帰ってきたぞ!勇者再臨
「どういう事だ!」
黄色のツインテールに緑の目にリボンの少女が、空間の裂け目を背にナスビの前に立っていた。
その隣には、黒いツインテールに赤い左目、眼帯をつけた右目…。
ナスビは歯を食い縛る。
ナスビはれみを調べると同時に二人が異空間に飛ばされた事を知っていたので、尚更訳が分からなかった。
別の空間からどうやって戻ってきたんだ、と…。
一人はため息をつきつつ黒いスカートのポケットに手を突っ込む。
「やれやれ。戻ってきて早々これとはな。言っとくが、もう共闘はなしだ」
もう一人はれみを持ち上げ、岩石の裏にゆっくりと下ろす。
ナスビは彼女を見上げながら両手を構える。
彼女もまた、両手の拳を握り、足を曲げた熟練の構えを見せ、左手を振った。
「よくも妹をいじめたな。かかってこいよ糞ガキめ」
「…黙れぇー!!!!」
ナスビは怒りのまま羽を広げて突っ込んできた!
れなは横に回ってそれをかわし、ナスビの背中に飛び乗った。
「どこへ連れてってくれるのかな?」
「な…!?」
れなはナスビの背中にのったまま頭部を蹴飛ばした!
吹き飛ばされるナスビ。
れみのようにはいかないと回転して体制を整えると、羽を一層広く広げて威嚇するように両手の指をきつく曲げた。
口を開き、ようやく蝙蝠らしい牙を見せると全身を紫に光らせる。
発光するナスビはそのまま体の形を徐々に変えていく。
星全体が強力な魔力で紫に照らされるなか、闇姫は頬杖をついて退屈そうな顔をした。
れなも全く恐れる事なくそれを見上げていた。
「これが…オイラのマジの真の姿だぁー!!!」
変身したナスビの姿は、まさしく巨大蝙蝠、というのに相応しい容姿だった。
真っ黒な翼を広げて上昇すると、口の中から宝石のように輝く紫の球体を露出させ、そこから破壊光線を放った!!
光線はオーロラのような光と共に地面をえぐりながら向かってくる。
れなは近くの岩石を蹴飛ばして破壊し、空中に瓦礫を撒き散らさせる。
舞い上がる無数の瓦礫を飛行しつつ蹴る事でナスビ目掛けて瓦礫を次々にぶつけていく!
ナスビの光線の起動がずれ、闇姫の座る岩目掛けて飛んでいった!
だが闇姫は事前にそれを察知し、わざと当たるギリギリでそれを回避した。
「あぶねーぞれな」
「うるせえ!お前も戦えや糞闇姫!」
やれやれと立ち上がる闇姫に対し、れなは手頃な岩に座りこむ。
ナスビは蝙蝠の顔でニンマリと不気味に笑う。
「お前が闇姫か。お前を倒せばオイラはスーパースターという訳だな」
「それができたらの話だがな」
闇姫の挑発に対し、一瞬で光線を吐いてくるナスビ!
闇姫は空中に飛び上がると灰色の翼を広げ、空中に赤黒い光球、暗黒弾を出現させ、一斉発射する。
ナスビの両方の翼に炸裂する暗黒弾は、赤い爆発を引き起こした!
翼を傷つけられたナスビは地に伏し、四つん這いで向かってきた。
鋭い爪を振り下ろし、闇姫を叩き斬ろうとしたが、闇姫はそれに答えるように爪を射出し、逆にナスビの爪を突いてへし折った!
「所詮はガキだ」
そう言うと闇姫は羽ばたき、空高くのぼると地上のナスビの背中に落下、頭突きを繰り出した!
地面から軋むような音が響き、ナスビは悶絶する。
「れな。とどめだ」
れなは立ち上がると、片手を構え、オメガキャノンの構えをとった。
しかしナスビの抵抗は止まる事を知らず、口を開いて紫の光を集めだす。
「オイラが撃つかお前が撃つか…勝負だ」
このナスビを黙らせるには、最大チャージのオメガキャノンでなければ力が足りないだろう。
二人のエネルギーは高まっていき、周囲に散った瓦礫が浮かび上がる。
「オイラが先のようだな…!」
れなと闇姫は、チッと舌打ちをした。
このままチャージを解いて避けるしかない…!
しかしこれだけ強いエネルギー。光線を撃たせれば、この星が破壊されてしまう…。
どうする!!
「…うおりゃああああ!!」
勇ましい声が響いたかと思うと、ナスビの顔に白いレーザーが直撃!!
ナスビは明後日の方向に向かって光線を吐いてしまった。
驚いて横を見ると、そこには…。
「お姉ちゃん、今だよ…」
膝をついたれみが、ナスビに指を向けていた。
れなはニヤリと笑い、れみにサインを送ると片手を向けたままナスビに向き直す。
青い粒子がれなの回りを舞い飛ぶ。
「オメガキャノン!!!」
れなの叫びが、喉の奥からの叫び声が、再来せし勇者の雄叫びが、宇宙全体に広がるように響き渡った!
豪音と共に手から放たれた青い光線は、ナスビを直撃!!
直後に響いたのは地面が裂ける音に、ナスビの悲鳴。
死ぬかと思うくらいの衝撃だった。
「うわぁ…」
青いオーロラと光のドームが構成されるなか、れみは光の中で佇む姉を見つめていた。
その姿は…。
「まるで勇者みたい…」
勿論、ただのイメージにすぎなかった。
しかし、異世界から遥々戻り、妹を助けに舞い戻った彼女の姿は勇者そのものだった。
「…」
豪音が響いていたはずだが、れみにとっては少しの沈黙が頭のなかで流れていた。
その直後、目の前には片手を向けて相変わらず佇むれな、引き裂かれたような大地、そして、元の姿に戻り、失神するナスビ。
…勝ったのだ。
れなは、こちらに振り返った。
まだ僅かに光っている光線の光によって顔には影がかかっていたが…れみにははっきり分かった。
…その顔は、いつものれなの顔だった。
「…お姉ちゃ…」
目に涙を浮かべるれみ。
荒れ果てた大地の上、二人は歩み寄る。
「…れみ、会いたかった」
れなは、両手を広げ、そのままゆっくりれみを抱き締めた。
抱かれるれみの目は、涙を浮かべていた。
密かに、二度と、もう二度と会えないかと思ってた。
それが、今まさに目の前に立っている。
訳が分からないような感動に流されるがままに流れていく涙は頬を伝い、荒れた大地に垂れ落ちた。
それは、れなも同じだった。
「おかえりお姉ちゃん…」
「うん。れみ、ただいま」




