加速する憎悪
「ドクロちゃ…え?何で、何で…」
さっきまでの記憶がない。
確かドクロが博士を殺した訳ではない事を知った後…。
「あれ…?」
やはり、記憶がない…。
何かに意識を乗っ取られたような感じがした。
目の前のドクロは怒りに震え、両手の拳を握る。
後ずさるれな。
「れな…絶対許さない…!」
ドクロは地を蹴ってれなに突進してくる!
拳に黒い魔力を集め、そのまま突きだしてくるドクロ!
れなはあまりに突然の襲撃にすぐに反応できず、胸元を思い切り殴られた!
一瞬にして新幹線にも匹敵する速度で岩に叩きつけられ、岩を破壊する。
背中を突き刺すような衝撃が走り、既にれなは全身の痛みにうち震えた。
そんなれなを押し倒し、ドクロは両手の拳でひたすられなを殴り、そのまま襟首を掴んで引き寄せる。
その赤い目には、涙が浮かんでいた。
「何で殺した!!」
「え!?な、なに…」
「その辺にしておけ」
怪しい声と共に、れなの横に霧のようにリューガが現れた。
突然謎の男が現れて後ずさるドクロ。
リューガは呟くようにドクロに言った。
「れなは何もしていない。粉砕男が彼女を操ったんだ」
ドクロは、一瞬何を言っているのか分からなくなる。
そもそもこんな怪しいやつの言葉を、普段なら信じないのだが、この時ばかりは兄を失って冷静さを失っていた。
リューガは追い討ちをかけるように発する。
「お前は粉砕男に惚れてて分からないんだ。あいつは元々悪に作られた怪人。あんな優しい顔をして、裏では何を考えているか分からないだろ?」
黙りこむドクロ。
リューガの両目の色が、青く染まる。
意を決したように立ち上がるドクロ。
あっさりと信じたように見えるが、彼女は実際は誰を狙っていいのか分からなかった。
突然様子が変わって兄を殺したれなか、この男の言う通り粉砕男か、それともこの男が殺したのか…。
「…っと、この辺で俺は失礼するよ。そろそろ日が暮れそうなんでね」
日が暮れる…?
だが今はまだ昼頃。空はまだまだ青く輝いている。
リューガは何かを伝えるような笑顔を浮かべると、また霧のように消えてしまった。
「…」
「…ドクロちゃん、あなたが…博士を殺したの…?」
ドクロに殴られ、まだ痛む頬を抑えながら、れなは聞いた。
どうする事もできなかった。
二人は、背を向けあって離れていく。
…その時同時に二人の頭に激痛が走る。
「ヴッ…!!」
頭を抱える二人。
目の前の視界が七色に染まって歪み、頭のなかに声が響く。
ドクロには、れなの声が聞こえてきた。
「上手く誤魔化せた。兵器としての破壊衝動が目覚めてテリーを消しちゃったけど、あのリューガってやつも出てきたお陰でドクロちゃんの気も逸れてるしね」
そして、れなの頭にはドクロの声。
「何だろう。別に深い理由はないけど…死神の宿命なのかな?れなの博士を殺しちゃった。まあ、私は死神なんだし、どうせ人間死ぬんだ。良いよね!」
同時に足を止め、同じ表情を浮かべる。
「…アアアアアア!!!!」
雄叫びをあげ、振り返りあい、同時に激突した!!
その怒りの拳から放たれた衝撃波は、周囲の草花を一瞬にして吹き飛ばす。
木々も揺れ、二人の怒りが大地を揺れ動かした。
つり上がりきった目がお互いを睨みあう。
れなはドクロの腕を掴んでそのまま引っ張るように引き寄せ、投げ飛ばす!
地割れが起きる勢いで叩きつけられるドクロだが、直ぐ様立ち上がって反撃を仕掛けてくる!
もはや二人を止める者はいない。
同時刻。
紫の長い髪を揺らしながら、れなの仲間の一人であるラオンが森の南部を歩いていた。
修行の為、ナイフを片手に岩場へと向かう。
「今日はれなたちも誘ってやるか」
だが、脅威は突然訪れた。
ラオンは、周囲が暗くなるのを見た。
今はまだ昼なのに、夜のような暗さになってしまう。
「は?」
しばらくして、これは暗闇ではない事が分かる。
…影だ。
「何者だ!」
ラオンはナイフを顔の前に添えて振り返り、上を見上げた!
「…!!」
紫色の瞳の中の黒目を縮小するラオン。
空には…ラオンのかつての主である、グリーン星人の円盤が飛んでいたのだ。
円盤から一斉に飛んでくる鉄人、グリーン星人の兵器であるアンドロイドファイター。
ラオンは訳も分からず、足を深く踏み込んで戦おうとするが、アンドロイドファイターたちはそんな彼女を鋼鉄の拳で殴りまくって集団リンチに。
ラオンはあっという間にやられ、地に伏した。
「あっさりといったな」
円盤からロープで着陸してくる、緑の肌に黒いまだら模様の宇宙人…。
グリーン星人が、倒れたラオンを二人がかりで持ち上げ、そのまま円盤へと運搬していく…。
そして、円盤は地球から静かに去っていった。
地球には、確実に脅威が迫ってきていた。




