れな 憎悪のオメガキャノン
崩壊したテクニカルシティの周辺は、沈黙に包まれた。
隣町へ向かう葵と粉砕男は、れなたちの力の流れがピタリと止んだのを感じとり、何事かと困惑していた。
森は再び静寂を取り戻しているようだった。
暗い夜道で、葵と粉砕男はある事を決断する。
「…万が一れなたちが戻っていたら…?」
頷きあう二人。
僅かな可能性を信じ、二人は森へ体を向ける。
…その決意を固めたまさにその時だ。
森から誰かがゆっくり歩いてくる。
二人は両手を構え、その人影に敵意を向けた。
今のこの状況…とりあえず怪しいものは敵として見るのが無難だった。
暗い影がかかっていた人影は鮮明になっていき、その正体が明らかになる。
…夜の闇に身を投じたようなその人物は、死んだように無表情のれなだった。
その緑の目はかつて活気にみち溢れていたあの目からは考えられない、一片の光もない目だった。
その腕は人形のように垂れ下がり…その手の先には黒い液体が。
「れな!!」
葵が真っ先に駆け出し、れなに向かっていく。
そのれなからは、殺意を一切感じなかった。
今相手を敵だと認識すると決めたばかりだが、れなの顔を見た瞬間、葵は心が解放されてしまう。
「葵!待て!危険だ!」
粉砕男が少し遅れて追いかける。いつも冷静な葵がこんな行動に出るとは、予想外だったのだ。
「…」
葵は、れなの前に出て彼女の顔を見る。
やはり、生気がない…。
絶望感さえ表に出せないような、まさしく絶望の表情。吐息は冷たく、顔は常に俯いて葵に気づいていないかのよう。
ゆっくり、ゆっくりと足を歩めていくれな…。
どこへ行くというのだろう。
「待ってれな…」
葵はれなの手を掴もうとする。
しかし、れなは静かに彼女の手を振り払う。
振り払われた手を見る葵…。れなを放っておけないともう一度手を掴む。
れなは、同じように振り払おうとするが…。
「待てれな」
葵に加勢し、粉砕男も大きな手でれなの腕を掴んだのだ。
彼女は何が起きたのか知っている。聞き出さなくてはならない。
「…邪魔するな!!」
れなが口を開き、手先に青いエネルギーを集めて振り回した!
葵たちにエネルギーが直撃し、吹き飛ばして距離を離される。
二人は岩石に頭を強打する。
「ぐっ…!れ、れな…!」
れなは、二人を憎らしそうに見つめていた。
先程まで何もなかった目に、憎しみが戻る。
二人は、何かまずいことをしたような気持ちになる。
ゆっくり立ち上がろうとした葵にれなが飛んできて、目の前に立ちはだかった。
そして、相変わらず憎しみに燃える恐ろしい目で睨み付け、重い声で心に直接語りかけるかのように告白した。
「…私はラオンを殺したんだ!」
空間の流れが、一瞬止まる。
沈黙が十秒ほどよぎり、唖然とする葵にれなは更に続けた。
「…どうしよう。殺すのが楽しくなってきた…」
れなは、僅かに目を細めていた。
葵も目を細め、れなを睨みながら考えた。
(…アンドロイドファイターとしての本能ね)
悪の心を植え付けられた事で、れなの元兵器としての破壊本能が目覚めてきているのだ。
このままでは彼女は…最悪の兵器へと変貌してしまう。
このまま助け出す手は…。
「あ、葵ぃ…死ね!」
れなは、突然突き動かされるように葵の顔面に拳を叩きつけた!
葵の背後にあった岩石は衝撃波で破壊される。
瓦礫の嵐と共に飛んでいく葵に、れなが低空飛行して追い付いてくる。
葵は吹き飛びながら、れなの目を見た。
無機質な…まさに兵器の目だ。
「れな…目を覚ますのよ!」
「うるさい…」
れなは後ろに飛び上がり、空中で右手に青い光を集める!
「うるさぁぁぁぁぁい!」
れなの右手から放たれる青い破壊光線、オメガキャノン!
怒りと憎しみが込められた事により、更に破壊力が増しているようだった。
顔を覆う葵!!
「待てー!!!!!」
粉砕男が、両手を広げて葵を庇う!
強力なエネルギーが、粉砕男の体全体を焼き尽くした!




