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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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闇姫教団

赤い空に見下ろされる闇の世界の、闇の城。

今は闇姫なきこの城はすっかり活力を失っていた。

本日は闇姫軍四天王の一人、4本腕の一頭身悪魔のバッディーが担当を勤めるが、いざ担当してみるとシフトの優先順位分からなくなっていた。

そして…何より困った事が起きていた。

城門付近に黒いローブの謎の集団に、赤いローブの骸骨男が両手を広げてこう叫ぶのだ。

「闇姫様、闇姫様…」


兵士たちが必死に彼らを追い返そうとするがまるで言う事を聞かない。聞いた話によれば彼らは闇姫を神だと考えてるんだそう。

伝説の戦士と呼ばれていた頃の事、れなと戦った時の事、何より、悪の限りを尽くす事は彼らにとって実に素晴らしい事だった。

彼らは悪の組織なのだ。悪の組織にとって悪魔の姫君である闇姫は正に神のような存在。

そんな闇姫にぜひ会いたいと言うのが彼らの要望だが、今闇姫はいないのだ。

巨大なドーナツの貢ぎ物を掲げて闇姫様、闇姫様と叫び回る彼らはもはや狂気。

「我々は闇姫教である。闇姫軍の為なら何でもする覚悟です」

「じゃあ帰れ!」

教祖と思われる骸骨男があっさり答えた。

「それは無理です」

何だよ!!堪忍袋の尾が切れ、怒りをぶちまける兵士たちは一斉に槍を揃えて彼らを強制的に追い返そうとする。

しかし教団の信念は物凄い。槍で滅多刺しにされても何故か普通に向かってくる。




「まあよせ」

争いの仲裁に入る者が現れた。

ひし形一頭身で金の角を生やした男…闇姫軍四天王のダイガルだ。

軍全体で最も年配な彼は指導力もそれなりに強い。

この状況を逆手に利用したある作戦を考え付いたのだ。





次の日、闇の世界から出てすぐそこの町、トライタウンにて。

特に大した工業もないこの町に、黒ローブの団体が町にチラシを配っていく事件が起きたのだ。

正体不明の彼らがチラシを残す…怪しいという言葉がここまで似合う事件も珍しいだろう。

一応そのチラシを読んでみると、それは教団の教徒募集だった。

『正義に惑わされていませんか?悪という一つの理念に、少し触れてみませんか

?』

こんなところまで怪しい…が、世の中には本当に色々な人がいるのだ。

少し興味が沸いた者、遊び半分で入ろうと言い出した者…それらは全員、入団式の集合場所である山へ向かう事に決めた。

「何か面白そうだし、ちょっと行ってみよーや」

こんな軽いノリだった。事態をもっと重く見た方が、人は冷静になれると言うのに。



早速山では闇姫軍のシンボルマークが描かれた旗がたてられ、既に入団している黒い教徒たちが、新生教徒らを迎え入れた。

骸骨姿の教祖は台の上にのり、暗く、霧がかかった山の中で声をあげた。

「よくお集まりくださいました!私がこの教団を取りまとめる教祖です。それでは…」

教祖は興奮ぎみに教団の方針を語り出した。

こんなに教徒が増えるとは思っていなかったのだろう。時々声を震わせながら語るところからその興奮ぶりがよく分かる。

新生教徒たちも何度も頷きながら聞いている辺り、教祖の悪へ引き込む為の演説は相当な効果があった。

悪であるが、人を信じこませるのが上手いのだろう。

「…以上で話を終わる。さあ!闇姫様を目指して、皆今日から頑張るのだ!!」




その日から教徒たちの厳しい修行が始まった。

悪というのは一匹狼になっても苦しみを凌げるように夜のジャングルで一人きりで過ごす修行、正義に負けぬよう精神を鍛える、密室で目隠しをして正座を続ける修行…どれも目を覆いたくなるような厳しいものばかり。

弱音を吐く者、途中でリタイアする者と落第生は出たものの、彼らは確実に悪へと向かいつつあった。

立派な悪魔にする為、教祖ははじめこそ彼らを家に返していたが、日がたつに連れて返さなくなる事が多くなり、ついに被害者たちは失踪者となる。

トライタウンは大騒ぎ。失踪者たちを探して人々は助けを求め、警察も必死の捜索をしているが、教団が根城としていたのは山の中でも人間が知らない危険地帯だった。


ここで、彼女の登場だ。

多くの失踪者のぶん、多くの人々が心配しており、事務所にも大量の依頼が飛んできた。

トライタウンはテクニカルシティからは離れた町なのだが、そんな離れた町から依頼が来るのは異例だ。

ただ事ではないと判断したれみは警戒を固める。

偶然その日は事務所にドクロもやって来ていた。

花の世話をして平和に過ごす予定だったようだが、こんな事件が多発していてはのんびりしてられない。

れみとドクロ。珍しい二人組で、事務所から飛び出した!


