火山での戦い
ゴウカノ山。
テクニカルシティから南の荒野にある巨大な火山。
今日この火山は噴火しようと炎を荒く揺らしていた。
この山が噴火する事はよくある事。
煙をたてるゴウカノ山を見ても、火山近くの村人たちは特に気にも止めていなかった。
噴火といってもこの山の噴火は大した事はなく、大きな被害でせいぜい作物の成長が遅れるくらいだった。
しかし、これをニュースで見たラオンはただ事ではない事を悟った。
長年の戦いの勘だ。今回は大噴火が訪れると。
研究家の話では今回の火山も大した事はないという事。人間ではどうにもならない、大きな力による噴火が、ラオンの中で想定されていた。
ラオンはれみ、葵を呼び出してこの事件を探る事にした。
依頼ではなく、自主調査。珍しいパターンだった。
「火山ってどんな所なのかな?やっぱたこ焼きとかあるのかな?」
火山を見た事すらなかったれみ。
まだ見ぬ世界に心を踊らせる子供の姿は中々面白い。
純粋な心で色々な予想をしていく様は何とも微笑ましいのだ。
まあ、れみが純粋かと言われれば、首を傾げたくなる話だが。
そうこう飛行してるうちに、灰色の岩肌に包まれたゴウカノ山が、林に囲まれて佇んでいるのが見えた。
噴火口からは煙が吹き荒れている。そこには僅ながらも魔力を感じられた。
「…魔力?何者かの陰謀か?」
噴火口にうかつに近づくのは危険だと判断し、三人は火山の根本にある入り口の穴から内部に侵入する事にした。
「うわあ…」
火山の内部は外からは想像もできない光景だった。
自然が生み出した岩の迷路が構成され、少しでも足を踏み外せば煮えたぎる溶岩に真っ逆さま。
さっさと飛行して切り抜けようとれみは飛行体制をとろうとしたが、それを葵が手を突きだして止めた。
「駄目よれみ。ここで飛行したら脆くなった岩の足場が崩れて溶岩が溢れ出すわ」
ここは歩いていくしかない。
熱い液状の死神たちは、三人の足元で手招きするように泡を吹き上がらせていた。
それから三人は脆い足場の上で歯を食い縛りながら進んでいた。
壁際ギリギリの範囲しかない狭い足場を慎重に渡っていく。
壁に背中をつけてカニ歩き。ちょっとでも腕を動かして態勢をずらしてしまうと今にも落っこちてしまいそうだ。
「慎重に慎重に慎重に慎重に慎重に慎重に慎重に」
言いつつも言ってる本人が一番慎重さを失っているれみ。ラオンと葵は全身の隅々の感覚を研ぎ澄ます。
足元から伝わる猛烈な熱。飛行したい、飛行したいという飛行欲を抑えるれみ。
「あっ!」
れみの足の感覚が消えた。
岩の足場が崩れたのだ。思い切り溶岩に浸かるれみ。
「ヴあっちあちあちあちあちあちあちあちあち」
ラオンと葵はすぐにれみを引き上げる。
二人で息を吹きあい、すぐに火は消化された。
「はー助かった、ありがとう」
岩の壁に背中をつけて座り込み、リラックス。深呼吸するが、空気も熱くて中々落ち着けない。
ゴミでも吸い込んだように息を吐き出すれみをよそに、ラオンと葵は崩れた足場を見つめていた。
この厚さの足場が崩れるのはどうもおかしい。多くの戦場を駆け抜けてきた二人だからこその推測。
崩れかたもどうも違和感があった。下から殴られて破壊されたような崩れかた。
まるで、溶岩の下に何かがいるようだった。
…しかし、そんな事を考えてても何も起こらない。
れみを飲み込もうとした溶岩を横目に、より警戒を固めつつ進んでいく。
一部が黒こげになった天井、靴を履いてても伝わる、地面の凸凹。火山ならではの岩たちが構成する通路を進んでいき、ついに噴火口に繋がる岩階段に辿り着いた。
「よし、噴火口へ急ご…」
れみの掛け声は、背後から響いてきた溶岩の音にかき消された。
三人の頭上から降り注ぐオレンジの雨。
熱くなる頭をはたきながら振り替えると…。
巨大な溶岩の怪人が、下半身を溶岩に浸かしながら両腕を広げていた。
「貴様ら…邪魔をする気か」
恨めしそうな声をあげる怪人に恐れる事なく見上げる三人。
怪人は両手をあわせて燃えるような赤い目を閉じ、強く念じる。
すると怪人の周囲の溶岩が生物のように波打ち、柱のような形に吹き上がる!
