92話 アオたちとの遊び!①(休日)
目を覚ますと窓から光が差し込んでくる。俺は布団を片付けて窓の外を眺めると、昨日までの雨が嘘のように無くなり、雲一つない青空が広がっていた。所々に水溜まりは残っているが、それが光を反射してキラキラと輝いていた。
俺はそんな景色を眺めながらくつろいでいると、コンコンと扉をノックされ「シンくん遊ぼう!」と扉の向こうから声が聞こえてきた。
「その声はアオかな? 今開けるから待ってて」
扉を開けると、やはり声の正体はアオだった。
「シンくん、遊びに行こう!」
「数日ぶりだね、どうしてここにいるってわかったの?」
「シンくんがここの宿を拠点にしているってハンナさんに教えてもらって来ちゃった」
「そういうことか。ここを紹介してくれたのはハンナさんだし納得したよ。ところで、遊びに来たってどういうこと? クエストにはいかなくていいの?」
「あぁ……そのことなんだけど、実は…………」
アオの話しによると、連日の雨でクエストをやらなかった冒険者が多く、晴れた今日に大量の冒険者が集まり、掲示板に貼り出されていたクエストを全部持っていかれてしまったようだ。それだけならまだ良かったけど、アオたち以外もクエストに行けない冒険者が多くて、今もギルドに残って昼のクエストが貼り出されるのを待っているらしい。
「なるほどね、じゃあ今日はギルドに行ってもクエストができそうにないのか」
「そうそう、だからこれからみんなを集めて遊びに行こうよ!」
「俺は良いけど集まるかなぁ」
「大丈夫! ハクくんとユカリちゃんは『今日はクエストに行かない』って言って帰っちゃったから、誘えば来てくれると思う」
「分かった、じゃあ朝食済ませてから行くから待ってて」
「外で待ってるね」
アオは部屋から出て行き、俺は装備を整えて食堂に向かい、朝食を急いで胃に流し込み、外で待っているアオの所まで早歩きで向かった。
「お待たせ」
「僕の方こそ急がせちゃってごめんね。じゃあハクくんたちの所に行こうか」
俺はアオと横並びで話しながら歩いた。鉱石調達クエストのときはのんびりと話している余裕はなかったけど、今は他愛ないことでも話せるほど気が緩んでいた。
ギルドを通り過ぎ、数分歩くとアオは足を止める。
「ここが僕たちが住んでいる宿屋だよ」
「こんな所にも宿屋があったのか」
俺が使っている宿屋より見た目は小さい、宿の端の方に入り口があり、そこから中に入ってみると、横に3人くらいしか広がれない幅の通路が1本だけあり、1番奥は壁になっていた。
左側には6つの扉、右側には扉と同じ数だけの窓があるだけの寂しい感じだった。
「宿屋なのに店主の人がいないんだね、見たところ部屋しかなさそう」
「ここの宿屋は特殊でね、部屋しかない珍しい宿屋なんだよ」
「店主がいないのにどうやってこの宿屋に泊まるの?」
「それはね、ギルドで部屋を借りる人を募集していたりするから、そのときに店主さんと会って部屋を借りられたんだよ。ここが僕の部屋、さあ入ってみて」
アオは宿屋の入り口から5番目の部屋に住んでいるようで、アオが扉を開けると、俺の部屋の2倍くらい広かった。
部屋の真ん中には木製のテーブルとイスがあり、壁際にはベッドと棚があった。俺はイスに座り、アオはベッドに座った。
「広いね。これなら結構高いんじゃないの?」
「1か月で7500Gだったかなぁ」
「1ヵ月? 1日ごとに借りるんじゃないの?」
「ここの宿屋は借りるときに1か月分の宿代を払わないといけないみたいなんだよね。でも、部屋の中にある家具は使っていいって言われているよ。すぐ空き部屋が無くなるって言われたから借りちゃった」
「1か月は大体30日だから、1日250G借りられちゃうのか。あれ? めちゃくちゃ安いよ。確かギルド系列の宿屋でも家具付きは1泊300Gだよ」
「なんで安いんだろうね?」
「1か月も借り続けるから安くなっているのかな?」
「なのかな?」
アオはよくわかっていないみたいだったが、俺も仕組みが分からないためこの話しはここで切り上げた。
「ハクたちを遊びに誘わなくていいの?」
「そうだね! シンくんと楽しくお話しできて忘れる所だったよ。それじゃあ行こうか」
アオと俺は部屋を出て、1番奥にある部屋に向かった。
「ここはユカリちゃんの部屋なんだ」
アオはそう言って扉をノックして「ユカリちゃん、遊ぼう!」と言った。部屋の中から「行きますわ」とユカリの声が聞こえてくる。
行くと言われてから1分くらい待つとユカリの部屋ではなく、宿屋の入り口から4番目の部屋の扉が開いた。
「……俺も行こう」
「あ! ハクくんも来てくれるの! やったね」
4番目の部屋に住んでいたのはハクだった。
「ハクはアオに誘われる前から準備を終わらせるって凄いね」
「……シンとアオの話し声が聞こえていたからな……俺も誘われるだろうと思って本を読むのを止めて装備を整えていた」
ハクがそう言い終わると、ユカリの方の扉が開いた。
「あら! アオくんだけじゃなくてシンくんにハクくんまで来てくれるのね。嬉しいですわ」
部屋から出てきたユカリは、白いワンピースを着て麦わら帽子を頭に被り、完全に俺たち男3人と服装が違っていた。
「かわいい……」
「ありがとうシンくん」
俺がユカリを見てつい言ってしまったことに、ユカリは頬を少し赤くして嬉しそうにお礼を言ってくれた。
「似合ってるよユカリちゃん!」
「……良いんじゃないか?」
「アオくんもハクくんもありがとう。それじゃあどこに遊びに行くのかしら?」
「どこにしようかな?」
「考えてなかったの!?」
アオが遊びに誘ってきたのに、どこに行くか決めていないことに俺は驚いた。ハクはアオを睨むように見ている。
「ちょっと待って、今考えるから……そうだ! 行ってみたい場所があるからそこにしよう!」
どうやら行先は決まったようだが、いったいどこに行くのだろうか?
数日ぶりの晴れの日にアオが遊びに誘ってきた。
ハクとユカリも遊びに来てくれるようで、4人で今日は遊ぶみたいである。
俺とアオとハクは冒険者のときと同じ装備だが、ユカリは白いワンピースに麦わら帽子を被った格好をしている。
アオは行ってみたい場所があるらしくそこに向かうことになった。遊びなのか疑問ではあるが、アオはどこに行きたいのだろう?




