外から剛白鬼の叫び声が聞こえてきたが、姉妹は完璧なスルースキルでそれを受け流していた…。

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