表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
71/132

悲劇は、悪魔さえも襲う

闇姫のもとに辿り着いた二人の妹たち、影姫と黒姫は、島に降り立った。

「御姉様、私達を呼ばないなんて随分薄情ですわね」

影姫が、飛行途中で汚れた黒い着物を払いながら闇姫に近づく。

闇姫そっくりな黒姫の方は、リューガと目をあわせていた。


闇姫の無表情を見たばかりのリューガは、その闇姫にそっくりな顔の黒姫が敵意を剥き出しにして怒りの表情を浮かべているのが新鮮なようだった。

またゲームの駒がやって来た喜びもあり、やはり笑う。

一人で決着をつけたかった闇姫は不快そうに口を尖らせる。

「邪魔だ、消えろ」

「そんな事言って、苦戦してるようじゃないですか。手を貸しますわよ」

影姫が腰につけていた鞘から、彼女の愛刀「絶光刀ぜっこうとう」を抜き出した。


三人はリューガの方に向き直り、それぞれの構えをとる。

「これはこれは。闇姫三姉妹を相手できるとは、俺も幸せもんだ。神様に感謝しないといけないな?」

リューガは構えもせず、棒立ちのまま、赤の右目に黄緑の左目で三人を睨む。



影姫の姿が消える。



次の瞬間、衝撃波が島中の瓦礫を宙に浮かせた。


「…っ」

影姫は、高速移動でリューガの目の前に現れ、絶光刀を振り下ろしていた。

だがリューガはその高速移動さえもものともせず、あらゆる光を切り刻むという絶光刀を白羽取りで受け止めていたのだ。

震える絶光刀。


同時にリューガ目掛けて飛んでくる黒い光弾。

魔術得意の黒姫が、灰色の翼を広げて飛行しつつ光弾を放って援護していた。

リューガは白羽取りの構えを崩さずに両足だけで光弾を蹴り飛ばし、逆に弾き返してくる。

光弾を回避しつつ、黒姫は姉達に合図を出した。

「今だよ!」

影姫はリューガの手から絶光刀を引き抜き、距離を離す。

同時に影姫の背後から闇姫が飛び上がり、一瞬にして両手に魔力を集めた。

「勘違いするな。この世で悪を制する事を許されてるのは、我々悪魔だけだ」

身勝手な悪の意思を放ちつつ、両手の平をリューガに向ける。

赤い破壊光線がリューガを一瞬で飲み込み、全身を切り刻むように流れ出す!

「…っ!?」

予想外の反撃に、リューガは一瞬驚いた顔を見せた。


光線はそのまま曲がりくねり、海を割りながら空へ飛んでいき、夜空の雲を押し退ける。


そして、光線を形成していた無数の魔力は、暗い夜空が赤く染まる程の爆発と共に分散し、夜空に消えていった。




膝をつく闇姫。

正直、ここまで渾身の力を出す事には慣れていなかった。

二人の妹たちが駆け寄ってくる。

「御姉様、私どもが駆けつけなければあの男には勝てなかった。そうでしょう」

「少しは苦戦していたが、お前らの助けなど不要だった」

断固として認めない闇姫だが、確かに危ないところだった。

感謝をするほど素直じゃない。そんな闇姫のひねくれた性格は影姫と黒姫はよく分かっていた。

皮肉のように笑う二人から離れようと歩みだす闇姫。



「ヴッ…!!」

影姫が、聞いた事のない声をあげた。

いや、影姫だけではない。すぐ隣にいた黒姫もだ。

振り替えると、そこには膝をついて目を細める二人の姿。


すぐ後ろには、両手の指から桃色の糸のような物を出して二人の体を突き刺しているリューガの姿があった。

勢いよく引き抜くと同時に、二人の背中から黒いオーラと共に赤い血が噴き出した。

これは、さすがの闇姫も目を見開いた。

あれほどの攻撃を受けたにも関わらず、リューガの体は傷一つついていなかった。

外していた?いや、そんなはずはない。

確かに手応えはあったし、光線と一緒に吹き飛ぶリューガもしっかり目撃していた。

「いやぁここまでやるとはね」

それだけ言うと、リューガは両手から念力を放って二人に術をかける。


すると二人の体は黒いオーラに包まれ、魔力を放ち出す。

リューガは嘲笑った。

「催眠術をかけると同時に、魔力を極限まで引き出した。さすがの闇姫でもこうなった二人には到底敵わないだろう」

立ち上がる影姫と黒姫。

その赤い目からは、光が消えていた。

闇姫の舌打ちも、聞こえていなかった。

「だが攻撃は通るぞ。どうだ?この二人を殺さないとお前が死ぬぞ?大事な大事な妹達を、ぶっ殺さないとな」

大笑いしそうになるのを必死にこらえつつ、闇姫に運命の分かれ道を問う。

闇姫は、両手を構えて二人を見つめた。


「…人形に成り果てたか」

影姫と黒姫は、それぞれの構えをとって実の姉を殺そうと向かってくる。

そして、その実の姉も、二人の妹に手を向ける。


殺意が理性を飲み込み、こちらに飛んでくる影姫、黒姫!

闇姫の目に、迷いはなかった。

閃光が走る。




お互いに背を向け合う、影姫、黒姫、そして闇姫。


世界の全てが、沈黙に包まれた。







吐血したのは、影姫、黒姫の方だった。

そして、闇姫の頬にも二つの切り傷ができる。



倒れる闇姫の妹たち。

闇姫は、ただただ無表情を固めていた。




「ほう…」

リューガは、顔を突き出した。

倒れた妹たちを背に、闇姫は二人の魔力が弱っていくのを感じ取った。

風さえ吹かなかった。



夜空はもうすぐ光が差し込もうとしている。

漆黒の夜空は、僅かながらも青みがかかっている。

そんな空の下、リューガは非情な言葉を闇姫に突き立てる。

「自分が生き抜く為に妹を殺すとは、お前も俺と大差ないな」




「残念だったな、私にはプライドがある。お前のような何の気品もないゴミクズとは違う」

挑発にはのらない。

闇姫は、首からさげた紫の宝石のペンダントを握りしめながら振り替える。


その赤い目は、ほんの僅かに輝いていたのをリューガは見逃さなかった。


「馬鹿なやつ。笑えるぜ?」

リューガの挑発は続く。


「仮に私が馬鹿なら、お前の方は何の価値もない馬鹿だという事が確定するが、それでも良いのか?」


闇姫も、悪魔の笑みを浮かべてみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