避難先にて
ラオンの暴走は止まらず、空中に飛び上がると自身の周囲に紫色の光線を撃ちだした!
全方位に放たれたその光線は次々に町の建物を破壊していき、落ちてきた瓦礫さえも破壊していく。
テクニカルシティは一瞬にして地獄絵となる。逃げ遅れた人々は光線にぶつかって全身を焼き焦がされたり落ちてきた瓦礫に押し潰されたりと、まともな最期を辿る人間はいなさそうだった。
テクニカルシティを中心にし、光線は町の外まで隕石のごとく飛んでいく。
テクニカルシティの周辺はあっという間に火の海となる。
森に火がつけられ、倒れてくる木々のなか、モンスターたちが逃げていく。
動物たちも逃げていくが、どういう訳か動物だけは青い光のドームで包まれて周囲の危険を逃れていた。
紫の光が飛んでいく空を見つめながら、リューガは森の切り株に座りながら動物たちに右手を向けていた。
「動物をいたぶるほど俺は悪趣味じゃないぜ」
リューガの魔力を受けて身を守ってもらえる動物たちだが、周囲で火だるまになって死んでいくモンスターたちを見て混乱しているようだった。
「…た、助けてくれ…」
今にも消え入りそうな声で、火にまみれた人型モンスターが手を伸ばして無我夢中でリューガに助けを求めてくるが、リューガは無慈悲にその手を蹴飛ばした。
倒れて悶絶するモンスターには見向きもせず、リューガは楽しそうにこのゲームを楽しんだ。
「あとはどうしてやるか…慎重に行動する必要があるな」
葵と粉砕男は、生き残った住人たちと共に森の近くにある洞窟へ避難していた。
ラオンはエネルギーを放出して少し落ち着いたのか、彼女が襲撃してくる気配は今のところなかった。
ラオンとドクロの暴走から五時間がたち、大地は夕日に照らされていた。
人々は、ゆっくりと洞窟から出てくる。
夕日の果てに見えるテクニカルシティは…既に滅茶苦茶にされていた。
ビルは溶けたように倒壊し、町の各所から白い煙が立ち込めている。
コンクリートの頑丈な地面は剥がされたように破壊され、とても人が再び住めるような状況ではない。
突然の惨劇に追い付けずにただただ町を見つめるしかない人、崩れきった町を見て涙する者。
どちらにせよ、まともな感情の者はいなかった。
葵と粉砕男も含めて…。
「あの二人…どうしちまっんだ」
町にはもう住めないと見た葵たちは、住人たちには森でサバイバル生活を送らせる見通しをたてた。
その日は早速森の各地から木の実や魚をとってきて、焚き火で食べる事にした。
これからどうするかを決めるのは夕食の後だ。
葵はお手持ちのサバイバル技術で住人の夕食を作り、粉砕男は子供が不安にならないように両腕に子供をのせて遊んであげている。
焚き火の灯りが暗い森を鈍く照らし、木々は寂しい風でゆっくり揺れる。
「こりゃうめえや…」
葵が作った夕食、それは焼き魚を焼き木の実で取り囲んだだけの質素なものだが、絶妙な焼き加減に住人たちは大喜びだ。
満足してもらえて安心する葵。
大人たちは魚に豪快にかぶりつき、子供たちは小さな木の実を飴のように食べていた。
平和な光景だが、またいつラオンたちが暴れるか分からない。
その為に、二人は住人たちを守りつつ、ドクロとラオンに会わなくてはならなかった。
あの二人があんな事をするなんて、絶対に訳がある。
その日の深夜の事だ。
焚き火は消え、住人たちはすっかり寝静まり、フクロウの声だけが森に響いていた。
昼までは明るい緑色だった木々は暗闇で深緑色になっており、夜空は月の光で僅かに青みがかかっている。
落ち着いた夜空の下、葵はいつ何が出ても良いように散弾銃を点検していた。
粉砕男も慎重に、しかし暇そうに、柔らかい草の上で眠る住人たちの周りを廻っている。
これからどうなるのか見当がつかないが、とにかく生き残った住人たちを、こんな所で野生モンスターに襲わせる訳にはいかない。
暗い森は、冷たく一同を見守っていた。
「ぎゃあああああ!!!」
鋭い悲鳴が響き渡る。
住人たちは疲れきっていたのか、少し動く程度で起きはしなかった。
「粉砕男、ここで皆を見てて」
「了解だ!!」
葵は、散弾銃を手に悲鳴の方向へ走り抜けていく。




