新たな敵 罰悪修羅
場面は西の方にひっそり佇む小さな村。
ここで、ある一人の少女がある怪物たちと奮闘していた。
「くっ、切っても切ってもキリがない!」
赤い髪に赤い着物の少女、悪鬼狩人の鬼子が、様々な動物を模した姿をした悪鬼たちと戦っている。
ゴリラ型悪鬼は拳を、虎型悪鬼は爪を、サイ型悪鬼は角を突きだし、鬼子を攻め立てる。
鬼子のすぐそばにはオレンジの髪に赤とオレンジの派手な服を着た少年が悪鬼たちを殴り飛ばしながら鬼子に問いかける。
「おい鬼子!これどうする!?地道に相手しててもキリないぞ!」
「分かってるわよ火竜!」
悪鬼の大発生。原因は一切不明だ…。
しかし、今この地球に何かが起きている事は確かだ。
「また…れなたちに頼る事になりそうね!!」
その頃、テクニカルシティでもこの謎の現象が発生していた。
葵が銃弾を悪鬼に放ち、粉砕男が大地を砕き…四方に立ちはだかる悪鬼たちに、れなたちは悪戦苦闘。
今まで見た事がない程の量の悪鬼たちだ。葵は戦いながら推測した。
「悪鬼たちを束ねる何かが動いているわ。そうじゃなきゃ、ここまで異常なの自然発生はしない!」
銃撃音が響いているため、大きな声で叫ぶように話す葵。それに対し、れなは悪鬼たちを殴り飛ばすのに精一杯で、何を言ってるのか分からない。
「……………に…………をで!…………かきくけ…こ!!」
「はぁー?聞こえない!」
嵐のような戦闘音でほとんど聞こえない。さっさと終わらせなくてはならない。
葵は飛びはね、ある物を投げ飛ばした。
手榴弾だ。まとめて吹っ飛ばす気だ。
急いで離れるれなたち。
派手な爆発が巻き起こり、悪鬼たちは一斉に吹き飛ばされた。街の地面が少し傷ついたが、やむを得ない破壊だ。
それでも悪鬼たちはまだ湧いてくる。倒した悪鬼たちも何故か平気そうに立ち上がってくる。
「何だこいつら…再生してないか?」
粉砕男の言う通り、悪鬼たちの傷はみるみる回復していく。僅か五秒ほどで悪鬼の傷は塞がってしまっていた。得体の知れない力が働いてるのは確かだった。
テクニカルシティに響く戦闘音。
それを、街からそう遠くない小さな岩山から見つめている者がいた。
鬼だ。
それもそこらの鬼の比較ではない、三メートルほどの赤い巨体に土のように茶色いマント、筋骨逞しい体からは赤いオーラが漏れている。
近くにいる小鬼の姿をした悪鬼が、彼に話しかける。
「罰悪修羅様、あの男の言う事を信用して良いのですか。今が世界を地獄に変える絶好のチャンスなどと…」
罰悪修羅と呼ばれた悪鬼は、何も言わずに静かに頷く。そして、右手に赤いオーラを集中し、その力で周囲の岩石が宙に浮かぶ。
「リューガ…やつは本物だ。やつの言う事の九割が嘘。だがワシは、一割の真実だけを追及しておるのだ」
首を傾げる小鬼。罰悪修羅は静かに笑っていた…。
れなたちが戦い始めて五十分後。ようやく悪鬼たちを鎮める事ができた。
力を消耗した悪鬼たちはその姿を赤いオーラで包んで幻のように消えていく。
あとには地面に両手をついて疲れ果てるれな。さすがに応えたのだろう。
「ずっとこの調子が続けばまずいかもな」
粉砕男は葵と話し合う。
一刻も早く、原因を突き止める必要がありそうだった。
…と同時に、突如大地が揺れ始める。
れなたちでさえもバランスをとれないほどの揺れだ。
周囲のビルから様子を撮影していた野次馬たちもたちまち逃げ出した。
次の瞬間、れなたちの足元から何かが現れた。
同時に殺気を感じ、跳ねてかわす事に成功するも、衝撃で瓦礫と共に宙に浮いてしまう。
「うわっ…」
現れたのは、青い骸骨の姿をした化け物だ。体の骨は非常に鋭利で、両手には凶悪なほど鋭い爪を生やしている。
こいつらとれなはかつて戦った事がある。
こいつらは、あまりに凶暴すぎて「凶暴鬼」とそのままな名前を名付けられた恐るべき悪鬼だ。
それも前回とは違い、三体もいる。
れなたちも三人なので三体で向かっていく…と思いきや、お互いを押し退けながら三体同時に一人を集中的に狙ってくる。はじめに狙われた葵はショットガンを連射しつつ後ずさる。
「くっ…これは厄介ね」
目の前に爪を振り回す凶暴鬼が三体もいるものだから、葵の集中力は乱され、後ずさるうちに足元にあった石ころにつまづくという失態を犯してしまった。
「あ」
おかしな声と共に仰向けに転倒する葵。凶暴鬼たちはその隙を見逃さず、飛び上がって爪を突き立ててくる!
