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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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オニオニギリ

鬱蒼と木々が生い茂る山奥。何がいてもおかしくないこの山で、一人の鬼が憂鬱そうにため息をついていた。

その姿は、白い米粒の塊…おにぎりの体に手足を生やし、頭にあたる部分から黄色い角を生やしたまさにおにぎりの鬼だった。

大岩に寄りかかりながら棍棒も大岩に預けるように立て掛け、木々の間に見える青空をぼんやり見上げる。

「昔は人間もあっさり捕まってくれて食いやすかったんだがな…今じゃ何なんだよあの兵器は…」

このオニオニギリは江戸時代から山奥から降りてきては人間たちをおにぎりにして食べていた恐ろしい鬼として恐れられていた。

だが長年の歴史に渡って人間は近代兵器という強大な武器を手に入れる。さすがの鬼もこれには対抗できず、こうして山で不味い虫を食って飢えを凌ぐしかなかった。


「どうした、安定した生活が欲しいか」

何やら怪しい声が草の隙間から聞こえてきた。

オニオニギリは怪しみつつも、昔からこうして人間たちにも不意打ちで挑戦を持ち込まれたものだ。臆する事なく返事をする。

「そうよ。誰だか知らんが、お前も俺を馬鹿にしにきたんだろ」

「いいや、そんな事はない」

オニオニギリは、表情を変えた。


…木と木の間を潜り抜け、赤茶色の逞しい体の巨大な鬼が現れたのだ。

悪鬼の王、罰悪修羅の登場だ。

同じ鬼としてその力を感じたのか、たまらず短い手足で彼に服従の意を見せる。

「そう恐れるな。同じ鬼として嘆かわしい。それより、貴様に良い物をくれてやろう」

罰悪修羅の手には、エメラルド色に耀く美しい鉱石がのっていた。

ひねくれ者のオニオニギリでも惹かれるような光だった。

無理もない。これは勇者エメラルドの魂の欠片。惹かれない訳がないのだ。

「これを食らえば今までにない力が手に入る。これで貴様も人間を料理し放題だ」

「ほ、本当か…!?」




不穏な空気が流れるなか、れな姉妹は今まさに二人もの鬼が存在している山を窓からぼんやり眺めていた。

「あー…特に何もない日って、特に何もする事ないね…」

れみの言葉を聞いて、れなはより無気力になっていく。そのうち窓にかけている手にも力が入らなくなっていき…。

「あ」

窓から、落ちた。


地面に派手に尻餅をつくれな。凄まじく痛い。

「いってええええ!!私じゃなかったら尻の穴がもう一つ増えてたところだぞ!!」

自分が悪いのに逆上するれなを、れみは相変わらず呆れ気味に見下していた。


仕方ないので、暇潰しとしてれな姉妹は町へ向かった。

相変わらず工業も盛んなテクニカルシティの町並みは今日も平和だ。人間も、丸い身体のモンスター、マルマンも皆平等に過ごしている。

とにかく平和だ。

そんな平和な光景のなか、その平和を砕くある物が道端に置いてあった。

「あ、おにぎりある」

店と店が左右に並ぶ一直線の道のど真ん中に、おにぎりがポツンと置いてある。

明らかに怪しいが、皆自分の事をしていたい人々は見て見ぬフリをして通りすぎていく。

自分達も何かしら社会貢献しなければと考えていたれなは、そのおにぎりを拾い上げる。

「こんなの置いてあったら人の邪魔だよね!!つー事で、いただきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」

何故かやたらハイテンションでおにぎりにかぶりつく。れみは止めようとしたが、もう手遅れだった。


突如、れなの口に衝撃が走る!


