テクニカルシティの危機
緑のサイドテールとワンピースの女性と、日に焼けた屈強な体に、白目を剥いた大男が並んで歩いている。
葵と粉砕男だ。
騒がしく人々が歩き回る町中で、ショッピングを楽しんでいたのだ。
葵は透き通るような美しい声で、野菜がたっぷり入ったバッグを片手で持ち上げる粉砕男に言った。
「それ、ドクロちゃんにあげるの?」
「ああ。ちょっとだけな」
笑いあいながら歩く二人。
特に何も起きないまま、一日が過ぎると思っていた…。
「…!危ない!」
葵と粉砕男が同時に叫び、お互い危険を察知したと確信し、伏せる。
同時に車が通る道路で爆発が起き、沢山の人々が土砂のように飛び交う!
「…何が起きた!」
粉砕男が先に立ち上がり、正面に目を向ける。
そこには…剣を地面に突き刺したラオンが立っていた。
その体からは紫のオーラが滲み出ており、明らかに様子がおかしい。
「ラ、ラオン…どうしたんだ…」
「全部壊してやるぅぅぅぅー!!!!!」
ラオンは剣を振り回し、周囲に向かってカッター状の光線を何十発も放ちまくる。
次々に崩壊していく高層ビル。無数の瓦礫がまるで生物のように群がって落下、多くの人が下敷きになり、白い地面には所々血痕が残る事態に…。
粉砕男はカッターに手を振り下ろして破壊しながら向かっていき、ラオンに掴みかかる。
バランスを崩して転ぶラオン。粉砕男はその怪力でラオンを押さえつける。
「葵!皆を避難させるんだ!!」
冷静な葵は直ぐ様それに従い、周りの住人たちに避難誘導を出す。
手を振る葵に次々に向かっていく人間たち。
「ラオン!何してる!目を覚ましやがれ!!」
ラオンの顔面を殴り付ける粉砕男だが、まるで暴れるのをやめない。
このままではこの町は破壊されてしまう!
「ラオン、許せ!!」
一旦気絶させようと粉砕男は全力の拳を叩き込み、ラオンを音高く殴り上げた!!
空中に勢いよく吹き飛ばされ、日の光に照りつけられながら大地へ落とされる。
ラオンが落ちたコンクリートの地面は、その勢いで粉砕され、大きなクレーターができあがる。
町の歩道にこんな障害をつけてしまったが、今はそんな事気にしてる場合じゃない。
息を切らしながら、粉砕男はクレーターに倒れるラオンを見た。
「…!?」
粉砕男は後ずさる。
ラオンは全身に降りかかった白い粉を振り払いながら、平然と立ち上がったのだ。
地面に落ちた剣を拾い、威嚇するように振り回す様を見る限り、全くダメージを受けていないようだった。
「どうなってる…!」
粉砕男は再び立ち向かおうとした…。
その時、粉砕男の突きだされる拳が途中で止まる。
視界の隅に、瓦礫に身を隠したドクロが、こちらを見つめていたのだ。
赤い目は失望したかのように光を失い、粉砕男は正直この時点で嫌な予感がしていた。
不気味な雰囲気のドクロに脈拍を早くしつつも、粉砕男は彼女に駆け寄った。
「ドクロ、ここは危険だ。ここは俺に任せて…」
粉砕男の突きだされた手を、ドクロは振り払う。
「ラオンをいじめたのね。全部見てたわ」
今の戦いを見ていたドクロは、完全に冷静さを失っていた。
ラオンはどう見ても様子がおかしかった。
粉砕男はそれをただはね除けただけだが、ドクロからして見れば疑惑の相手が仲間に暴力を振るっているように見えたのだろう。
ドクロは拳を握り、震え上がる。
一気に飛び出してくるドクロとラオン!
粉砕男は素早く両手を突きだし、両方の突進を受け止めた!
ラオンが剣を突きだして攻撃してくるので粉砕男は下がって回避しようとするが、背後からはドクロが!
「いい加減にしろ!何してるんだお前ら!」
粉砕男は背後のドクロの胸元に肘を叩き込んだ!
胸を押さえながら後ずさるドクロ…。
今の一撃でドクロの疑惑は完璧な物となる。
同時に、彼女には他人に聞こえない声が聞こえてきていた。
「粉砕男のあの顔に騙されるな。彼はれなを操り、れなは彼の計画にのってお前の兄を殺した。お前の兄を殺す計画をたてたのは全部こいつだ」
ドクロは拳に魔力をこめ、紫の炎を纏わせる。
このままでは粉砕男の体力が尽きるのが先だ…。
二人の狂戦士が、粉砕男一人を狙って再び突っ込んでくる!
「危ない!!」
粉砕男は、何者かに突き飛ばされて難を逃れた…。
「…助かった葵」
葵が、緑の髪に白い粉を被って粉砕男を救いだしていた。
瓦礫に身を隠し、息を潜めてその場からゆっくりと逃げていく。
…何とか逃走に成功した。
「ラオン、何をするの…」
ラオンはドクロの腹部に、巨大な剣を突き刺していた。
狂気に満ちたその目は、ドクロにはっきりした殺意を向けていた。
「殺すぞ…ドクロ」
引き抜かれる剣は、血にまみれていた。




