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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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れみ、奇跡のタイマン勝負!

ドン、と頭上で爆音が鳴り響く。


れみが斬られた。


…いや、切断音などではない。

仲間たちが視線をうつすと、れみは傷一つついていなかった。

れみ自身も何が起きたのか分からず、恐る恐る顔をあげる。

そこには、空を見上げる名無しの戦士が立っていた。



彼の視線の先には、紫色の蝙蝠が飛んでいた。

「…ナスビ!?」


翼を構えて空を飛ぶナスビだった。その顔は歯を食い縛り、悔しさと喜びが入り交じったような顔だった。

名無しの戦士はナスビに剣を向けつつも、一応味方としてこう問う。

「なぜ攻撃した?」

「バッキャロー、お前なんかよりオイラの方がれみとの付き合いは長いんだ!」

今の一言で、仲間たちは真っ先に悟った。

ナスビは自らの手でれみを倒す気だ。

名無しの戦士との戦いで仲間たちが弱り果て、れみも思うように動けない状況下なら、自分でも勝てると考えたのだ。

羽ばたくのをやめ、翼を広げてゆっくり降りてくるナスビ。

れみに向かっていき、翼を向けてニヤリと白い牙を見せた。

翼の先に集まる紫色のエネルギー。

「オイラもこれくらいはできるんだ…。お前を倒し、オイラは魔王様に認められるんだ!」

紫の光で照らされるれみは、ナスビに挑発。

「魔王に認められたいの?ならこんなやり方せずに、自分の力で全部やり遂げろよ!」

「うるせえー!!」

ナスビが叫ぶと同時に、翼の先の光弾が発射される前に爆発した!!


煙がたち、あとには黒焦げになったナスビだけが地面に落ちていた。

「ああ…今では光弾すら撃てないのか。昔は良かったなあ。あの姿の時は…」

れみはナスビの独り言に聞く耳を持たず、蹴っ飛ばしてさっさとどかした。

ナスビの誤発に集中していた為か、少し体力が回復したれみは名無しの戦士に拳を向けた。

「…ちょっとは回復したよ。さあ続きをやろう。負けないよ」

「…姉の二番煎じが。貴様ごときがこの私に勝てると思ってるのか?」

れみの拳が揺れ動くが、何とか表情を固め、こう問う。

「何故お姉ちゃんを知ってるの?」

「これだけ言っておこう。お前の姉はまだ生きている」


れみは一瞬硬直した。

生きている?何故そんな事が分かるのかと。

れみは一度拳をおろし、ある事を聞こうとした。

だが、名無しの戦士はれみの心を読むかのように、自分が何故れなの事を知っているのか、一つの重大な情報を口にしたのである。


「リューガがすべてを知っている」



リューガ。

彼の名前を聞いたれみはまたもや硬直してしまった。

名無しの戦士は剣をこちらに向け、稲妻を迸らせる。

思考が戦いから逸れてしまうが、その稲妻を見たれみは直ぐ様後ろに跳び跳ねて距離をとる。

「お喋りはここまでにさせてもらう」

こちらに向かってくる、名無しの戦士の剣!!

「危ない!!」

仲間たちが一斉に手を突き出した!




「…?」

名無しの戦士の表情に、初めて感情が見られた。

そこに込められていたのは…小さな困惑だ。

「どういうことだ…」


れみは、自身より遥かに優れた体格の名無しの戦士の剣を、両手で受け止めていたのだ。

その腕は震えつつも、しっかりと剣を掴んで直撃を防いでいた。

名無しの戦士は何も言わず、そのまま剣を持ち上げて叩きつける事でれみを地面にねじ伏せる!

れみの全身を貫く衝撃。

全身が震えるような感覚に陥りつつも、れみはゆっくり立ち上がる。

名無しの戦士は、今までになくれみの力が強まっているのを感じた。

「…何故この短期間でここまで力をつけられる?」

疑問を口にしつつも、再び剣を勢いよく突きだす名無しの戦士!

