光王国の悲劇
「ほほー、尻尾を巻いて逃げやがった。あの緑の女にゴリラ」
撤退した粉砕男と葵を見届けたリューガは、彼らを馬鹿にした。
そんな言葉を聞いてもれなとラオンは何の反応もない。
ラオンは地に伏したドクロの死体を蹴りつける。
リューガはドクロに哀れむような視線を向けた。
「仲間に殺されるなんて、何て可哀想なんだろうか…。信頼していた仲間に…ぐ、ぐふふ…」
必死で笑いをこらえるリューガ。
やはりれなたちは、何の反応もない。
「何者だ?」
リューガは、いち早くその僅かな力に反応した。
茂みの向こうから、何か複数の光の力を感じられる。
現に、茂みの向こうの夜の暗闇は、何かライトのような物に照らされていた。
「…畜生、あの野郎俺達に気づいてるぞ。どうする」
彼らは、ある王国から差し向けられた偵察兵たちだ。
偵察兵でありながら隠れられていないが、これは彼等が馬鹿な訳ではない。
リューガの邪悪なオーラで彼らの体内の力が呼応され、体外に光の力が漏れ出しているのだ。
茂みに隠れながら、兵士たちは鎧の音を鳴らさないように匍匐前進。
茂みと茂みの隙間から僅かに見えるリューガに、緑の水晶玉を向ける者がいた。
この水晶玉は、カメラのような物だ。
これに映されたものは、彼らの王国のモニター映像に表示されている。
…その王国は、光に満ちた王国、光王国だ。
王宮にて映像を見ていた何人かの兵士たちのなかに、一人大柄な老人が混じっていた。
銀の髪に金のマント…この光王国の王である、光星王だ。
モニターに表示される道化師、リューガの邪悪な力は、モニター越しでも伝わってくるほどだ。
「くっ、何という力じゃ…。者共、感じるか?」
「…僅かに…」
僅かながらも、一般兵ですらこの邪悪なオーラの禍々しさを感じ取っていた。
…そして、直後の映像に、兵士たちは凍りつく事になる。
モニターのリューガは、手を振ったのだ。
その顔は、優しい道化師のような、非常に優しげで安心させるような顔。
一瞬兵士たちは、不思議で温かい気持ちに包まれた。
この次の瞬間だ。
リューガは、左手をこちらに突き出してくる。
同時にその手からは緑の刃が飛び出し、画面に直撃!
「陛下!偵察兵からの連絡が途絶えました!」
光星王は、砂嵐に切り替わるモニターを見て長い白髭の裏にある口を歪ませた。
この映像だけでも、あのリューガの悪質さが感じられたのだ。
光星王は迅速な指示を出す。
「直ちに偵察兵の救助に迎え!…そして光姫を守れ!」
娘の安全を確保する為の指令もだし、その場にいた兵士たちは一斉に動き出した。
しかし、一人の兵士が敬礼しながら発する。
「へ、陛下!姫様の姿がありません!」
光星王は、額から汗を流しながらそれを聞いていた。
拳を握り、部屋の白い天井を見つめる。
「くっ…あいつめ。どこへ行ったのだ」
「陛下!陛下ぁーー!!」
また悲鳴が響き渡った。
「な、何だと!?」
信じられない光景があった。
砂嵐が続くモニターの画面を破り、緑色の植物のような触手が飛び出していたのだ。
触手は周囲の兵士たちに絡み付いては分裂し、絡み付いては分裂を繰り返している。
これもリューガの能力の一つだと、光星王は悟る。
兵士たちの悲鳴があがるなか、光星王は両手を構えて金の光弾を放つ。
触手は光弾に当たって爆発に巻き込まれる。
…触手はこんなようではくたばらない。
一旦後ろに下がったくらいで、あっという間に元の調子を取り戻してまた分裂を開始した。
光星王と残った兵士たちの光弾攻撃がしばらく続くが、全くダメージを与えられない。
「ぐ!しまった!!」
光星王のほんの僅かな疲労をつき、触手は彼の右足に絡み付く。
兵士たちは短剣を取り出して触手を切り刻むが、触手は光星王の屈強な首もとに絡み付き始め、そのまま縮小する事でゆっくり締め上げていく。
「な、何という…恐ろじい…」
光星王の意識は、凄まじい速度で消えていく。
兵士たちの攻撃も虚しく、光星王の声はかすれていき…。
そして、ついに動かなくなった。
分裂を続ける触手はまるで緑の悪魔。
兵士たちは攻撃を続けるが、一切ダメージが通らない。
「何をしてる。こっちだ」
彼らの手をとる者がいた。
屈強な手だ。自分達と同じ黄金の鎧をつけている。
「シャナイ隊長!」
兵士たちのまとめ役、シャナイだった。
彼は、これ以上の犠牲を出さない為にも城の兵士たちを避難させていたのだ。
触手の侵食で崩れていく城。
天井からは既に砂埃が落ち始めていた。
兵士たちは光星王を背に、こう叫んだ。
「国王陛下がまたです!彼を助けなければ!」
シャナイは、情にかられる事なく冷たい声で返す。
「手遅れだ」




