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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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冷え冷え温泉はいかが

ここはある地方にある温泉。

沢山の人々が日頃の疲れを癒す為にここを訪れ、緑色の湖のような温泉に浸かりにいく。

白い湯気がたつなか、男風呂も女風呂も賑わっていた。


だが、事件は起きた。


突然、温泉に浸かっている客全員が寒そうに震え出す。

温泉中の湯が少しずつ冷えていき、湯気もでなくなったのだ。

雪のような冷たさにこりゃたまらんと抜け出そうとする人々だが、温度が低下し続ける温泉はついに氷が張り始める。

驚きのあまりすぐに逃げ出せない人々を氷はあっという間に包み込んでいき…。


最終的に、温泉には人型の氷像が並ぶ事になってしまった。


「んー良い氷像!」

凍りついた彼らを見て、一人の少女が男湯から歩み出てきた。

水色の帽子に厚着、赤いマフラーという真夏とは思えない格好をしている…。

彼女は氷の悪魔、パリア。

また何か企んでるようだった。



その頃れなたちの事務所には温泉の招待状が届いていた。

どうやらテクニカルシティの各所にチラシが配られてるらしい。

れみはチラシを片手に姉とドクロに向かって愚痴るように言った。

「こんな暑い日に温泉なんて行きたくないけどね」

しかしれなとドクロはこんな暑い日こそ汗を流したいとすっかり温泉にいく気満々だ。

まあたまには良いかと、やたら偉そうなれみは、温泉に行く事に決めた。



その温泉があるのはここから約三十キロほど離れた場所。空中飛行すればすぐの距離だった。

三人はウキウキ心を踊らせながら、生暖かい夏の風で髪を揺らしながら飛んでいく。何だかんだれみも楽しみなようだった。



そして、温泉があるという観光地の森林に辿り着いた三人。

森の木々はテクニカルシティ以上に濃い緑色の葉っぱを生やしており、一目で自然を感じさせる。

早速雰囲気が出てきた。

三人の期待は高まるばかりだ。

降りていくと、茶色と赤の小さな建物が、森の木々の隙間から見えてきた。

「あれだ!」





その温泉の名前は、「温かい温泉」。

何とも地味な名前だ。

温かい温泉、とデカデカと書かれた看板は何とも言えない。


だが、問題はそこではない。

何故か入り口のドアには「店、たたみます」という看板が下げられているのだ。

あんなチラシを配っといてこれはどういう事なのだろう。

一応ドクロが先行して、ドアのそばにあるインターホンを押す。

ピンポン、と音が店内に鳴り響く。




「…すみませんお客さん。当店はもう…」

ドアが木が軋むような音と共に開き、青ざめた老婆が現れた。

その表情に思わず後ずさるドクロ。

どうやら女将のようだった。これは何があったのか聞くチャンスだ。

「何があったんです?」

女将は一瞬ため息をつくと、暗い声で事情を話す。

「…実は水色の服と帽子の魔法使いのような女の子が現れまして。その子がこの店の全ての機関を凍らせてしまったのです」

三人は息を呑み、目をつり上げる。

その女の子…凍らせた…もう全て分かった。

「そいつは今どこに?」

「はい…今女湯に浸かっておられます…」

三人は頷きあうと、たたまれようとしている店に堂々と入っていく。

動揺する女将…。




犯人は、氷水に変化した女湯に浸かってリラックスしていた。雪のように真っ白な肌に、氷点下の水をかけながら気持ち良さそうに笑ってる。

周囲には氷付けになった犠牲者たちが、恐怖におののいた表情を浮かべている。

「ふーやはり暑い日は氷付け温泉に決まりだねっ!」

宣伝するような声が、温泉の冷たい空気を通じて響き渡る。




「パリアァ!!!」

怒鳴り付ける声と共に、ドアが豪音をたてて開かれた。

氷水が吹っ飛ばんばかりの勢いで体全体を引っ込めるパリア。

大急ぎでタオルを体に巻き、敵襲に備える。


目の前にたっていたのは、れな、れみ、ドクロ。

楽しみにしていた温泉を凍らされた三人の目は、氷も溶かさんばかりの怒りが浮かんでいた。

