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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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れみの悩み カマキルー

勇者エメラルドの弟、勇者アメジスト。

彼は兄と共に戦った勇者なのだが、兄弟が皆が皆似ているとは限らないのか、それとも兄があまりにも偉大すぎた為か、アメジストは何も大した戦果を成し遂げられなかった。


自分も何かしなければと研究所のパソコンでエメラルドに関する情報を調べていたれみ。

エメラルドの弟の情報を知ると同時に、自分とやや似通じる面があると気づいたのだ。

「…兄より劣る弟かあ…」

そういえば自分の姉…れなは自分の事をどう思っていたのだろう。

喧嘩ばかりしていたが、ちゃんと自分を自慢の妹だと思ってくれていたのだろうか。

こんな事を考えれば可愛がられたい、良い妹と思われたいという気持ちが自然と芽生えてしまう為、あまり考えたくはなかった。

だが…やはりここに本人がいない分、気になってはいた。

「…もしも、もしもお姉ちゃんにとって私が邪魔だったら…」

今までの戦いを思い返してみても、自分は大して役に立った事はなかった。

はっきり言って自分に自信がある方でもない。表面上は自信満々に見えるが、実は無理する場面も多い。

それに気づいているのは、他でもなくれみ本人だった。

もしれなが自分を邪魔に思っていたら…今はここにいないが、もし目の前にいたら聞いていたかもしれない。

「…こんな事考えてる場合じゃないよね!図書館にでも行って、エメラルドの弟、アメジストの事調べなきゃ」

色々な不安な気持ちを拭い、れみは玄関へ向かっていった。



町はいつも通り、特に変わったところもなく人々は自らに課せられた役目で動いていた。

…大袈裟な言い方だが、ただ自分の仕事をしているだけだ。

暗い気持ちのれみとは対照的に、特に変化も求めていない世の中だ。


れみは、灰色の歩道を歩いていく。沢山の通行人たちが何気なく彼女の横を通り抜けていき、どこか別々の場所へ向かっていく。

勿論誰も気になる人はおらず、お互い無関心で流れるようにすれ違っていく。

「…」


いや、駄目だった。

気になる人物を見つけてしまったのだ。

れみの緑色の瞳の隅に、やつが現れた。

赤と青の派手な服に、赤一色の帽子…。

こちらには気づいていないのか、わたあめを片手にすれ違おうとしていた。

(…よし)

なるべくこいつは避けておきたい…そう思った矢先に、起きてしまった。



(え!?)

急に空が真っ暗になる。

地上からは影が消え、周囲の人々は時を止められたかのように動かなくなってしまう。

いや、時が止められたのだ。

やつの手によって。


「ごきげんよぉ」

れみの肩に手をのせてきた者…。


リューガが現れた。

すぐ後ろにいるが、れみは振り向けなかった。

この陰湿で得体の知れないやつが今回何で心理攻撃をしてくるか分かっていた。


「エメラルドの弟とお前は、正直よく似てるよ。何やっても上には敵わないよなぁ」

「そんな事…!」

れみは、わざと突然声をあげて背後に肘打ちを放とうとした!

だが、背後にリューガの姿はない。


リューガは一瞬で、れみの正面に回り込んだのだった…。

「そんな事ないって?なら証明して見せろよ。こいつは、お前の姉なら難なく倒せる相手だからな」

同時にリューガは右手を振り上げた。

時を止められた町に響き渡る獣のような咆哮。

夜空のように暗くなった昼間の空のもと、れみはどこから来るか分からない敵に警戒体制をとる。

目の前にはただただ憎たらしい笑顔を浮かべるリューガ…。





「後ろだ」

リューガが指差した頃には、もう遅かった。

れみが振り替えると、そこには鋭い鎌の腕を振りかぶった巨大なカマキリが立っていた。

ビルと同じくらいある。

この大きさで、れみが全く気づかない繊細な動きで、音もなく。




あの獣のような咆哮からは想像もできない、細い体だ。

「何なのこいつ!?」

カマキリがもう一度鎌を振り下ろしてきたので、今度は両手で受け止める。

しかし、僅かな手の滑りで上手く受け止める事ができず、鎌は手をすり抜けるようにれみの目の前の地面に突き刺さる。

「おっと。今の一撃、お前の姉なら普通に受け止めていたはずだがな?」

「うるさい!」

れみはもう一度鎌を持ち直し、そのまま全力を入れてカマキリを持ち上げる。

カマキリは咆哮をあげながら羽を広げ、空を飛び出した!