三人はこいつが噴火の原因だと即座に理解した。
向かってくる溶岩を跳ねてかわし、更に熱が上昇するなか、汗をかきながら葵が怪人に問いかける。
「あんたが噴火の犯人ね?何を企んでる!」
「魔王様の命令だ!愚かな人間たちを火山の力で焼き尽くしてやる!」
また魔王の手先。
こうしている間にもこいつの魔力で火山の噴火は着々と進みつつある。何とか止めなければ、近くの村から焼き尽くされるだろう。
何としてでも噴火を止める為、三人はこいつをあえて無視して火山の階段を駆け上がっていく。
「待て!!」
溶岩怪人…溶岩男は足元を燃やしながら猛追跡を開始した。
溶岩男についていくように溶岩が階段を飲み込んでいく。
このままでは本当にすべてが焼き尽くされてしまう!
三人は全力で走り登り、とうとう噴火口へ辿り着く。
日の光に照らされ、噴火口は溶岩が輝く亀裂が入っていた。
「噴火の前兆ね。何とか止めないと」
しかしどう止めるべきか。ぶち壊す事はできるが止める手段は極めて限られる。
考える時間もあまり残されていない。
そうこうしてるうちに溶岩男がこちらにやってきた!
溶岩男は足元を見て赤い目と口をつり上がらせる。
「よし、刺激を与えれば溶岩が吹き出すぜ!覚悟しな!!」
腕を振りかぶる溶岩男。
れみは慌てて彼を突き飛ばすが、物凄い熱で逆にダメージを受けてしまう。
倒れてもすぐ起き上がる溶岩男。
「このままじゃまずいわ!何とかならないかしら…何とか…」
頭脳明晰な葵は、ある事を考えた。
溶岩男に気づかれないように二人に耳打ちし、ある無謀な作戦を口にした。
「なに…そんな事できるのか…?」
「私たちの体力が持つのを願うしかないわよ…」
それに気づいた溶岩男は全身から煙を放って威嚇してきた!
「何をしてやがる!さあいくぞ!」
腕を振り下ろす溶岩男!
殴られた岩の地面は、たちまち溶岩が吹き上がって熱が一気に高まる!
岩石を破壊しながら柱のごとく飛び出す溶岩。
全員が一斉に飛び上がり、迫り来る溶岩を見る。
「今よ!」
葵、れみ、ラオンは両手の平を向けて緑、黄色、紫のエネルギー波を撃ちだす!
溶岩の軌道を変えるように撃ち飛ばしていく三人。
「バカめ!溶岩の軌道をずらしただけで何になる?」
気にせず溶岩を撃ち続けていく。撃たれた溶岩はエネルギー波の衝撃に流されるがまま飛んでいき、だんだん空へ向かっていく。
地上に一滴も垂らさないよう、三人の意識は限界を越えて集中していた。
くわえてエネルギーの消耗も激しく、息をきらしたくてもきれない程。
しかし溶岩はエネルギー波の衝撃に耐えきれず、だんだん消えていくのが確実に見えていた。
「一気にいくわよ…!」
葵の険しい声と共に強化されるエネルギー波!
更に濃くなったエネルギー波は溶岩をあっという間に包み込み、空へ飛んでいく光線と化した。
そして…約一分で溶岩は消えてしまった。
噴火口に目をやると、そこにはグツグツと煮えたぎる溶岩が、先程より緩やかな勢いで噴火する光景が。
いつもの噴火だ。
もし今エネルギー波で噴火時の溶岩の数を減らしていなかったら大惨事になっていたところだ。
何とか食い止められた大噴火。
「あれ?溶岩男は?」
煙に包まれる噴火口を見下ろす三人。
よく目を凝らして見ると、オレンジ色の光が鈍く光っている。
他の溶岩とはまた違う光だ。
「あ」
煙からちらっと見えたそれは…気絶してる溶岩男だった。
「…お前溶岩でやられるんかーーい!!!!」




