堕ちたれな 絶望の乱
「…バカな事を…!」
冷静な影姫が、一気に口調を変えた。黒姫もツインテールを激しく揺らしてあたふたと慌てている。
れなは、リューガの横についてしまった。
無機質で、光を失った目で。
解放された葵と粉砕男は、最悪の展開に口を開く。
「れ、れな…!」
「お、俺達が捕まりさえしなければ…」
粉砕男が、地面を殴って悔しさを叩きつけた。
必死に声をかける二人。
「れな!聞こえる!?」
やはり…れなには聞こえていない。
その目はひたすら光がなく、地面だけを見つめていた。
リューガは進んできたこの「ゲーム」に心を踊らせる。
「れなゲット~。さてそろそろメインイベントといくか?」
リューガの笑みは、凶悪そのものだ。
リューガは右手を掲げ、何かを念じた。
同時に、れな、ドクロ、ラオン…洗脳された皆がお互いを睨みあい、それぞれ構える。
そして、低空飛行で一気に接近しあい、戦いを始めたのだ。
突然殴りあいだした皆に、粉砕男と葵は一瞬困惑した。
冷静な二人はすぐにリューガの目的を察する。
(こいつ、れなたちを殺しあわせる気だ…)
葵が迷いなくリューガに散弾銃を向け、発砲する!
リューガは念じたまま弾丸を全てかわし、見向きもしなかった。
「くっ…弾切れ!」
弾切れに陥った葵は引き金を三回ほど引き、こうなればとリューガに殴りかかる!
弾をかわせば打撃などただの棒切れをかわすのも同然だろう。一つ一つの打撃を的確にかわし、反撃も完璧だ。
葵の腹部に膝蹴りをお見舞いし、葵は大きく息を吐いて前のめりに。圧倒的な強さに驚きつつ、葵は殺しあう仲間たちの姿を見た。
「どうすれば…」
このまま仲間が死に絶えるのを見ているしかないのか…!?
戦いは…暴走していたラオンが優勢だった。
粉砕男が止めに入ろうと走っていくが、ラオンは彼を蹴飛ばして彼にも敵意を向ける。
一方でドクロは粉砕男には攻撃しようとしなかった。
…かつての記憶が、僅かながら残ってるのかもしれない。
「ドクロちゃん…。俺の事を覚えてるのか?」
粉砕男はラオンを殴り飛ばしつつ、ドクロに向かっていく。ドクロは、やはり無機質に粉砕男を見つめていた。
「駄目!!」
粉砕男を引き止める者がいた。
振り替えると、そこには粉砕男の体を押さえて動きを止める黒姫が。黒いツインテールが、粉砕男の岩のような肌に当たって揺れている。
「今の彼女はただの操り人形。あんたの事なんて覚えてる訳ない!」
これがれなだったら振り払ってるかもしれないが、粉砕男はドクロの無機質な目を見て改めて納得した。
その時…。
「ぐあっ!」
激痛に呻く、高い声がした。
粉砕男が驚愕する。
ドクロが、ラオンに剣で背中を刺されていたのだ。
血が飛び散り、粉砕男とラオンの顔に赤い血が張り付く。
ドクロは膝をついてうつ伏せに倒れ、ラオンは剣をわざと抉るように抜く事で深い切り傷を刻む。
粉砕男も膝をついた。
「お、おい、ドクロちゃん…」
ドクロは、動かなくなった。
歯を食い縛り、ラオンを睨む粉砕男。
「ラオン…!」
粉砕男は、実に悲しい気持ちに襲われた。
そんな彼の背後から、容赦なくれなが掴みかかって来る!
粉砕男は彼女を振り払い、葵に向かって震える声でこう叫ぶ。
「今は不利だ!撤退するぞ!」
葵は、戸惑いつつも頷いた。彼女もまた、倒れたドクロを見つめていたのだ。
二人で並んで逃げつつ、葵はれなとラオンを見る。
「必ず助けるからね…。だから、もうこれ以上は…!」
粉砕男は、リューガを強く睨み付ける。
「…必ず倒してやる」
森から抜け、二人は隣町と森を繋ぐ草原で、暗い夜空を見上げていた。
「二人を助ける方法はないのか…」
粉砕男は希望を捨てていない。だが、やはり絶望感は僅かながらもあった。
それは葵も同じだ。
とにかく、今は安全な隣町へ行き、町の人々にこの事を伝えなくてはならない。
二人は隣町へと向かった。