だが葵には仲間がいる。
粉砕男が葵の前に立ち、右腕を盾にして凶暴鬼の爪を防いでみせた!
凶暴鬼の爪は粉砕男の腕さえも容易に突き刺し、血を飛び散らせる。
痛みを堪える粉砕男の脇の下あたりからショットガンを放つ葵。お礼より先に反撃だ。
逆に凶暴鬼三体を後ずさらせる事に成功した。
だが凶暴鬼はすぐに体制を立て直す。その様子はまだまだ戦い足りないという感じだ。
以前現れた個体より、明らかに強い。威圧に負けずに凶暴鬼トリオを睨みつける三人だが、正直かなり威圧されていた。
先程の悪鬼軍団との連戦もあり、体力はあまり残されていない。更に相手は凶暴鬼。それも三体だ。
体力を保持して最低限の手段を用いて戦っても勝ち目は薄いかもしれない。
凶暴鬼たちは、殺意を抑えられないかのように衝動的に動きだし、爪を振りかざしてくる!
葵の舌打ちと共に、後ろへ下がる三人!
そこへ、一同の目の前にオレンジの炎が吹き荒れた。
「な、なんだ!?」
咄嗟に顔を覆う粉砕男。
同時に凶暴鬼三体は激しく炎上し、手足をバタつかせて苦しみ出す。
炎の主が、左手に炎を纏いながら着地した。
「火竜!!」
悪鬼狩人の登場だ。
村での悪鬼との戦いで遅れてしまったが、何とかれなたちの危機を嗅ぎ付け、助けに来てくれた。
燃え上がりながらも向かってくる凶暴鬼たちだが、火竜は怯まず両手の拳を叩きつける。
怯んだところでバク転して足を叩きつけるように蹴りつけ、華麗な追撃を決めた。
あの凶暴鬼をもたった一発の攻撃で怯ませるとはさすが悪鬼狩人。悪鬼戦に関しては、れなたちよりも一回り上だ。
「今だ鬼子!」
火竜が上空に向かって叫ぶと、大空に赤い閃光が輝いた。
同時に空から何かが飛んでくる!
三体の凶暴鬼は一瞬にして体全体をバラバラにされ、唸りながら体を消していく。
「地獄に帰りなさい」
現れたのは、鎌を構えた鬼子だった。
二人の背を睨みながら、凶暴鬼たちは消えていった。
「火竜!鬼子!!」
思わぬ助けに喜びながら向かっていく三人。
二人の目はゆっくり優しい目へと変わっていった。
「鬼子、何でこんな事に?貴女たちでも分からないの?」
葵の問いに、火竜が先に黙って頷いた。
倒したはいいが、二人ですら原因がはっきりしていないのだ。
「…一つ分かってるのは、何かとてつもなく大きな力が働いてる事を考えるべきね」
「…やはり来たか」
罰悪修羅は、二人の戦士の活躍を見届けると、そのまま背を向けて去っていった…。




