マーダーズ 完
「皆さん!落ち着いて避難指示に従ってください!」
とある大都市にて、街に設置されたモニターからけたましく避難誘導が響く。
そんななか、恐怖に表情が歪んだ人々が逃げ惑い…。
そして、真っ暗な空から放たれた桃色の光線が、彼らを射抜く。
同時に悲鳴をあげ、肉体を跡形もなく消し去られる人間たち。
大気圏にて、両手の指から桃色の光線を発射するリューガがいた。
「んーつまらん。最後のゲームは闇姫で終わりにするか」
そう言うと、もうすぐ朝になろうとする空へ上っていき、大気圏外に出る。
青い地球を見下ろし、両手の指を構え…。
今までにない数の桃色光線が、地球の島々に飛んでいく。
その光線の一つ一つは、地球に住む人間たち一人一人を撃ち抜いた。
その誰もがその激痛に悲鳴をあげ、ゆっくり体を削られ、血も骨も残さず消え失せる。
地球の何億という命が、ほんの数秒で消えた。
細胞の一片も残さず、ただ冷たい風が、膨大な臭気を運ぶだけ。
そんななか、各島々に何人かの子供だけは生き残っていた。
勿論、リューガがわざと残したのだ。
「守ってくれる大人たちはみーんな死んだ。お前らはそのまま絶望しながら死に絶えるんだな」
小さな子供にさえ、慈悲はなかった。
地球を去り、宇宙をぼーっと飛んでいくリューガ。
地球人類を皆殺しにした事を少し悔やんでいた。
勿論罪悪感など微塵もない。もっと人類の一人一人の絶望や苦痛に満ちた顔をよく見てみたかったという気持ちもあったのだ。
「…こうなりゃ別の世界も攻めこんでみるか」
リューガが指を鳴らすと、真っ黒な空間に紫色の時空の穴が空く。
リューガは時空の穴に飛び込み、そのまま「その世界」から姿を消した。
スクリーンは、ゆっくり暗くなっていく。
「…」
沈黙が、館内に走る。
れなの手元には、まだ山ほどポップコーンが残っていた。
闇姫は、無表情ながらもどこか苛立っているような表情…。
「はい、お疲れ様でした」
あの天使の少女が、椅子に座った二人を起こすかのように声をかけた。
二人の体が椅子に擦れ、無機質な音が発せられる。
「お前、これがどういう事か説明しろ」
少女を威圧するように口を尖らせる。そんな闇姫にも動じず、少女はゆっくり説明した。
「これは、一言で言えば別の世界を映し出しては記録する、監視カメラのような物なのです」
スクリーンに軽く触れる少女。なるほど、今まで自分達は映画などではなく監視カメラの映像を見せられてきたのだ。
「これは言わば世界が行き着く可能性の一つ。貴殿方の世界も、こうなる可能性がある、それだけの話です」
深刻な表情のれなと闇姫に、少女は透き通った美しい声で淡々と語っていく。
「私は、その世界の可能性を知らせる役割を担っているのです」
立ち上がる二人。
「そして、もう一つお伝えしましょう」
少女のすぐ後ろのスクリーンが、再び光を取り戻す。
「あっ!」
それを見た瞬間、れなの目にいつもの活気が戻ってきた。
そこに映されていたのは、ある少年と戦うれみの姿があった。
れみはどうやら苦戦しているらしく、少年に殴られて疲労困憊の顔を浮かべていた。
このままでは敗北するのは時間の問題だ。
マーダーズを見たれなは、いつも以上の危機感を抱えていた。
れなの額から垂れ落ちる汗。
「さあ、どうしますか?」
「お前、私たちを元の世界に送り届けろ」
闇姫の言葉を聞いた少女は、指を鳴らす。
スクリーンに白い穴が空いて、二人を迎える優しい光を放っていた。
それを見る闇姫の目は、実に不快そうだった。いつもの調子を取り戻したようだ。
「れな、ここから出たら念の為もう一度言うが、もう共闘はなしだ」
大きく頷くれな。
果たして、この世界を救う事はできるのか。
いや、救うのだ。
あんな未来にする訳にはいかない。何としても止めないといけない。
忘れ去られたポップコーンが、椅子にポツンと残されていた。
少女はポップコーンを拾い上げ、再び暗くなったスクリーンを目にした。
「…さて、どうなる事やら」
新たな映画の始まりのようだった。
まずはⅡ第二章が完結です




