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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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実在!雪男!

次の依頼にれみは不機嫌そうな顔をした。

目の前に座っているのは…例のモンゴリアンデスワームの件で相談を持ちかけてきた探検家だった。

こいつは人に物を頼む態度も礼儀もなっておらず、次々にトラブルを起こすかなりのトラブルメーカーなのだ。

「聞いてくれ!今度は雪山で雪男の情報が相次いでるんだ!」

頬杖をつきながられみは口を尖らせる。

「悪いけどね、私は便利屋じゃないから」

「そんな事言わずにね。ほら」

探検家は金のバッグから当たり前のように大量の札束を取り出した。

れみの目に、お星様。






目的の山は、白い猛吹雪で1メートル先すら見えないほど。凄まじい程の悪天候だ。

これなら確かに雪男がいても気づかない。れみは両手で顔を覆いながら、厚着の探検家に聞いた。

「一体ここのどこにいるの雪男は!」

「だからここにいるんだって!」

ここだけじゃ分からない。探検家は深い雪に足が突き刺さり、靴の中に雪が入るのを感じた。

足元から気持ち悪い感覚が迫ってくる。

れみも髪やスカートが暴風で激しく揺れてしまう。

(こんな時に、せめてラーメンでもあれば…)



その時。激しい寒さのなか、突如温かい匂いが吹いてきた。

嗅いでみると…それはラーメンの匂いだった。

これだけの吹雪だし、どうせすぐに先へは進めまい。れみは探検家を一時無視して、匂いを辿っていく。

その先には、意外な人物が。



水色のとんがり帽子と服、そして瞳、首もとには赤いマフラー、そして赤い長靴の少女が、氷のドームに全身を包んでラーメンを食べていたのだ!

氷の悪魔、パリアだった。

ドームを叩く音に気づいたパリアは魔力でドームを溶かし、彼女の前に歩み寄る。

「なーにしてんの?ラーメン食べてんだけど」

パリアの持つラーメンは雪が入って既に冷え冷えだ。

何でここでこいつに遭遇するんだと顔を抑えるが、今はチャンスと見て良いだろう。

「雪男、見なかった?」

「うん見たよ」

パリアは雪男を目撃したようだ。さすが、氷の悪魔というだけの事はある。

更に驚くべき事が…。


「はいこいつ」

パリアの背後から、巨大なゴリラが吹雪に紛れて現れたのだ!




唐突な出現にもちろんれみは仰天し、雪に尻餅をついて雪まみれに。

そいつは…よく見るとただのゴリラではない。

白い毛、人間と似た形の手足、目はゴリラにしては大きく、黄色に光ってる。

まさしく、雪男だ!

その足は、テレビや本で見た雪男の足跡とまるっきり同じ形をしていた。

感激…いや、こんな登場では感激する余裕もない。

とりあえず探検家に伝えてやろうと走り出そうとしたが、雪男は眠そうな声をあげながら近づいてきた。

振り替えると、雪男は優しそうな顔で笑いながられみを両手で包みこむ!

「ぎゃ、何をする!!」

大きな両手にすっぽりはまってしまうれみ。

何か攻撃でも仕掛けてくるのかと身構えるが、全くその気配がない。

おかしいなと、頭をかくれみ…この雪男は、れみを吹雪から守ってあげてるのだった。

同時にパリアは指を鳴らし、周囲の雪を操作するまじないをかける。


暴走するような猛吹雪は、突然勢いを弱め、雨雲は去っていき、青空が顔を出す。

白い雪が輝き、雪男は手を放してあげた。

パリアは雪男の為、吹雪を止ませたのだ。

たまには良いところもある…。


雪男はれみを両手で持ち上げると、顔をすり付ける。

巨体を誇る雪男から見れば、子供体型のれみはまさに人形だろう。

「あっ!やめてよ!」

困惑するれみだが雪男は彼女を可愛がりたくて仕方ないのか、頭を撫でたりほっぺを軽くつついたり…普段見ないものなので余計物珍しいのだろう。

困り果てつつも、れみはうっすら笑みを浮かべていた。

雪男は不気味なイメージがあったが、実際会ってみれば中々愛嬌があるじゃないか。

れみもパリアも雪男に付き合ってあげようと、ほっこりした時間を過ごそうとしたのだが…。



「みつけた!!」

気高い声が響く。

目の前に現れたのはあの探検家だった。すっかり忘れていた。

皮肉にもパリアが吹雪を晴らした為に見つかりやすくなってしまっていたのだろう。

ついに見つけた雪男の姿に大興奮の探検家はバッグからロープを取りだし、凄いコントロールで巨大な雪男の腕に引っかけた!

