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90話 ☆2『雷の魔法石』①(天気)

 ドコォォォン!



「なっ……なんだ!?」



 いきなり大きな音がして布団から飛び起きた。部屋の中にいるのに雨の音がうるさくて、自分の声が聞き取りにくい。


 チカチカと光って数秒後、再びドコォォォン! という音が響き渡った。



「うぉ、音の正体は雷か!」



 俺は慣れてくるまで耳を塞いで耐えていた。






「ふぅ……だいぶ耳が慣れてきた。この天気でギルドに行かなきゃいけないのか……はぁ、でもドラコニスにやってもらいたいクエストがあるって言われちゃったし、行かないとだよなぁ……よし、準備をするか!」



 俺はドラコニスさんからもらった服とズボンを着てみた。大きさは俺に合うように作られているみたいで、着やすいようになっていた。


 レインコートを着て宿屋から外に出ると、雨は上から横からと風で方向を変えながら身体に当たっていく。急いでギルドへ向かい中に入っていった。






「酷い雨だったな……あれ、誰もいない?」



 1階のギルド内には冒険者だけでなく、ハンナさんを含めたギルド職員はいなかった。掲示板にクエストは数枚貼られているだけで、受付から奥を覗き込んでも誰もいなかった。



「誰かいますか!」


「…………いまそちらに向かいます!」



 俺が大きな声で呼んだら、どこからか声が聞こえてきた。しばらく受付の所で待つと、2階から人が降りてきた。



「私は上位冒険者の受付をやっている者です。あなたは下位冒険者のようですが、今日はどのようなご用件で?」


「あの、ドラコニスさんに今日やってもらいたいクエストがあると言われて来ました」


「ギルド長がそんなことを……ということは、あなたがシンさんで間違いないですか?」


「はいそうです」


「分かりました、ギルド長からあなたが来たら部屋まで案内するように伝えられています、どうぞこちらへ」



 掲示板の横の扉から奥へ進み、部屋に案内されて座らされた。



「ギルド長を呼んできますのでしばらくお待ちください」



 俺は1人この部屋で待つことにした。しばらくするとドラコニスさんが部屋に入ってくる。



「シンくんよく来てくれました。今日は特に酷い天気でしたので来ないかもしれないと思っていました」


「俺も行くのをやめようか考えていましたが、クエストを受けると約束してしまっていたので、頑張ってみました。ところで、ギルド職員がほとんどいないようですけど、何かあったのですか?」


「今日の天気が悪すぎて、冒険者もほとんど来ないだろうということで、一部のギルド職員以外は休みにさせています」


「こんな天気で来る冒険者なんているんですかね?」


「こういう天気じゃないとできないクエストもあるので、それをやる冒険者は来ることがあります」



 ドラコニスさんは懐から1枚の紙を取り出した。



「そろそろ本題に行きましょうか。シンくんがこれから受けるクエストはこちらになります」


 ――


 (ほし)2『雷の魔法石』


 クリア条件:雷の魔法石を納品


 報酬金:700(ゴールド) 1500GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)2から(ほし)3冒険者1人以上


 ~依頼内容~


 魔法石に落雷を当てて雷の魔法石を作り、ギルドまで納品。


 ――


(ほし)2のクエストなのに報酬が高い!」


「こんな天候でしかできませんからね」



 コンコンとノックされギルド職員が入ってくる。両手で箱を抱えて部屋に運んできた。運び終わったギルド職員は一礼をして部屋から出て行った。


 ドラコニスさんは箱を開けると、中には青く光る石がたくさん入っていた。



「この箱の中には魔法石が入っています。シンくんにはこれから向かう場所でこの魔法石を全て『雷の魔法石』にしてもらいます」


「分かりました、それでこれから向かう場所とは?」


「それはアルガル山の頂上に行ってもらいます。そこの頂上には雷が必ず落ちる場所があります、そこにこの魔法石を置き、雷を当てることで『雷の魔法石』が完成します」


「なるほど、アルガル山って何ですか?」


「アルガル山はアルン国が所有する山の1つです。アルンの街の入り口とは反対の方角に進むと見えてきます。この天気ですから、今日は近づくまで見えてこないと思いますが、道なりに進んで行けば迷うことは無いでしょう。ではシンくんクエストよろしくお願いします」


「分かりました、頑張ります!」



 俺は箱を背負いギルドから出た。






「街の入り口と反対の方向だからこっちに進むんだよね?」



 俺は普段通らない街中を歩いていく。周りには見たことのある建物が並んでいるが、知らない道であった。しばらく歩くと、街の反対側に辿り着いた。ここから進めばアルガル山に行ける。


 俺は街の外に出て歩いていく、馬車もこの天気じゃ動いていないので仕方のないことだ。反対側と言うこともあり、目立ったものはなかった。たまに聞こえてくる雷に驚きながら、アルガル山を目指して行く。


 ドコォォォン!



「うぉ! あれがアルガル山だな!」



 雷が落ちるときに見えた光で、山の形を見ることができた。


 ドコォォォン! ドコォォォン! ドコォォォン!


 近づくほど光ってから音が聞こえるまでの時間が短くなってくる。



「本当だ、何回も同じ位置に雷が落ちている。あそこが頂上ってことだな!」



 そうして俺は歩き続けてアルガル山に辿り着いた。

外は大雨で雷まで落ちてくる酷い天気、そんな状態だからこそできるクエストを受けて、アルガル山の頂上を目指す。



アイテムの紹介


・雷の魔法石


雷属性を持った魔法石、武器や防具や錬金の素材として使われることが多い。



地名の紹介


・アルガル山


アルン国が所有する山の1つ。岩肌ばかりで植物は少なく、食べ物も少ないので生き物がほとんどいない。

このアルガル山から魔法石を入手することができるが、魔素の濃度が薄いからか、純度の低い魔法石が多い。


また、頂上には雷が落ちてくる場所があり、そこに魔法石などを置くと雷属性を付けることができる。

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