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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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ラオン 暴走の経緯

悲鳴が聞こえたのは、森の奥地だった。

森一番の巨大な木がどっしり構えた森の広場。

葵は、散弾銃を構えながら広場を調査する。

「…」

あの悲鳴は…?

誰かが襲われたにせよ、慎重に進まなくては意味がない。

いつ何が出ても撃てるよう、銃口を茂みという茂みに向けて一歩一歩進んでいく。



「…!」

殺気を感じた。

振り替える葵!!




そこには、赤の青の服に帽子を被った道化師のような男が立っていた。


「…あなたは誰?」

「俺はリューガ。いやあ大変な事になってますねぇ」

葵の緑色の瞳は、この謎の男だけでなく、その左手にぶら下げられたものにも視線を向けていた。



リューガに襟首を掴まれ、ぶら下がっている者…。

緑の肌に黒いまだら模様がついた奇怪な宇宙人だ。

この宇宙人を、葵は知っている。

「…!グリーン星人!!」

グリーン星人は葵の元主…とうとう地球を侵略しに来たかと散弾銃を向ける。

グリーン星人はぶら下がったまま両手をあげた。

リューガは何かを楽しむかのようにグリーン星人に命令する。

「おい、この姉ちゃんに教えてやれ。あのラオンとかいう女が暴れた理由をな」

グリーン星人は、深緑の汗を流しながら語りだした。

「俺達は、あの女を利用するはずだったんだ…!」





「やめろ!離せ!」

ラオンはグリーン星のアンドロイドファイターたちに捕らわれ、円盤へと連れさらわれた。

円盤内でグリーン星人たちは計画が進んでいく事に歓喜し、ワインを飲み干しながらお互いの計画の経緯を話していた。

「あのリューガという男の言う事を聞いといて正解だったな。かつての仲間であるラオンを捕らえ、洗脳するとは」

グリーン星人たちの今回の計画は、全てリューガによるものだったのだ。

捕らわれたラオンは現在改造中。

星人たちのそばにある手術室の赤いランプが不気味に光っていた。




「私をどうする気だ?」

ラオンをベッドに寝かせ、拘束し、彼女の改造に取りかかるグリーン星人の目はアンドロイドよりも無機質だった。



改造の途中…ラオンは体の各所に全く用途が分からない機械を取り付けられ、全身に刺さる痛みにじわじわと侵食され、意識は途絶えそうになっていた。

グリーン星人たちは先程以上に集中しており、精密作業である事を物語っていた。

ラオンは、自分の意識が少しずつ削り取られているのにも気がついた。

同時に、記憶が無くなっていく。

現に、仲間の顔を思い出せないのだ。

れな、葵、ドクロ、粉砕男…名前こそ覚えているが、今まで何回も見てきた顔がボンヤリと思い出せなくなっていく。

ラオンの焦る気持ちが募り、グリーン星人たちに聞こえるよう独り言を呟いた。

「私は忘れない…。れなは馬鹿で、葵は重火器馬鹿で、粉砕男は筋肉馬鹿でドクロは赤い目の馬鹿で…」

自分で言いながら笑ってしまう。


…仲間たちの事を考えるだけで笑みがこぼれたラオン。

「…はは、私の心を抉りとるなんて…不可能に決まってるだろ!!」

何としても忘れる訳にはいかない!!

ラオンは体を動かそうとするが、拘束具は非常に頑丈で中々砕けない。

グリーン星人たちは暴れるラオンにもしっかりと手をつけ、作業を進める。

「離せ!離しやがれこの野郎!!殺すぞ!ぶっ殺すぞ!!」

暴れるラオンの手足が、少しずつ動き出す。

「やばい!ここはあれを使うぞ!」

グリーン星人たちは、ポケットから黒い結晶を取り出す。

ラオンはそれを見るだけで身震いがした。


これは一体…。

初めて見るのに、この嫌悪感には覚えがあった。

グリーン星人たちはその結晶を、ラオンの胸に張り付ける。

「ぎゃああああああ!!」

ラオンの全身に激痛が走り、黒い稲妻が全身に走る。

同時にラオンの目は虚ろになっていき、記憶にあった仲間たちの名前は、破壊衝動に飲まれていく…。



「…があああああ!!!」

突然咆哮をあげ、ラオンは手足の拘束具を一瞬で破壊する。

拘束具の破片がグリーン星人たちの顔面に直撃し、言葉では言い表せないような声をあげて尻餅をつくグリーン星人たち。

ラオンはベッドから立ち上がり、空中飛行を開始。

取り押さえようとするグリーン星人たちを突き飛ばし、部屋にあったノコギリ状の剣を手に取った。

そのまま天井に突っ込んでいき、天井を突き抜けていく。

「まずい!やつを追いかけろ!」

グリーン星人たちは部屋の隅のタンスにあった、空中飛行用のロケットベルトを装着しようとする。


だが、僅か十秒ほどで円盤に強力な衝撃が叩きつけられる。



ラオンは、あの剣から紫の稲妻型光線を発射し、円盤を見事に撃ち落としていた。

稲妻が直撃して電気を纏いながら森の上を落下していく円盤。


円盤はしばらく飛んでいたが、だんだん地上へ近づいていき、森から少し離れた荒野の辺りで墜落、爆発した。

あとには黒こげになった円盤だけが残っていた…。


無数のグリーン星人たちが倒れるなか、一人のグリーン星人が命からがら円盤から脱出。

瓦礫と仲間の死体が転がるなか、震える手で地面を掴み、這いつくばるグリーン星人。

「くっ…こんな所で死ねるか…。まだこの星を侵略していない…」

「災難だね」

グリーン星人の手を、誰かの赤い靴が踏みつけた。

痛みで黒い目を見開きながらグリーン星人は上を見る。



リューガが、グリーン星人の無様な姿を見て嘲笑っていた。





「…そういう事だ」

呆然としつつも、しっかり散弾銃を構える葵の前で、リューガはグリーン星人を掴む手を離した。

もはや足が動かないのか、グリーン星人は這いながらリューガから離れていく…。



そんな彼の頭に振り下ろされるリューガの足。





嫌な音が鳴り響き、見るとグリーン星人の頭はリューガに踏み潰され、グチャグチャの肉塊のようになっていた。

リューガの赤い靴は緑の血でまみれている。

「汚れちまったぁ」

特に嬉しそうでも、嫌そうでもないリューガ。

葵の散弾銃を握る手に力がこもる。

何てやつだ。こいつにとっては人を殺したり陥れたりする事はごく当たり前の事なのだろう。


「おっと、そんな怖いものを向けるなよ。死んでしまうぞ?お前が」

歯を食い縛りつつ、発砲する葵!

乾いた銃声が鳴り響く。




「…!」

息を呑む葵。

リューガは、放たれた弾丸を全てキャッチしたのだ。

そのままリューガは弾丸を使ってお手玉を始める。


葵は嫌な予感がして逃げ出そうとした。

だが、リューガはそんな彼女の背中に向かって弾丸を容赦なく投げつける。

鈍痛が走り、周囲に飛び散る弾丸。

「ぐっ…!」

思わず振り替える葵。



そこには、リューガの姿はなかった。

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