「へへへ!まさか本当にかかる馬鹿がいるとは!」

れなの口のおにぎりには、よく見ると物凄く細い糸がくくりつけられていた。

遥か上空にはおにぎりのような形の鬼が空を飛びながら釣竿を持ってリールを回す光景が。れなは文字通り餌にかかったのだ。

オニオニギリはそのまま凄い速さで山に向かって飛んでいく。

「あっ!待てー!!」

れみも空を飛んで追いかけるが、あまりの速さにれみも追い付けなかった。



町から山へ飛んでいくのは五秒ほどだった。

オニオニギリは久々の獲物を捕らえた喜び、そして例のエメラルドの力で大幅にパワーアップしていたのだ。

まあその途中で勢い余ってれなを木にぶつけまくっても気にしないなどがさつな性格が目立っていたが。

自身のお気に入りの広場にれなを放り投げ、腕を組んでれなを見下ろす。

まだおにぎりを食べているれなは黒ずんだ黄色い髪を地面に垂らしながら間抜けな顔で見つめてる。

「お前この機に及んでまだ気づいてないのか!お前は今からおにぎりにされて俺に食われんだよ!!」

「え、うちおにぎりにされてまうん」

煽りとばかりに関西弁を発動するれなにオニオニギリは軽く怒りを覚え、彼女を暴力的に掴みあげる。

獲物と語る事などない。食材はとっとと料理するべき。

オニオニギリの固有思想だった。

「さあ…バナナみたいな髪の女入りのおにぎりだ!」


オニオニギリはれなを引きずっていき、他の地点にある広場に辿り着く。

さっきの広場よりも広い。すぐそばには大量の米が入った大きな樽があった。

恐らくあの米を使ってれなをおにぎりにするのだろう。


案の定左手にれなを持ったまま器用に右手で米を取りだし、それをれなの体にべたべたくっつける。

これにはさすがのれなも気持ち悪さに暴れだした。

暴れれば暴れる程オニオニギリの食欲を刺激する事になる。

米の粘着力は凄まじく、れなはあっという間に米に包まれて、一分後には綺麗な三角形のおにぎりに変えられていた。

まさに職人技。

オニオニギリは海苔もつけようかと思ったが、れな入りおにぎりのあまりの出来の良さに我慢できず、その場ですぐにかぶりつく事にした。

大きなおにぎりを持ち上げ、牙の生えた口を大きく開く。

「では、いただきます…」

数十年ぶりのおにぎりだった…。

思い切り豪快な一口を決めるオニオニギリ!



「…!?」

しかし、異様な感覚が口内に走る。

何か鉄のような物を噛んだ感覚と近かった。

そう、れなはアンドロイド。人間ほど柔らかくないのだ。

たまらずおにぎりを手放すオニオニギリ、犬のように体を振って米粒を振り撒くれな。

「お、お前人間じゃないな!?」

「今更かよバーカ」

今さら気づいたオニオニギリを滑稽と言わんばかりに馬鹿にした後、れなは飛び出し、拳を振り上げた。

だがエメラルドの力で強化されていたオニオニギリも負けてない。

腰元から瞬時に棍棒を取りだし、振り上げてくる!

あまりの反射神経にれなも対応できず、足元を殴られる。中々の衝撃だった。

足先を押さえながら落っこちるれな。

おにぎりとは言え、やつも鬼だ。

更なる追撃を決めようと迫ってくるオニオニギリ!

だが、逆にこういうパターンはれなの得意な状況だ。

草を踏み散らしながら向かってくるオニオニギリに、れなは渾身の力を込めた拳を振り上げてオニオニギリの海苔に包まれた腹にお見舞いする!

「ぎゃああああああああああ!!!!」

恐ろしい鬼の悲鳴が、森に響き渡った。


勝負はつき、れなは何とか鬼の住み処から生き延びる事に成功した。

後から、オニオニギリは色々と食料危機に陥っている事を知り、しかしそれに対してれなも人間を食うのは良くないと反論するのだった。

「ったく、俺はただ生きていく為に人間を食ってるだけなんだよ!」

「もっと他の物にしたらどーなの。それこそおにぎりとか」

これに関してもオニオニギリは人間が入っていないとそれはおにぎりとは言えないという一方的な主観を持っていた為、解決には至らなかった。

「いいか?また俺は来るからな!」

わざとらしい地団駄を踏みながら歩いていくオニオニギリ。

れなとの戦いで体が負傷していたのか、背中の一部から体を形成する白い米粒がこぼれ落ちてきていた。

れなはそれを見て、舌なめずりをする。

「色々と騒がせてくれたんだ…。対価を払ってもらおうか」

「は?」

オニオニギリは、もう痛い目にあったから良いだろと言いたげな顔でれなを睨み付けてくる。


「その体を一口食わせろおおおお!!」

れなは飛びかかり、オニオニギリの頭に食いついた!!

オニオニギリは悲鳴を上げる間もなく仰向けに倒れ、れなを振り払おうとする。


すると、食い込んだれなの歯に米粒らしからぬ硬い物が触れた。

「ん?」

噛むのをやめ、頭に手を直接突っ込み、その硬い物を引きずり出す。


それは、エメラルド色に耀く石だった。

間違いない。勇者エメラルドの魂の欠片だ。

「これは!こんな物食ってたの!?」

「あー、それはある鬼が強くなれるって言うものだから、もらったもんなんだ」

何、と表情を一変させるれな。

ある鬼…?それは一体…?

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