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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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光王国の悲劇 後編

「あの金剛獣という魔獣は拘束、研究室に捕獲…というより封印しました」

敬礼する兵士に頷くシャナイ。光姫の部屋のテーブルを、光姫と挟みながら話し合っていた。

あの重々しい一件の後では中々まともに話せなかった光姫だが、シャナイはそれでもいつも通り。

「あの兵士たちの様に闇の世界を狙う者が現れるかもしれん」

恐ろしい事だが、事実だ。

黙りこみつつ大きく頷く光姫。王国の支配者として、この件は見逃せない。

「姫。私は今後の作戦の方針を兵士と共に考えてきましょう」

「ま、待ってくださいシャナイ!貴方はどうしてそんなに冷静でいられるのです?」

光姫には不思議だった。

何故この男は何があってもここまで冷静でいられるのか。

シャナイは兜に隠れた無愛想な顔のまま、無機質な声で答える。

「戦場の掟ってやつだ」




その頃、囚われた兵士たちは鉄格子を掴みながら歯を食い縛っていた。

独牢なのでお互い離れあうなか、反省もせずに脱走法を考えていた。

「ちくしょー…光姫め!必ず金剛獣を取り返し…」

「うるせえぞ!!」

機嫌の悪い看守が、鎧の拳で檻を殴る。

乾いた音が響き、兵士の肩に力がこもる。


もう永遠にこの檻から出れないのかと悲願する者さえいた。

湿気が溢れ、暗闇に支配された牢は寂しい物だった。


「何やってる?」

聞きなれない声がした。


鉄格子の前に、男が立っていた。

その道化師のような男…リューガは黄の左目に黄緑の右目をしていた。

「悪魔たちを潰す為、闇の世界そのものを潰すか。素晴らしい考えだよ」

兵士は看守を呼ぶが看守はリューガが見えていないかの様に平然と振る舞っていた。

リューガの体は不思議な事に檻をすり抜け、兵士の横にくっついてくる。

「正義故の危険な作戦なのに、あんな風に言われちゃなぁ?やる気失せるよな」

「そ、そうだ俺達は復讐したいんだ」

リューガは嬉しそうに笑い、両目をオレンジに光らせた。


直後、目の前の鉄格子が音もなくへし折れた。

「ほら折ってやったぞ。さぁ行け」

リューガは超能力で兵士たちを助け出す。

檻から飛び出す鳥の如く走りぬける兵士たち。

驚きのあまりすぐに声がでなかった看守。

「…ま、待てー!!」






「はあはあ…ついたな」

兵士たちの目の前に佇む、修理されたカプセル。

両腕を失った金剛獣は目を閉じ、培養液の中で静かに眠っていた。

兵士たちはお互い顔を見合わせ、一人一人に頷くとカプセルに飛び付いた。

拳を振り上げ、カプセルを殴りつけた!


一同を追いかけてきたリューガが彼らの背後から声をかける。

そして、手の平から放たれる紫のモヤを放ち、兵士たちを包み込んだ。

モヤは兵士たちの体に吸い込まれ…。


「うおおおお力がみなぎるー!!!」

体の奥底から沸き上がる力を拳に集め、衝撃波が生じる程の勢いで殴り付けた!

カプセルは穴が空くどころか粉々に砕け散り、その力で金剛獣が吹き飛ばされ、

壁に衝突。

それを確認するなり、リューガは金剛獣の両腕の断面に金の光の粒を手から放出する。



「ぐがああああ!!!」

金剛獣の両腕が、ドリルの右手とガトリングガンの左手として生まれ変わる。

ガトリングの銃口から光の弾丸を放って天井を穴だらけにする金剛獣。


それと同時に部屋に赤い光が差し込まれ、城内放送が鳴り響く。

「緊急事態!緊急事態!至急、戦闘員は配置に集合せよ!」

城の他の兵士たちの重い足音が曲のように聞こえてくる。

リューガの力を手に入れた兵士たちは、何でも来てみやがれと自信満々だ。



そして…あの二人はすぐやって来た。

光姫が研究室に駆け込み、捕らえていたはずの兵士たち、金剛獣が抜け出している状況に驚きを隠せない。

シャナイだけはやはり冷静にふるまい、剣を敵に向ける。

「もはや兵士として扱う訳にはいかんな。光王国の平和の為、罰を与えよう」

「そんな事を言って平和を作る為の兵器に刃を向けるとは、皮肉だな!」

金剛獣は兵士の指差す光姫目掛けて突進してくる。

光姫はそれを避け、金剛獣の石頭は頑丈な壁を突き抜けた。

あと少しで天井に頭がぶつかる高さで手の平を構える光姫だが、金剛獣のドリルの腕は伸縮自在。

天井の光姫もものともせず、ドリルの刃先が光姫を吹き飛ばす。

その力に、光姫の体は床にぶつかるとバウンドし、天井にまで叩きつけられた。

金剛獣は恐ろしい形相で自らの両腕を切り裂いたシャナイに襲いかかり、ドリルを振り下ろす!

シャナイは剣を構えて受け止めるが、食い縛った歯を兵士たちに見せてしまう。




「…教えろ!どうやって抜け出した!」

「俺達が聞きたいね!この男が助けてくれたのさ!」

兵士の一人がある方向を指差すが…。



リューガはそこにはいなかった。

「あれ?い、いつの間に消えた…」

兵士の意識から、集中力が消えた。

倒れつつも、光姫はすぐ起き上がって兵士たちの頭に手刀を浴びせ、鎧を突き抜ける衝撃を与えて気絶させた。


シャナイは金剛獣の怪力に防御の腕を緩める事は許されない。

生物兵器の金剛獣に慈悲などなく、ガトリングの腕でシャナイの腹部に射撃を仕掛けた。

鉄の弾丸はシャナイの鎧をも突き抜ける。

血を垂らすシャナイにドリルの腕が叩きつけられる!



「ぐっ…やってくれるな」

シャナイは立ち上がると、剣を金剛獣に向けて、激痛のなか狙いを定めだした。

「だが…守るべきはこの国だけではない。悪魔も闇も、壊させる訳にはいかぬ」

兜の先の目が、金剛獣の胸の宝石に視線をうつす。

「くらええええ!!」

シャナイは走りだし、剣を金剛獣に突きだした!

金剛獣は巨体に似合わない速度でそれをかわす。


しかし、かわした先に待っていたのは光姫の右手。

「これを待ってたんですよ!」

金剛獣が気づいた頃には遅かった。

手の平から放たれる金色の光線が金剛獣の頭に直撃し、当然ながら金剛獣は空中に投げ出された。

着地する前に飛んでくるシャナイが、胸の宝石に一突きを食らわせた!


同時に宝石がひび割れ、金剛獣の口から小さな唸り声が聞こえたかと思うと、ひび割れた部分から緑の光が拡散した!!

顔を覆う光姫とシャナイ…。



目を開けると、そこには倒れた金剛獣が、痙攣しながら天井を見つめていた。

剣を向けるシャナイ。

「殺すのは惜しいやつだ」

シャナイは金剛獣のドリルの手を掴み、そのまま持ち上げる。

「こいつは何とかマインドコントロールできないか、やってみる事にしよう…」

光姫は、優しい微笑みでそれを見た。

「昔から少しも変わっていないんですね。金剛獣にとどめを刺す前の言葉…」

シャナイは金剛獣を抱えたまま、一瞬首を動かすと、何事もなかったかのように、冷静に去っていくのだった…。



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