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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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真相!そして緊急事態!

町の人々が覗くなか、魔王は地に伏していた。

「結局、こいつの世話にはならなかったな」

ラオンは地面に置かれたエメラルドの石を見て軽くため息をついた。

れみは魔王をようやく見下ろす事ができた。そんな魔王は青空を見つめ、何を思うのだろう。

れみはそんな彼に容赦なく疑問をかけた。

「教えて。何で世界を支配しようとするの?」

魔王は黙るばかりでまるで口を聞かない。ナイフを構えて脅そうとするラオンを止める仲間たち。

「…」

れみも沈黙し、激闘が繰り広げられた町に響くのは風の音のみとなった。


ピュウ、と強い風がふく。

…魔王はここでようやく言葉を発した。

「…あの日もこんな負けかたをしたな」

魔王は何かを思い出したような様子を見せた。


「教えて」

魔王の口調が、少し柔らかくなった気がしたれみは一言で畳み掛けた。

…魔王は、語りだした。





その昔…大昔。

人間界から離れた、光に満ちた世界があった。

そこのとある国を守っていた王国団がいた。

エメラルド色の鎧に身を纏った彼らは、緑迅の騎士団(えんじんのきしだん)と呼ばれていた。

多くの世界に現れるモンスターたちの脅威から民を守り続けてきたという緑迅の騎士団。そのなかでも特に優れていたのが勇者エメラルドだった。

海の魔物、空の魔物、そして陸の魔物…巨大な魔物たちに剣を振るい、いとも容易く撃破したのだ。

「エメラルドは最強の勇者だ。それに比べて…」

エメラルドと比較され、非難される者…それはエメラルドの弟、アメジストだった。

緑迅の騎士団のなかでも彼の力は最低で、兄の優秀な才能にも関わらず小さな魔物にさえ負ける程だった。

そんな彼を緑迅の騎士団の一員と認めない者たちからは紫の鎧を着せられ、本当の名はアメジストという名で揉み消された。


勿論、アメジストは修行を重ねていた。

しかし生まれつきの才能の低さはその修行の成果を出させてくれなかった。

それどころか彼を非難する者たちから邪魔される始末。

「これでは認められない!力を得なければならないんだ!!僕は力が欲しいだけだ!!普通に生きていくには、力が全てだ!」

アメジストは悲願した。そんな彼を、エメラルドは悲しそうに見つめていた。

自身の力が強すぎるが故に弟の名は廃れていく。

それでも懸命に生き続ける弟の姿を…。




「…あれだ」

ある日、アメジストは紫の丘と呼ばれる場所にある、魔王の力を封印した祠があると聞いた。

王国を出たアメジストはその祠を目指して進みだす。

新たな希望を胸に。


紫の草花が咲き誇り、暗い空が広がる紫の丘にて、アメジストはその祠を発見した。

「…」

石造りの祠には紫色に輝く綺麗な宝石が埋め込まれていた。


アメジストの指が、宝石を引き抜いた。

「…これさえあれば。名誉が、力が!!」

アメジストの心の叫びを飲み込んだ闇夜に向けて、紫の宝石を掲げる。

同時に青い雷が彼を射抜き、丘は炎に包まれる。

強風が草花を根本から切り離し、炎は天に届かんばかりに立ち上る…。




オレンジの光の中に、一人立っている者がいた。



紫の体に赤い目を持つ…巨人となったアメジストだった。



恥、屈辱、悲しみや苦しみのみで満たされた人生を捨て、勇者でありながら魔王の力を得たアメジストは、完全に新しい人生を歩む事に決めた。

自身を罵倒し続けた者たちへの復讐を狙っていたアメジストだったが、魔王の力を彼が制御しきれる訳がなかった。

いつしか心は悪の心に侵食され、本物の魔王へと変貌してしまう。

「アメジストなどという名も、本当の名前も忘れた。私に名前など無い。私は魔王。それで十分だ」

名無しの魔王は、世界の支配に向けて歩みだした…。



「…そういう事だったのか。魔王、あんたは勇者…」

「そのような名も人生も、今はもう闇に葬った。私はお前らに…」

名無しの魔王は立ち上がろうと両手を地面につき、周囲の人々は訳も分からないまま逃げ出した。

まだやるのか!?全員は両手を構え、少ないエネルギーで彼を迎え撃とうとする。



「そういう事だったのか」

聞き覚えのある声に、魔王の動きが止まる。




「あっ!あれは…」

空から飛んできたのは、思わぬ乱入者だった。

紫の翼を広げて飛んできた者…。


「ナスビ!?」

ナスビは地に倒れた哀れな主人の姿を見下ろしていた。

その目は、バラバラになった胸の宝石に向けられていた。魔王はそんな彼に命令を下そうとしたようだが、何かがおかしい事に気がついたらしく、無言で睨み付けていた。

「魔王様は元々勇者だったんだね。皮肉なもんだ」

一同もいつもと違うナスビの様子を見て、警戒を固めていた。

ナスビの怪しい黄色い目が、魔王の赤い目を見つめる。

「魔王様。さぁ、その力、分けてもらおうか。僕を本来の姿に戻しておくれ」

魔王は倒れたまま右手の平を向けるが、今の戦いで消耗していた魔王はナスビにとってはデカブツに過ぎなかった。

本来の姿というワードに強く反応するれみたち。



「…おらっ!!」

ナスビは今までにない声をあげると、魔王の顔面を翼で掴み、全身を紫の炎で包み始めた!!

凄まじい力が魔王から溢れだし、それをナスビは全身から吸収してるのが、れみたちが見ても分かった。

「うおおおおおおお!!!!!!!」

ナスビの咆哮のような叫び声と同時に、彼の体からまばゆい光が放たれた!!

吹き飛ばされるれみたち。





「いてて…」

頭を強打したれみは酷く痛そうに倒れこむが、ドクロの白い手がれみに伸ばされた。

まるで休む暇などない、というように。

「…ドクロちゃん、どうしたの?」


ドクロの表情は、恐ろしい力に歪んでいた。赤い目の中にある黒目は収束したように縮んでいる。

他の仲間たちも、ある方向を向いてただならぬ表情を浮かべていた。


れみも、その相手の力に驚愕、そして睨み付ける事になる。






瓦礫の上に立っていたのは、蝙蝠を模した被り物を被り、紫の服を着た小さな少年…。

「これがおいら、ナスビ様の真の姿さ」



決戦が巻き起ころうとしていた。






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