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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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驚異の命中率 カスリモ

「当たんねえ…当たんねえよおお…」

白い体色、鬼のような角に、白い触手の両手、長大な足、その割には迫力のない黒豆のような目を持つモンスターが、森の木に向かって触手を振り回して修行を積んでいた。

その隅では屈強な日焼けした肌に白目を剥いた奇妙な大男…粉砕男の監視の目が光ってる。

「腕が震えてるぞ。敵をよく見ろ」

指示通りに動くモンスターだが、どうしても触手は当たらない。突きだそうとも横に振ろうとも決して当たる事はないのだ。

かれこれ一時間が経過しようとしている…。



彼の名はカスリモ。

粉砕男に最近弟子入りしたモンスター戦士だが、見ての通り長い腕を持つにも関わらず、あまりにも命中率が低いのだ。

打っても打っても当たらないが、寛大で、そして厳格な粉砕男は彼を監視し続け、一切目を逸らさない。


「ぐ…はあはあ…」

仰向けに倒れるカスリモ。名前の通り、掠りもしなかった。目からこぼれ落ちそうになる涙を拭いながら、カスリモは明るい青空を見た。

自分の目は拭えるというのに、何故目の前の物には当たらないのだ…。

「何で当たらないんだよおおお…」

「諦めるな。今度はやり方を変えよう」

粉砕男が右手を伸ばす。すると、彼の背後から今回の助っ人が現れる。


白い二つ編みの髪に紫色の服、ドクロ骸を型どったスカーフリング、赤いつり目の少女、ドクロだ。

ドクロ型の髪飾りを整えながら、右手と右足を突きだす構えをとるドクロ。

「カスリモ。次は動く相手を前にしてもらおう。まずはターゲットを動かす事で、動体視力を鍛えるのだ」

粉砕男の指笛と共に、ドクロはカスリモ目掛けて飛びかかる!

必死に両手の触手を振り回して対抗しようとするが、やはり掠りもせず、ドクロの 右足が空中で一撃を決める。

横方向に水平を描くようにぶっ飛ぶカスリモ。あまりの当たらなさに、ドクロもかなり驚いてるようだった。

「あんまり痛め付けるのは趣味じゃないの。もっと集中して」

厳しい台詞だ。カスリモは触手を突きだして攻撃してくるが、ドクロが全く動いてないにも関わらず、ドクロの頭上という明後日の方向へ攻撃をとばしてしまう。

「なぜだぁ…なぜ狙ってるのに…」

泣き出しそうなカスリモをもう一度蹴飛ばす。転がっていくカスリモを見るのは中々辛かった。

草まみれになったカスリモは、当たってないにも関わらず傷だらけの自分の触手を見た。さっきまでは泣き出しそうだった彼だが、彼も不真面目にやってるのではない。

今度は真剣に自分自身を分析し始めたのだ。粉砕男とドクロも興味深そうにそれをじっと見つめている。


「…二人とも、俺ちょっと自分の攻撃が当たるように精神修行をしてみるよ。そっとしておいてくれないか」

そう言うなり、カスリモは拒否権はないとばかりにその場で両手の触手を絡ませあい、瞑想を始めた。

仕方無い。

二人は気が済むまでカスリモに瞑想させる事にした。


「粉砕男、あんなの弟子にして大丈夫なの。あんたが振り回されてない?」

「いや、俺はむしろ彼に可能性を感じているよ」

修行帰りの一本道、二人はカスリモの可能性について考えていた。

ドクロはあのカスリモにどうしても戦士としての才能を見いだせないが、粉砕男は彼に秘められた大きな力を確信していた。

弱いどころかそもそも攻撃が当たらない彼。だが攻撃が明後日の方向に飛ぶのは、相手にとっては予想外の出来事として機能する。

これを何とか利用すれば、勝利を導きだせるのではと考えていたのだ。

「どんな戦士にも相手に勝つ才能はある。きっと彼にも…」

そうかなぁと、半ば上の空にまでなっているドクロ。正直彼の修行に付き合うのは中々退屈なものだった。できればもう付き合わされたくないのだが…。

「いいかドクロ。才能というのは、表に出なければ出ないほど、大きく育つものなんだ」

「ふーーん…」







その時!

二人は察知した。森中に強力な力が駆け巡るのを。

一瞬だけ暴れまわったその魔力は、一人の戦士から発せられる魔力と波長が似ていた。

「ま、まさか!」

同時に、振り替える。

森の上に、紫色のオーラが集められていた。




「やった…やったぞ…!」

カスリモは、右の触手の先に紫色の巨大な球体を出現させ、涙目で感動を噛み締めていた。球体は少しずつ縮小していき、やがてカスリモの顔より小さくなる。

そこへ、茂みをどけながら二人が走ってきた。

「カ、カスリモ、お前!」

頷くカスリモ。まさかこんなにも早く才能が開花するとは…。

才能という新たな可能性に、ドクロは口を開きっぱなしだった。

周囲に放っていた魔力は球体に完全に集まり、全ての魔力が小さな球体に集中している。コントロールも完璧だ。


粉砕男が笑顔で両手を広げる。

「よし!カスリモよ!早速その攻撃を俺に撃ち込んでこい!」

カスリモは、今まで扱った事のない魔力を師匠にぶつけるのはさすがに躊躇った。だが、こんな自分をここまで育ててくれた師匠だ。


こんな攻撃で、散るはずがない!!!

「師匠…俺の初攻撃、カスリモ玉!くらええ!!!」

カスリモは、野球のピッチャーのような構えで球体を投げ飛ばしてきた!

振動で触手が震え、その破壊力はカスリモ自身の予想も上回る。

風をも蹴散らしながら飛んでくる球体に、粉砕男は全力の構えをとる!!




だが!!!





「え」

三人同時に、気が抜けた。





球体は、粉砕男の目の前で突然方向を変え、空の果てへと直行。

そのまままっすぐに飛んでいき、空の果てで紫色の爆発を引き起こしていた。

空の一部が紫の絵の具で塗られたようになるほどの絶大な魔力だった。

それが、あらぬ方向に…。




「カスリモ、もう一回瞑想するんだ」


「…もうやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

カスリモは、狂ったように触手を振り回し、残像が見えるほどの速度で粉砕男に殴りかかってくる。

その攻撃も、一発も当たる事はなかった…。

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