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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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集まり続ける悲劇

粉砕男を貫いた、れなのオメガキャノン。

粉砕男は全身から立ち込める煙を見ながら、黒目のない目を細めた。

そのままうつ伏せに倒れ、動かなくなる。

「粉砕男…!」


葵は、一人残されたような気持ちになる。

このまま一人でれなを…仲間を討たなくてはならないのか。

粉砕男は本当に死んでしまったのか…?


葵は、粉砕男の手首にゆっくり指をつけた。


…脈はなかった。

「…」

葵は、震える手でれなに拳を向ける。

彼女の手が震えた事は、これまで数えるほどしかなかった。



「待て」

葵の耳に、声が聞こえてきた。

根拠のない希望を一瞬抱き、葵は振り替える。


「…あっ」

そこには、闇姫が立っていた。

これまでの一連の流れを空から見下ろしていたのだ。

闇姫はハイヒールの音を鳴らしながられなに近寄りつつ話し出す。

「こいつはもう助からん。もうほとんど心が侵されている」

「…やっぱりね」

物分かりの良い葵に、闇姫はどこか安心したような顔を見せた。


…だが。


「…闇姫、れなは私たちの仲間。私たちが殺さないといけないのよ」

そう言いつつも、葵の声は震えていた。

れなはもう助からない。このまま野放しにしていては何もかも壊される。

殺す事はもう決意していた。

なのに、声の震えが止まらなかった。

闇姫は左手を葵に向けて声を重くする。

「れなとの付き合いが長いのは私だ。私がこいつを殺す」


同時に闇姫はれなに向かって飛び出し、拳を握った。

れなはいつも見せるような両手で手刀を作った構えをとり、いつも見せない恐ろしい形相で闇姫に向かって飛び出す。

闇姫とれなの手足がぶつかり合い、激しい打撃戦を展開する。手足が高速で動く度に舞い起こる強風。周囲の草が、どこか哀しげに揺れている。


「…」

葵は、黙ってそれを見つめていた。


れなは一瞬の隙をついて闇姫に右手の平を向ける。エネルギーを集め、オメガキャノンを至近距離から撃ち込もうとしたのだ。


闇姫は、昔かられなと戦ってきたのだ。

今更もうこんな攻撃には怯まない。

オメガキャノンが放たれる前に、闇姫はれなの背後に回り、その手を掴み取った。

「私もよくこの手で殴られたな…だがそれも今日でおしまいだ」

闇姫は腕に力を込め、そのままれなの腕を引っ張る。


無数のコードが飛び出す音と共に、れなの腕が引きちぎられた。

「ぎゃあああああ!!!」

苦しむれなを、闇姫は複雑な表情で見つめていた。

これでもれなは正気を一片も取り戻さない。

本当にダメなようだった。

闇姫は、攻撃力が低下したれなに更なる追い討ちの蹴りを連続で放つ。

れなは左手で防御しようとするが、全くといって良いほどに防げない。

「れな」

闇姫は、蹴りに集中していたれなの胸ぐらを掴み、動きを封じた。

顔を近づけ、お互いよく似たツインテールを揺らしながら、目をあわせる。


「お前との因縁も、おしまいだ」

闇姫は右手の平を向け、れなの顔にかざす。

そのれなの顔に浮かんだのは、怒りと憎しみ、悲しみ…。

そしてそれらの感情を必死で表そうと、ほんの僅かにいつも見せるような表情…苦難の笑顔を浮かべていた。

闇姫の手から放たれる赤い破壊光線!






