数時間前
光星王の死から、数時間前の光王国…。
人間の住む世界とは遥かに離れた場所にある国…常に光が満ち溢れている光王国では。
白い氷のように輝く城にて、れなたちの仲間、光姫が何かを感じ取っていた。
「この邪悪なオーラは…」
光姫の金の長髪は美しく揺れ、金のドレスもまた、風が吹いてるかのように揺れている。
その黄色の目は、邪悪なオーラを感じ取って、それを反響するように輝いている。
「失礼いたします。姫様、どうなされましたか」
金の鎧に身を纏った一人の兵士が部屋に入る。
いつも穏やかな光姫だが、この時の表情は今まで見た事もない、恐ろしい物に震え上がるような表情だった。
「…人間界への偵察をお願いします」
「りょ、了解いたしました」
兵士は部屋から出ていった。
ガラスのテーブルに両手を置き、光姫は相変わらず震えていた。
それほど、このオーラは邪悪だった。
「シャナイ隊長!」
兵士は赤い絨毯の敷かれた廊下を走っていき、途中すれ違った大柄な兵士に敬礼しつつ声をかけた。
シャナイ隊長…光王国の特等偵察隊、分かりやすく言えば偵察を担当する優秀な兵士たちを取りまとめる隊長。
シャナイはもう全てを理解していた。
彼も光姫と同じように感じていたのだ。
「もう既に偵察兵は送り込んでいる。言っておくが、今回はただ事ではないぞ」
シャナイは、兜の奥で表情を曇らせた。
その時!
「ぐあああ!助けてくれー!!!」
兵士の叫び声が響く。
シャナイと兵士は直ぐ様悲鳴のした方向へと無言で走っていく。
声がしたのは…城の大ホール。
巨大な星を模したステンドグラスの下で、無数の兵士たちが倒れていた。
金の兜や鎧は破壊され、その体はアザだらけだ。
そして、部屋の中心には赤い巨漢悪魔が立っていた。
鋭い二本の角を持ち、黄色い目と紫色の結晶体が刻まれた独特の顔をしている。
「光姫を出せぇー!!!」
その悪魔の後ろには…闇姫が冷たい表情で兵士たちを見つめていた。
ハイヒールの音を鳴らしながら一人の兵士へと向かっていき、胸ぐらを掴んで腹を殴り付けつつ高圧的な態度で問う。
「言え。光姫に聞きたい事がある。居場所を教えろ」
兵士は歯を折られ、口から血を流しつつも断固として口を開かない。
闇姫は、もう一発殴ろうと拳を振り上げた。
「やめなさい!」
美しい声がした。
ホールの入り口に、光姫が立っていた。
「久々ね。闇姫」
「どうでもいい。お前に聞きたい事がある」
闇姫と光姫は、城の小さな一室でお茶もなしに向かい合ってテーブルを挟んでいた。
周りの兵士たちは、何とも気まずそうだ。
「お前も感じているだろう。この邪悪なオーラ」
「…やはりですか」
闇姫は両腕の肘をつき、両手を顔の前で揃える。
この深刻な事態。ライバル国である光王国の協力も必要だと考えたのだった。
「光姫、ここの軍事力は相当なものだ。お前の手で、れなたちを止めろ」
「れなさん…?」
光姫は、より鮮明に顔を曇らせた。
れな…この邪悪なオーラはまさか、彼女の物だと言うのか?
闇姫は続ける。
「妹たちから聞いた。この事態はリューガとかいう野郎が原因だ。れなたちはあの野郎に洗脳され、今では殺人マシーンと化して暴れている」
黙りこんでしまう光姫…。
闇姫は立ち上がり、背を向けた。
「お前は浄化ができるはずだ。やつらに取り憑いた邪気を取り払ってこい」
そのまま闇姫は部屋から出ていき、光王国の兵士たちの視線を浴びながら去っていく。
部屋の外で待機していたボディーガードの悪魔、アースデストロイアーに用が済んだ事を伝えようとした。
「待ちなさい!闇姫、あなたは何もしないの!」
「私に浄化技は似合わない。れなたちを救えるのはお前だけだ。あぁ、あと…」
闇姫は、右目の眼帯を軽く整えて振り返った。
「れなを倒すのは私だ。浄化したら私を呼べ。リューガよりも先に、私がやつをぶち殺す」