町の建物がブロックに見える程に遠ざかっていき、広がる景色のほとんどは青い海に。

そして、目の前には草が固まったような緑の山が立派に佇んでいた。

失踪者たちが最後に依頼人たちに姿を見せたのは1週間前。何度も捜索活動に望んでいたようだが痕跡すら見つからなかった。

変な教団に勧誘され、山へ向かった事だけが確かだ。

上から見下ろすと、山の中に捜索隊と思われる人々がライトを片手に歩き回っていた。

…こんな所を捜査しても見つからない。何故なら、ドクロが山に漂う僅かな魔力の匂いをキャッチし、正確な居場所を突き止めたからだ。

「この山の裏側から魔力が匂ってくるわ」

いかにも怪しく、悪しき魔力の匂いだった。何かが焦げたような不快な匂い…。

二人は大急ぎで木々をすり抜け、飛行していく。




しばらく飛んでいくと…周囲の空気が淀んで白い霧が発生してきた。

「僅かに闇の力を感じるけど…この体にのしかかるような重圧感は…悪のオーラね」



そして、その異様な光景は二人の前に展開された。

霧の中、黒いローブの集団が天に向かって手をあわせ、燃え盛る炎の上に人が吊り下げられている。

赤いローブを着た骸骨が、両手を広げて執行に何かを叫んでいるのだ。

「今こそ業火に身を投じ、心に残った正義という概念を跡形もなく焼き尽くすのだ!」

とんでもない事が行われようとしてるのは確かだった。見逃すはずがない。




れみが真っ先に飛び出し、熱を放つ炎の上に吊り下げられた教徒を突き飛ばすように助け出す!

揺れるロープを見上げ、教祖はすぐに襲撃者だと判断した。

地上に降り、一同の怪しい動きを軽蔑した目で睨み付ける。

教祖は両手を緩やかに広げた。

「我々の計画を邪魔しないでくれたまえ。悪の文化を広げる為、闇姫様を崇めるのだ」

闇姫を崇める…一瞬サッパリ意味が分からなかった。

こいつらは闇姫を神かなんかだと思ってるのか。

今は異空間にいて姿が見えないのもあり、確かに神のような存在になってしまっているが…やつは悪魔だ。

「あんなゴキブリ女のどこが良いんだ」

この一言で怒りが頂点に達したのか、教祖は無言で攻撃を仕掛けてきた!

その攻撃は、空中に骨を出現させてこちらに飛ばすという魔術だった。

一本目はかわせるが、ニ本目、三本目とれみの意識を少しずつ削いでいく骨たち。

六本目で骨はれみの額に命中、空洞の骨の音が鳴り響き、れみは倒れる。

教祖は手に骨を持ち、ジリジリと迫ってくる!

ドクロはすかさず両手を構えるが、同時に楽に勝つ作戦を編み出そうとしていた。

(何か作戦があるはず…)




「闇姫様を愚弄する愚か者よ。ここで散れ」

振り下ろされる骨!!



次の瞬間、教祖の耳に声がとびこんできた!

「やめないか」

骨はれみの顔にあと1センチほどで届くか届かないかくらいの距離に迫っていた。


「この声は…や、闇姫様!」

闇姫の声だと教祖が膝をつき、れみに背を向ける。

教徒たちも恐れるように膝をつく。

「お前らがいくら崇めても、私はお前らの前には現れないし、何かを与える訳でもない。平穏な日々を過ごす事だ。さすれば私は、お前らの前に現れる」

「…心得ましたー!!」

凄い勢いで祭壇道具を片付ける教団。

暗い天に向けて頭を下げた後、全員並んで山を降りていった。



「…なるほど。声真似か」

茂みから出てきたドクロを見てれみは嬉しそうに笑った。

闇姫を神と思うなど、本当に色んなやつがいるもんだ…。



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