それは一瞬にしてれなを飲み込み、全身を溶解するように跡形もなく破壊し尽くした。












右手の平を前に突きだす闇姫。その先には、焼き付くされて深い地割れが発生した草原が。






そこにれなは跡形もなく消え去っていた。






葵の目から自然に流れる涙。

闇姫は、背を向けてしばらく手を突きだしているばかりで顔を見せる事はなかった。

冷たい夜の風が、葵のサイドテール、闇姫のツインテールを揺らす。


「…葵、お前はどうする」

「…私は、あのリューガとかいうやつを追い詰める」

闇姫はポケットに手を突っ込み、大きく頷く。

そのままどこかを目指して歩いていく闇姫。方角的には隣町へ向かうようだった。



そんな彼女を、茂みから覗く者がいた。

闇姫にそっくりだが、赤い右目には眼帯をつけてない…闇姫の妹の黒姫だ。

影姫の姿はない。

黙って通りすぎようとする闇姫を、黒姫は悲しげな声で引き止めた。

「本当に良いの御姉様…?こんな形で…」



「もう過ぎた事は仕方ないだろ。それより、あのリューガとかいう野郎が先だ」



いつも先を見通すようにまっすぐな視線の闇姫の右目が、一瞬だけ下を見た。





葵も、いつまでもここから動かない訳にはいかないと、ゆっくり立ち上がった。

周囲を見渡すと、れなと闇姫の激闘で荒れ果てた大地が広がっている。

その隅では、体の一部が焼け焦げた粉砕男が無残に倒れている。

振り替えれば、そこはれなとよく行っていた、見慣れた森…。

「…っ」

葵は目を擦り、隣町に向かって歩きだそうとした。







「がっ…」

葵は、一瞬悲鳴をあげた。

何か全身を貫くような衝撃が走り、物凄い勢いで吹き飛ばされる。


その時生じた強力な力は、闇姫も感じ取っていた。

黒姫もその力を感じて慌てふためき、茂みに隠れて身を隠す。

「…また新手か」

闇姫は、額から汗を垂らしていた。




「…」

葵の目の前に立っていた襲撃者…。








それは、死んだはずのドクロだった。






いや、彼女は生きていたのだ。

奇跡的に一命を取りとめていたらしく、ラオンに刺された傷は死神の力で再生していた。

しかしその赤い目は一層殺意が増しており、目の前に立っているだけでも自然に感じ取れるような凄まじい気迫を放っている。

葵はまずは呼び掛けようとするが…。


「ぐはっ!!」

ドクロは、目にも止まらぬ速さで葵に蹴りかかってきた!

速さのなかに、今までのドクロからは感じた事のないとてつもなく鋭い力もあり、刀で刺されるような激痛が葵を襲う。

膝をついた葵に、今度は拳を振り上げるドクロ。顎を殴られ、回転しながら吹き飛ばされる葵。


ドクロは両手を構えて全身から紫色の魔力を噴出する。

この魔力は…アンドロイドのれなとはまた違った暴走だ。

ドクロまで暴走マシーンと化したのだ。


生存していたのに、ちっとも嬉しくない…。むしろ、また大きな虚しさが葵を襲う。


「あなたも楽にしてあげないとね…」

葵は、両手を構えた。


向かってくるドクロの両手の拳に対し、葵も拳を突きだし、お互いに突きを放ちあう事で突きの衝撃を和らげる戦法に出た。

この勢いの突きには一度防御してしまうと反撃の隙が見つからないと見たのだ。

それなら攻撃と防御を両立させたこの戦法が一番だ。

目の前のドクロは両目を一層真っ赤に光らせて葵への、かつての仲間への殺意を剥き出しにする。

高いダメージを負った事で、悪の心で暴走していた力が更に溢れだしたのだ。

こうなってしまうともうドクロには何が正しくて何が悪くて、何がきっかけで自分はこんな事をしているのかも考えられない。

とにかく目の前の敵を殺す事しか考えられないのだ。





亡くした兄の事も、もう思い出せない。





「うあああああ!!!」

魔力を集めて繰り出されたドクロの拳。葵は瞬時に攻撃を察知し、両手でその突きを受け止めた。

だが両手を使ってもその攻撃は受け止められない。両手の平を抉られるような痛みが走り、葵は顔を大きく歪ませる。

手の平を振動し、腕を伝い、全身に衝撃と痛みが走る。

押されるように膝をつく葵。

ドクロの何の意味もなくなった憎しみの矛先は、あまりにも鋭かった。

葵は揺れる視界のなか、顔を上げる。


「ドクロちゃん…」

両手を構え、歯を食い縛った。







「覚悟しなさい…」


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