鎌をつかんだまま空中に連れさらわれるれみ。

「空中戦か!良い度胸だねえ!?」

得意な空中戦に持ち込まれて自信をつけるれみ。

れなにはよく空中戦ならば負けないと意地悪気味に言っていた事を思い出す。

「くらええ!」

れみはカマキリに空中飛行して突進していく!

所詮はカマキリだと、正直油断して…。


カマキリは、頭を左右に振って自らに渇を入れ、右の鎌を勢いよく振りかぶった!

見切ったれみは、左に動いてカマキリの脇に拳を定めた。


しかし、全てはカマキリの想定内。

今度は左の鎌を振り下ろし、れみの背中を一突き!!

地面に向かって叩き落とされ、コンクリートに衝突するれみ。

両手を広げて地面にめり込むれみの周りには、衝撃を物語る煙がたっていた。

「くそっ…」

珍しく、弱気な「くそっ」を発した。

そうこうしてる間にもカマキリの鎌による猛攻は続き、れみを切り裂かんと近づいてくる。

リューガはビルの上から高みの見物を楽しんでいた。

カマキリの鎌はれみを集中狙いするが、もし当たれば高層ビルも切り裂くだろう。

周囲にビルが立ち並んでいるのも、れみを更に追い詰める。

時が止まった人々を上手くどけながら巨大な敵を相手する…今までこんなに苦労した事は中々なかった。

これも、れななら難なくやり遂げるのか…?

そんな事、誰にも分からないが、リューガの精神攻撃、カマキリの肉体的攻撃もあって、れみは思い悩んでいた。

既に体も疲れ、自分の体力の無さに歯を食い縛る。

「くっ…今度博士に足調整してもらわないと…」

地上を走って逃げていくにつれ、足が段々疲れてくる。

心の疲れに、足がついてこれていないのだ。

時が止められている今、仲間に助けを求める事もできない。

一人でこいつを何とかするしかなかった。

れみはコンクリートが鎌で刺され、大穴が空けられていく中、跳ねて少しずつ後ろに下がっていく。


そのうち、工場地帯に辿り着く。

活気のある店が揃っていたさっきとは違い、いかにも重労働で支えられている巨大な工場が立ち並んでいた。

上を見上げれば煙突から出る煙まで、時が止められていた。

黒い工場が囲む広場の中、れみはカマキリに両手を構えた。

「ここで止めるぞ!!」

カマキリは両手の鎌を揃え、同時に振り下ろす!

もういい加減にこのワンパターンには慣れてきた。

鎌が目の前で叩きつけられるなか、れみは背後に向かって凄い高さまで跳ね上がる!大ジャンプだ。

そのまま勢いにのせて工場の屋上まで飛んでいく。

一瞬で視界から消える事でカマキリの気をそらす事に成功する。

視界から敵が上空に向かって消え、ぼんやりとれみを見上げるカマキリ。


れみの狙いは、工場の屋上にある無数のドラム缶だった。

「食らえ」

れみはドラム缶を蹴飛ばし、無数のドラム缶がカマキリの頭上に落ちていくのを確認すると、直ぐ様人差し指からレーザーを放った!

レーザーはドラム缶に直撃、爆発を引き起こす!

引火する事で他のドラム缶も次々に爆発し、カマキリの全身を覆う。




黒煙が工場地帯に立ち込めるなか、れみは緊張と、僅かな勝利への確信を胸に、その光景を見つめていた。


「さすが、あいつの妹というだけの事はある。だが、やはりまだまだ子供だな」




リューガの怪しげな笑みと共に、煙が振り払われた!

中からは体の一部が焼け焦げたカマキリが飛び出し、れみに鎌を叩きつける!

油断していたのもあり、れみはよりによって顔面に鎌をぶつけられてしまい、背後のビルに叩きつけられてしまう。


両手をビルの壁に張り付け、そのままゆっくりずり落ちていく。

その顔は、完全に自信を失くしていた。

「おやおや。もう終わりかい」

リューガは、俯いたれみの頭に砕けたコンクリートの粉を振りかける。

いつもならこんな煽りには簡単に対抗するが、この時だけは黙ったままだった。

「…言う事なしか。まあ元気出す事だな。ははは!」

リューガは、れみの自信を削ぐだけ削ぎ落として、そのまま全身を黒いオーラに纏い、カマキリと共に消えてしまう。


同時に、世界は時間の流れを取り戻す。

周りの人々は何事もなかったかのように普通に歩き回り、普通に過ごしている。


「おい!大丈夫か!」

何人かの人達が、れみに駆け寄った。

れみは、黙ったままだった。




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