怯える雪男は紐を振り払い、そのまま走り抜けてしまう。

雪男が走った事で飛び散る雪を手で防ぎながら後を追おうとする探検家だが、れみが両手を広げる。

「追わないであげてよ!」

「これぞ世紀の大発見だ!捕らえない訳にはいかん!デスワームの時のようにはいかんぞ!」

見られただけで良いじゃんと嘆くれみだが、人間である探検家の意思は底無しの欲望だ。

パリアは真っ先に雪男を守る為に飛び出し、探検家の目の前に舞い降りると指を向けた。

「やめないと氷漬けにするよ」

下らない冗談だと思い、探検家はパリアの横をすり抜ける。

怒ったパリアは冷凍レーザーを撃とうと指を光らせるが相手は人間。

そんな事をすれば死んでしまう。

パリアに飛び付いて止め、れみは雪男、探検家を追いかける。

降り積もった雪のせいで走りにくい…こうなればと空中飛行をはじめ、冷たい空気を押し流して二人を追う。



「逃がさんぞ雪男!」

探検家は今度はバッグから弓矢を取りだし、雪男の背中に発射した!

大声で苦しみながら倒れる雪男。

足跡どころか、雪男の全体像の跡が白い雪に刻まれ、探検家はますます大喜び。

そこへれみが駆けつけ、探検家を突き飛ばし、雪に叩き込んだ。

「何してんだ!」

「こうでもしないと止まんねえだろ?」

倒れた雪男を指差し、探検家を睨み、できる限り冷静を保ちながら訴える。

「あんな事して探検家?愛護精神も無しに何やってんの!」

結局こいつは自分の利益だけしか考えてないとれみは分かった。

根拠はないように見えるが、こいつの動きを見てるだけでもう分かるのだ。無我夢中に未確認生物を追い回して…。

探検家のもとを離れ、雪男に刺さった矢を引き抜くれみ。

「あ!」

思わずゾッとした。

雪男の背中の傷口は、血こそ赤いが紫色に染まっていたのだ。

毒矢だった。

探検家はすぐ立ち上がり、動かなくなった雪男の写真を撮ろうとした。

「やめろ!」

れみはレーザーを指から発射し、カメラを狙撃!

カメラはショート音と共に煙を出して動かなくなる。

探検家は目を見開き、せっかくの機会を邪魔されて怒り狂う。

「このやろう、ぶっ殺してやる!」

探検家は飛びかかってきたが、恐らくれみは初めて、人間相手に蹴りを放った!

勿論加減はしている。

それでも3メートル以上は吹き飛ばされ、再び雪に全身を叩き込まれる探検家。

滑りそうになりながらスタコラと雪山を降りていく。

追おうとするれみだが、やつはやっと諦めたようなのでこれ以上は追わない事にした…。



「パリア、治せる?」

パリアは頷き、雪男の傷に左手の平を向け、目を閉じる。

手の平から冷気が放たれ、雪男の傷口に集中していき、氷を形成した。

氷は毒を吸って徐々に紫色になる。

紫の水晶のようになると、パリアは手に取って思い切り地面に叩きつけた!

砕けた氷から、悪き毒液が溢れ出る。


雪男は震えながらもゆっくりと起き上がった。

死んでしまうかと思っていたれみは安心のあまり甘いため息をつき、胸を撫で下ろす。

雪男は意識が朦朧としつつも意識自体はあったらしく、れみとパリアを両腕に抱き締めた。

「ぬわ、やめろ!やめろって!」

驚くれみ、笑う雪男。



「今回ばかりはパリアに感謝しないとね」

えへんと胸を張るパリアに素直にお礼を言う。

雪男とパリアが揃うなか、れみも雪山を下る事にした。

今回の依頼は、これで終わりでいいだろう。

雪男の生活の為、平穏な暮らしのために。




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