パリアは空中に飛び上がると、体を振って周囲に水を撒き散らし、凄まじい勢いで温泉からあがる。

入り口のドアを乱暴に開き、更衣室に出る…。



しばらくすると、パリアはいつもの格好、水色の服に帽子、赤いマフラーの姿で戻ってきた。

「あんたたち何でこんなところに!!?」

「こっちの台詞だパリア!こんなところで何してる!」

温泉に入れなかった事に一番怒っているれみはそう怒鳴ると、パリア目掛けていきなり殴りかかる。

パリアは右手の平でそれを防ぎ、非常に腹立たしい笑顔で語りだす。

「簡単な話。私はただ氷のお風呂に入りたかっただけ。この温泉は氷風呂にぴったりなの!」

パリアの事だ。本当にこれだけのようだ。

そんな下らない事の為にと怒りを燃やしながられなたちは総攻撃を開始した。

パリアの全方位から拳や足を突きだして攻撃を繰り出すが、パリアは体をくねらせるように全て回避する。

さすがは氷の悪魔、闇姫の数少ない友人。戦いの技術も完璧だ。

避け際に両手から冷凍光線を発射し、元温泉にぶつけ、更に氷の範囲を増やしてスケート場に変えてしまう。

パリアの赤い長靴は氷の地面と一体化するかのように滑り出し、氷像をかわして素早く動きながら両手の平から白い雪玉を放ちまくってくる。

雪玉の硬さはれなたちの予想を遥かに上回る鉄球のような硬さだ。

「いったぁぁぁぁ!!!」

れみが真っ先に叫び、頭を抱えてジタバタしている。パリアはさも嬉しそうに嘲笑い、悪魔らしい姿を見せた。

パリアのスケート戦法はかなり効果覿面。れなたちは見事に惑わされ、パリアの動きを予測しづらくなる。

「さあ!私を倒さないと温泉には入れないよ!」

挑発しながら相変わらず雪玉を放ってくるパリア。

れなたちは器用にかわしつつ、作戦会議をした。

「ねえ、私たちもあの動きできないかな?」

れなの提案だ。

あそこまで綺麗な滑りには自信がないが、相手を真似る事でちょっとした効果が出る事も多い。

今は迷ってるひまはないとドクロは先導して氷の上に立った。

ドクロの左右にれな姉妹も飛び乗り、パリアを指差す。

特に決め台詞もなく、ただ指差すだけだが…。

「ふーん、私と同じステージに立って、どうするつもりなのかな?」

パリアの挑発に、三人は息ぴったりで滑り出した。

その速度はパリア以上に高く、氷のステージ上を縦横無尽に滑り回る。

思った以上の速度に驚くパリア。

「こ、こうなれば私もスピードアップしかなさそうね」

右足に力を込めるパリア。


しかし、三人は速度ばかりでほとんど方向転換がなってないのに気がついた。

パリアは呆然と、三人の勢いで生じる風に水色の髪をなびかせていた。

「…ふふ、下手くそめ!」

やーいやーいとガニ股でふざけたステップを踏み出すパリア。

れなたちは転ばないようにバランスをとるのに精一杯だ。


だが…予想外の事態が起きた。

「え?」

滑る三人は、偶然全く同じ場所を目指して滑り出したのだ。


その軌道の先には、目を丸めるパリアが立っていた。

猛スピードで突っ込んでくる三人に、パリアは両手を突きだすしかなかった。

そんな反撃も虚しく、三人の勢いはパリアをいとも容易く押し出し、吹き飛ばす。

パリアは凍った湯に向かって落下。

「ぎゃああああああ!!!」

温泉で、氷がかち割れる音が響き渡る!



気づくと、四人は氷の破片の中心で、水に浮かんで目を回していた…。


「いやあ本当に良かった…!感謝してもしきれません!」

女将はれなたちに何度も頭を下げ、言っても言いきれないような感謝の気持ちを表した。

三人は控えめにお辞儀をすると、そのまま背を向けて去りだした。

「ちょ、ちょっとお待ちください!無料券を…」

「いえいえ!」

ドクロが手を振る。

ただ温泉を救う為だけにやって来た戦士…という去りかたがかっこいいと思っていたのだ。

黙り込んでしまう女将に再び背を向ける。



「無料券だってえええ!!?」

れな姉妹は違った。

温泉を救った勇者として振る舞いたかったドクロは、顔を歪ませてため息をついた…。

「…まあ元々温泉に浸かりに来たんだしね」

その日三人は、元通りの温泉で仲良く過ごしたという。

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