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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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光王国の悲劇 前編

地平線の果てにある王国…光王国は王国中、どこもかしこも日向の国だ。

眩しい程の日の光は今日も地を照らし、町の人々は生き生きと動いている。

光姫は書類を書きながら城の窓の外から地上を見下ろし、民の暮らしを見守っていた。

「今日も平和ですね…。それにしてもれなさんはどこに行ったのでしょう。闇姫の噂も最近聞きませんし…」

光姫はまだれなと闇姫が異空間へ行き、帰って来ない事を知らなかった。

二人の戦いに関わり続けてきた光姫は時々心配を募らせていた。味方であるれなは勿論、闇姫もだ。


誰も見てない事を確認し、頬杖をつく光姫。

久々にあの二人に会いたい…ため息をついて書類に手をつける。


「姫様ー!!大変です!」

金色の派手な髭の老人…光姫の執事が部屋に慌ただしく入ってくる。

光姫は立ち上がり、緊急事態を悟った。


執事に連れられて城の玄関まで行ってみると、そこでは白い鎧を纏う複数の兵士たちが、小さな紫の少年の悪魔に剣を向けていた。

「姫様。この悪魔をどう致しましょう」

震える子供悪魔。兵士たちの剣は無慈悲に輝いていた。

とんでもない。光姫はすぐに子供悪魔を解放するよう命じようとした…。その時。


「そいつを解放しろ」

城から黄金の鎧を身に纏った兵士が、重い足音と声と共にやって来た。

兵士たちは敬礼しつつも彼の意見に反対する。

「隊長!ですがこいつは悪魔です!放っておく訳には…」

「だからこそだ。貴様らは未だにそんな差別精神に左右されるのか」

それを聞いた兵士たちは、怯えた顔で剣をひくと、一気に解散した。


「さすがシャナイ隊長ですね。咄嗟の状況にも素早い判断ができる…」

シャナイ隊長は光姫の言葉に返答せず、黙って去っていった。

彼がこんな人物である事は、何より光姫が知っていた。




巡る昔の記憶。

その頃の光姫はまだ小さな小娘だった。

シャナイはその頃から光王国に仕えており、その頃からあんな性格だった。

何を言っても必要最低限の反応。

兜を被っていない彼の顔を見た事があったはずだが、残念ながら光姫は忙しい生活に追われて忘れていた。


しかし彼はいつも遊んでくれていた。かつ仕事だってきちんとこなすのだ。


「悪魔だ!悪魔が出たぞー!!」

その時捕まった牛型悪魔は確かに凶暴だった。押さえようとする兵士たちを殴り、蹴りの大暴れ。

「やめろ!この悪魔め」

「悪魔だから何だってんっだ!俺は何もしてないぞ!光王国の土産を買いに来ただけだ!!」

城前の広場で軽く騒動が起きるなか、シャナイは兵士たちに強く言った。

「やめないか。悪魔だから何だと言うんだ」

「隊長!しかし悪魔は…」

シャナイは背中から剣を取り出す。身をすくめる兵士たち。

悪魔は調子にのって彼等を嘲笑する。

「ふほほ…仲間割れか。所詮こんなものだ」

「まだ貴様を助けるとは言ってない。余計な事を言うな。牢に入れても良いんだぞ」

剣は悪魔にも向けられる。

悪魔は両手をあげ、あたふたと去っていった。


柱の陰からそれを見ていた光姫。

兵士を解散させ、事を済ませたシャナイを見上げて子供らしい素直な疑問を持ちかけた。

「どーして悪魔の味方をしたの?」

シャナイは、無邪気な光姫にも背を向けて、静かに言った。

「当たり前の事だ。覚えておきなさい」

その当たり前の事の意味が、当時の光姫にはよく分からなかった。



あれは何年前の出来事なのだろう…。光姫は思い出に浸りながら、あの時の柱の陰で目を瞑っていた。

「シャナイはまだ、その当たり前の事を守り続けてるのですね…」

自分も見習う所があると決めた光姫。

れなたちの無事を祈り、自分も作業に取りかかろうとした時…。目を閉じてた事で研ぎ澄まされた光姫の精神が、何かを捉えた。


王国の地下からだった。


「…この気配は…」

光姫の金の瞳が、見開いた。



光姫の予感は見事に当たっていた。

光王国の平和な城下町の地下深くで、良からぬ計画が実行されようとしていたのだ。

巨大な培養カプセルに、巨大な怪獣が収納されていた。

頭の角、地につくほど長い両腕。胸には金の宝石がはめられた異様な怪獣。

その怪獣を作った者…王国兵士たちは歓声をあげる。

「やったぞ!この金剛獣こんごうじゅうを使えば闇の世界もおしまいだ!」

とんでもない事を企んでいた。

兵士の手は既にこの金剛獣を解放するレバーを握っていた。

今まさにレバーが引かれようとしたその時!


兵士たちの体に強い重圧がかかる。

暗い研究室に兵士たちを止めにやって来た者…それは両手を向ける光姫だった。

「皆さん。すぐにおやめなさい。その金剛獣は没収させて頂きます」

「姫様の命令といえどこいつを使わない訳にはいきません…!闇の世界を潰せば、我々の戦いも楽になるって事ですよ!」

兵士たちは悪魔たちとの戦いで疲れきっていた。

それで悪魔の本拠である闇の世界をまとめて潰せば戦いは減るという考えだ。

しかし、そんな事をしては当然罪のない悪魔も犠牲になる。

無差別破壊を止める為、光姫は真っ先に飛び出した。

兵士たちは申し訳なさそうに手元のレバーをひいた。

「姫様といえど、この計画を邪魔する者は許しません…」


するとカプセルの金剛獣が、痙攣するように震えだす。


低い唸り声をあげながら、金剛獣は拳を握り、カプセルを殴り付けた!

破片が水しぶきと共に飛び散り、全身に培養液を浴びた金剛獣が飛び出してくる。




歓喜する兵士たちをよそに、金剛獣は口から黄金の光線を吐く!

部屋の天井を裂いた光線。

更に光線は光姫に向かって振り下ろされてきた!

素早くかわす光姫だが、光線は凄い追尾性だ。

機械や鉄の壁を蹴って四方を飛び回る光姫。

「反逆罪ですよ!」

「構うものか。俺達は平和の為にやってるんだから」

悪びれる様子のない兵士にも怯まず、金剛獣と戦う事だけを考えた。

しかし、無慈悲な光線は光姫を壁まで追い詰める。

「あっ…」

光姫に黄金の破壊の光がぶつかろうとした!



だが、救いは来た。

一瞬、大きな白いラインが見えたと思うと金剛獣の両手が引きちぎれた!

血が飛び散るなか、金剛獣は横たわって苦しみだす。


「よさないか」

部屋の扉からやって来た者…光姫を助けに来たシャナイだった。

地下の電気の光に照らされた巨大な剣を手に、兵士たちを威圧する。

よく知る上司に威圧された兵士たちはもう震えながら逃げ出すしかなかった。

シャナイがそれを見逃す訳がなかった。

剣から衝撃波が放たれ、それに当たった兵士たちはバタバタと死んだように倒れこむ。


「…シャナイ」

「悲しい事だ。まだこんな愚か者がいるとは」







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