死神たちの夜
夜のテクニカルシティにて、黒い体に骸骨の頭の幽霊のような者たちがユラユラと飛行していた。
彼らは、死神。
恐ろしいイメージの死神だが彼らの本質はこの世に残された魂をあの世に送り、悪霊が生まれるのを防ぎ、人の生死を優しく見届ける存在。
今日も誰かの魂を捕まえに来たらしいが、その死神はあろう事か、白い光のような魂の美しさに見とれてる隙に逃げられてしまう。
「またやっちまった!」
白いミイラのような顔の死神は、手を振り下ろして後悔した。
幸い魂は他の死神に捕まったが、彼は何一つ手柄をたてられない。
「苦戦してるなブロッコリ」
ブロッコリと呼ばれた死神は、肉のない顔で自身を呼ぶ者に振り替える。
そこにいたのはブロッコリの同僚死神だった。
同僚死神はブロッコリに笑いながら耳打ちした。
「この町に住む、死神兄妹知ってるか?そいつらはこの地球を何度も救ってるという噂だ。そいつらの魔力を奪えば大死神になれるかもしれないぜ?」
冗談のつもりだったのかもしれないが、ブロッコリは表情を明るくしてしまう。
同僚はまずいと思ったのか、骨の手を振って上手く誤魔化そうとしたが、そうもいかなかった。
ドクロとテリーは家でまだ起きていた。
午前0時。夜更かしするドクロにテリーが注意しているところだ。
「お兄ちゃんうるさい!」
「いいからさっさと寝ろ」
テリーはドクロの白い髪を掴んで持ち上げると、近くの骨柄布団へ叩き込んだ。
骨の腕は筋肉でもあるんじゃないかと思うくらいパワフルでエネルギッシュ、動きも軽やかだった。
ドクロは仕方なく目を瞑る。あまり逆らうと後が怖い。
それを窓の外からブロッコリが覗いていた。
「あいつらか…」
ターゲットを発見し、ブロッコリは笑顔を不気味に歪ませた。
地上に降り、恐れることなくインターフォンを押す。
それに対応してドアを開いて出てきたのはテリーだった。
「はいはーい。誰…」
テリーは目の前の老人…ブロッコリの異様な姿に、ヒエッという声にならない小さな悲鳴をあげた。
それはブロッコリも同じ。テリーの姿に痩せこけた体が反応した。
「へーお前も死神なのか」
お茶を用意しつつテリーは自分とドクロ以外の死神を物珍しそうに凝視した。
ブロッコリは照れ臭そうに笑うと、肩の力を抜いて弱り果てたフリをする。
「長年の旅で…。お願いします。どうかここに泊めてください」
心優しいテリーは勿論彼をここに泊める事に。
「じゃあここで寝てくれ」
突然の来客なのにも関わらず、テリーは空き部屋を残していたのに気づいた。
何と都合が良い。ブロッコリはテリーに悟られない程度にニヤリと笑うと、彼が用意した黒い布団に入る。
午前1時。
ブロッコリはローブで隠していたハゲ頭を掻き、作戦を開始した。
ドアを開き、真っ暗な長い廊下を見渡す。
まずは彼の妹、ドクロからだ。
部屋から部屋へと暗闇のなか進むブロッコリの姿は彼が死神な事もあって恐怖そのものだった。
地上についてるのが不思議なくらい細い足を、リビングへ運ぶ。
ここから各部屋へ行き、覗いていく事に。
その時…ブロッコリの足に、柔らかくてブヨブヨした物がくっついた感触が。
「ぎゃあああ!!」
唐突な感触のあまり響き渡るブロッコリの叫び、部屋から起きてくるテリー。
テリーが電気をつけると、そこにはブロッコリが汗まみれで倒れていた。
その足元には、蒟蒻が落ちていた。
テリーは蒟蒻を持ち上げ、骨の顔に呆れの表情。
「何でこんな所に蒟蒻が…申し訳ありませんブロッコリさん」
頭を下げるテリー。いえいえとブロッコリは白い枝のような手を振り、何とか誤魔化す。
テリーからは一瞬怪しまれたが、ブロッコリは冷蔵庫のジュースを飲んだ事で喉が乾いて夜中にリビングに来たのだと思わせた。
再びブロッコリは一人になる。
「思わぬ罠だったな…だが今度は失敗しないぞ」
再度暗闇の探索者と化したブロッコリは、ドクロを探し始める。
今度は慎重に、慎重に廊下を歩き、足音すらたてない。
窓の外から不気味な風が拭き、夜闇からますます気温を奪ってく。
窓が震え、音楽のように聞こえる程の頻度で不気味に音を鳴らす。
「雰囲気出てきたじゃないか…」
またその時…。
ブロッコリの背後から何かが倒れる音が響いてきた!
「ぎゃひーー!!!!」
倒れたのはブロッコリの後ろにあった掃除箱の箒たちだ。
全身をガクガク震わせ、元から真っ白な顔から血の気が失せる。
偶然が偶然を呼び、まるでホラー映画のようなシチュエーションが…。
「そ、そうだ!偶然!偶然さ!!」
無理矢理立て直したブロッコリは立ち上がり、今度こそ進もうと決意した。
恐怖を取り払ったばかりのブロッコリの顔に、風で飛ばされたかのように恐怖が跳ね返ってきた。
彼の目の前に、白い顔で険しい表情の老人が視界大アップに映りこんできたのだ!!
「ぎええええええええ!!!!!」
ブロッコリは細い足に似合わない勢いで跳ねあがり、天井に頭をぶつける。
痛みも忘れる恐怖が体を突き動かし、物凄い叫びをあげながら家から抜け出していった…。
「ブロッコリさーん」
テリーが駆けつけたが、ブロッコリの姿はもうなかった。
玄関を見ると、彼の靴が無くなっている。
「帰ったのか…?全く失礼なやつ」
テリーは、壁にかけてある老人の絵が傾いてるのを見て元に戻す。
こうして、ドクロ兄妹は敵の襲来にも気づかず今日も平和に過ごしたのだった。




