1 出会い
「ここはどこだ?俺は確か死んだはず?地獄にしては随分と空気が澄んでるし、人工物がなくて綺麗な所だな?」
金井 怜こと俺は死んだはずだった。しかし、どういうわけか生きている。それにこの場所は地球ではないようだ。周りを見れば奇妙な植物や虫がいるようだ。
仲間に裏切られたあの日、冷たい雨の中で俺は信頼していた七殺眼の一人、叶衣叫に殺されたはずである。俺は千人の殺し屋を返り討ちにした。殺し屋の武器を奪いながら戦ったが、武器は壊れ、弾薬は尽きて最後は叫に額を撃ち抜かれる寸前の記憶までしか残っていない。
俺の仕事は狙撃手なのだが、俺の相棒であった狙撃銃もなく、考えても仕方がないので情報を集めることが重要だと割りきって、近くに人がいないか探すことにした。五分ほど歩くと川のせせらぎが聞こえ、音の方角に進むと日本では体験することが出来ない程に静かで神秘的な小川に辿り着く。
「透き通って綺麗な水だな!こんな水見たことねぇ!飲んでも大丈夫だろうか?ガキの頃に飲んでた泥水よりはマシだろう。えぇい、男は度胸だ」
手の平で水を掬い口に運ぶ。
「甘い!何なんだこの水は?蜂蜜みたいに甘く、シルクのような滑らかさ!旨い!」
怜は水を何度も掬って夢中になって飲んだ。気がつくと怜は眠りこけてしまっていた。
「お兄さん、お兄さん。そんな所で寝ていたら危ないよ!この場所は夜になると凶暴な獣が彷徨いているから!お兄さん起きて、起きて。起きろー」
少女は優しく何度も揺するが、怜は起きる気配がない。起きない怜に少女はだんだんと苛立ちを覚え始め、次第には耳元で叫んでいた。怜は驚き飛び起きる。
「お兄さんやっと起きたね。この辺りは獣がたくさん彷徨いているから危険なんだよ!だから私に感謝してほしいな」
「誰だお前?俺に構うな」
怜の態度に少女は膨れっ面をして少女は怜を睨み付ける。しかし、怜が少女を無視をすると虎の子供を彷彿させるような威嚇を始めた。
「お兄さん、もしかして陰キャなの?私みたいな美少女に助けられて、その態度はないんじゃない?」
「知るか、俺は人を信じない。それよりここはどこだ?川はどこへ消えた?」
「ばーか、ばーか。意地悪なお兄さんには何にも教えてあげない。必死に謝って、その後、お礼をちゃんと言ってくれれば許してあげる」
「他をあたるわ」
「お兄さんは強情だね。良いよ、特別に教えてあげる。この場所は大河国の北東に三時間歩いた先にある、始まりの森と呼ばれている場所だよ。それとこの森には川はないよ?ちゃんと教えたんだからお礼を言ってよね」
「お前の言葉が正しいと判断できれば礼を言う」
少女は眉間に皺を寄せながら、プルプルと怒りを我慢していた。