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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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勇者の生存

リューガ率いる組織。

それはサーカス団ファンマリスと呼ばれていた。

リューガのフルネームである、ファンマリスリューガからとられているのだろう。

しかし、その組織の名前が知られているのは地球上でもごく僅か。その存在を知っているものも、情報を漏らす事はなかった。


闇の世界に点在する組織、闇姫軍は彼らの存在を知る数少ない組織の一つだった。

「勇者アメジストの復活に加えて今度は陽気なサーカス団か」

バルコニーから赤い空に流れる黒い雲を見上げ、軍のトップである闇姫がため息まじりに言った。その後ろでは紫の鎧を身に纏った数人の騎士が、膝をついて敬意を示している。


別世界の自分をも倒したあのリューガが設立した組織。侮るという方が難しい話だ。

やつの事だ。強豪を揃えるだけでなく、また卑劣な手段でこちらを翻弄するだろう。

だが、こちらも黙っている訳ではない。きちんと策を用意していた。

「あれの完成も近い。いくらリューガと言えど、あれを数分で攻略するのはまず不可能だろう」

自分達の策を呟き、闇姫は目を赤く輝かせながら微笑んでいた。



ファンマリスサーカス団を知る者たちはまだいる。

実際に彼らを見たラオンだ。ラオンはあの戦いの後に負傷しつつもれなたちに早急に事実を伝えた。

テクニカルシティの総合科学研究所に送り出される程の負傷であったが、幸いにも命に別状はなかったらしい。

ファンマリスサーカス団にやられた事はあえて言わなかった。下手にやつらに手を出されれば、地球全体の命の保証などしようがないからだ。

ラオンから受けた情報を整理しつつ、葵と粉砕男を中心に事務所で小さな会議が開かれていた。

「リューガは組織まで設立した。そろそろ本気で来てもおかしくないんじゃないか」

机に両手を置きつつ冷や汗をかく粉砕男。葵やドクロも、あのリューガの組織と言われるだけでも不安が押し寄せ、同じく額から汗を流している。

れな姉妹は、目の前に置かれたオレンジジュースを飲みながら一同の話を聞きつつ、時々意見を出すなど、さすがに真面目だ。

「でもリューガって何がしたいの?ここまで来てまだ分からないよね?」

「それが問題なのよね。やつは何の為にここまでの殺戮と悪逆をこなすのか…」

話せば話す程深刻化する状況に、一同は唸るしかない。

プチ会議こそ開いてみたものの、結局リューガについて深く考えれば負けだと察してはいたのだが…。




その時、事務所のインターホンが鳴った。

こんな時に依頼人だろうか。しかし、お客様第一のサービス精神を大切にしなければこれから先やっていけないだろう。

嫌々ながらもドクロが玄関へ駆け出していく。


「はーい…え!?」

来訪者の顔を見て、ドクロは声をあげた。

明らかに異常事態の声だった。葵たちは何事かと、れな姉妹はどんなブサイクがやってきたのかと続いて玄関へ走り出す。


「…!?」


玄関のドアの前に立っていたのは…複数人の兵士を護衛として連れている闇姫だった。

突如現れた予想外の訪問者に、空気が凍りつく。

しばらくの沈黙の後、先に口を出したのは闇姫だった。

「先に言う。知っての通りそろそろリューガのゲームが本番に差し掛かる」

更に空気が重くなる。

全員の予想が、闇姫の一言で確信に変わった。リューガにとって、そろそろ潮時なのだろう。

もしやつが本気を出せば…またあの惨状が繰り返される。

れなと闇姫は、お互い目を合わせあっていた。


「だが私はこの状況をチャンスだと見ている。リューガも、そしてお前らも潰すチャンスだとな」


そうだ。

闇姫は敵なのだ。脅威はリューガだけではない。

先頭に立っていたドクロが目をつり上げながら彼女を睨み付けていた。

「ようやく私の軍は本領を取り戻しつつある。復興を祝い、ある兵器を作り上げる予定だ。そいつを使い、できればリューガを始末したいところだが、お前らは確実に始末できる」

れなたちの足腰に、徐々に力が入っていき、闇姫軍の兵士たちも背中の剣を引き抜こうとしていた。

そんななか、闇姫だけは一切体勢を変える事なく、ただただれなたちをまっすぐ見つめている。

この余裕は、どんな言葉や行動よりも挑発的だった。

「ああ、それとそこの勇者様よ」

闇姫の一言で、全員の視線がアメジストに向く。

アメジストは一瞬誰の事を言ってるのか分からず、困惑した目で自分の顔を指差していた。

今日二度目のため息をつきつつ、闇姫はやや呆れ気味に、重大な情報をあえて漏らす。







「お前の兄、エメラルドだが、まだ欠片が一つだけ残っている」








「えええ!?」

声をあげたのは、れなたちだった。一方アメジストは、小さな声をあげて静かに驚く程度だった。

エメラルドを諦めていたれなが闇姫に近づき、胸ぐらを掴みながら凄まじい形相で問いまくる。

「どういうこと!?全部壊れたんだぞ!?ねえ!!どこにあんの!?ねえ!!ねえ!!!」

当然、闇姫は右手の拳を振り上げてれなをぶっとばす。

れなは事務所の屋根に直撃、見事にめり込み、煉瓦が飛び散ってくる。

気を取り直し、闇姫はエメラルドの在りかを明かす。

「リューガが持っている。やつは罰悪修羅も気づかなかった最後の一個をこの時の為に取っておいたらしい。エメラルドと獄炎刀、これで何をするつもりなんだろうな?」

勇者の魂の欠片に地獄の力を宿した伝説の刀。

それを、人の命を何とも思ってない外道が使おうとしている…誰がどう見ても、この状況は危険だった。

それならば、闇姫が言う新たな兵器とやらの方がまだマシに思えてくる…。そんな気の緩みが、一同にのし掛かっていた。

「まあそういう事だ。お前らを先に潰すのはリューガではなく私達だ。楽しみにしていろ」


どうやら彼女なりの宣戦布告だったようで、それを言い残すと、背中から灰色の翼を射出して飛び去っていった。


「…アメジスト」

飛んでいく闇姫を見るアメジストの表情が複雑な事に気づく粉砕男。

兄がまだ生存していた。

しかし、そんな兄の残された力が、やつの手にわたっている…。


良からぬ不穏な空気が、その場を包んでいた。


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