いつものれみならここで直撃して多大なダメージを負うだろう。だが、この時のれみは何かが違った。

(見える!攻撃の軌道が見える!)

れみの人工の心が、闘志を燃やして全身に行き渡らせていたのだ。


横にステップを踏むように攻撃を回避するれみ!

名無しの戦士は続けて横に剣を振ってくるが、それも華麗なバク転でかわされる。

飛び散る紫の稲妻にさえ触れず、れみは全ての潜在意識を解き放ち、自分でも訳が分からぬままひたすら体を動かし続ける。


普段のれみを知っている仲間たちも当然ながら驚きを隠せない。

ドクロが痺れる体を引きずるように這い、粉砕男に聞く。

「れみは一体どうしたの?」

「…予想だが」

粉砕男の白い目に、動き回るれみが映し出されていた。


「あいつは、無意識にれなを目指してるのかもしれないな…」

本人は気づいていないが、れみは今繰り出してる蹴りや拳は、どこかれなを思わせるものがあった。

同じ家で暮らし、同じ生活を送り、誰よりも彼女の近くにいたれみは、れなの動きを全て知っていた。

危機的状況で、体が自然にれなの真似をするのも、れなを信じているからだった。

れなの動きを知っていた一同は、これかられみが何をするかも分かっていた。


戸惑いつつも剣を突きだす名無しの戦士。

地を蹴って飛び上がるれみ!


れみの足が、名無しの戦士の頭に強烈な飛び蹴りを命中させる!






そこには、追い詰められた事で爆発的に増量した力が全て込められていた。

そんなものに頭を蹴られた蹴られた名無しの戦士もたまったものじゃない。

物凄い勢いで吹き飛ばされ、近くにあった巨大な岩石を砕き、地面に叩き落とされ、地割れが発生せんばかりの勢いで地面に叩きつけられる。

紫の体は薄汚れ、兜の目玉宝石はひび割れていた。

今までの感情の読めない彼からは想像もつかない勢いで全身を奮い立たせ、剣を地面に叩きつけて紫のオーラを放ち出す。

「おのれ貴様、許さん!!」

剣を自身の目の前で一振りし、稲妻のトンネルを空中に召喚、そのままれみを串刺しにせんとトンネルの中から飛行してくる!

れみはがむしゃらながらも恐れる事なく拳を構え、逆に稲妻のトンネルに飛び込む!!

両者がトンネル内ですれ違いあい、同時に腕を振る!!




飛び出す二人の間で消えるトンネル。

背を向けあい、お互いの表情は、硬直した。



「…ぐはっ…」

全ての戦士たちが、名無しの戦士が倒れるのを目撃した。

息を呑む仲間たち。そして、魔王の手下たち。


「…ばんざーい!!!」

れみが起こした奇跡の勝利に、仲間たちはまだ痺れる体で必死に両手をあげて喜んだ。

ダウンから立ち直った魔王軍の手下たちは、名無しの戦士に寄り添う。

「くっ、ここは撤退よ!」

フィーガーの声と共に、彼らは一斉に姿を消す。

完全にれみたちの勝利だ。

「…あぅ」

弱々しい声と共に倒れるれみ。

駆け寄る仲間たちを目に、れみは手でグッドを作り、自身の勝利を改めて知らせた。





「…ついに敗れたか」

膝をつき、深く頭を下げる名無しの戦士たちを前に、魔王は玉座から彼らを見下ろしていた。

彼のすぐ横には、複雑な表情で一同を見守るナスビ、魔王の玉座に寄りかかって一同をニヤニヤと見守る…というより見つめるリューガ。

魔王は玉座から立ち上がり、重圧のある声でこう言い放つ。

「この私を前にしても、やつらはまだ力を振るえるのか…」

敵ながらアッパレと評価しつつ、魔王はれみたちの真の実力に興味を示していた。

頭をあげる部下たち。

目の前には、目に見えないオーラを放ちながら天井を見つめる主の姿。


城の付近に鳴り落ちた一本の雷鳴が、一本の木を焼き焦がした。


「私が出よう」

魔王は、雷鳴の光に照らされていた。


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