9話 授業!④(対策)
授業四日目
俺たちは基礎体力作りの走り込みと、魔法の鍛錬として瞑想と、武器の素振りをしていた。みんな慣れてきたのか初日よりも早くなっている。
朝の鍛錬は何事もなく終わりお昼の授業が始まる。
「冒険者にはランクというものがあります。大まかに、『下位・上位・最上位』の3つがあります」
黒板に下位・上位・最上位と書いていく。
「それぞれのランクには決まったクエスト難易度があり、クエスト難易度は☆の数であらわされます。『☆1~☆3』が下位で、『☆4~☆6』が上位で、『☆7以上』が最上位です。それぞれ1段階ずつ難易度が決められていますが、上位からは『+』という難易度も追加され細かくなります」
「『☆4』『☆4+』『☆5』『☆5+』などといった難易度になります。
詳しいことは上位冒険者になってからで大丈夫です」
難しそうな授業にならなくて生徒たちはホッとしていた。
「なぜ冒険者には『下位・上位・最上位』と分けられているのかについて解説します」
下位は、生活に使う素材集めや小型の魔物を討伐。
上位は、危険な地域にある素材集めや強個体・当然変異種の調査や討伐。
最上位は、未知の地域の調査、村や町や国に災害をもたらす魔物の撃退や討伐。
などとランド先生は黒板に書いていった。
「もちろんここに書かれていること以外のクエストもあります。冒険者は自分のランクにあるクエストしか受けることができません。下位なら下位、上位なら上位。上位が下位のクエストを受けることはできません」
なぜ上位のクエストを受けられる冒険者が、下位のクエストを受けられないのか疑問に思った俺が質問してみる。
「ランド先生、上位の冒険者はなぜ下位クエストを受けることができないのですか?」
「……昔とても責任感の強い冒険者がいたからです。素材集めに護衛に魔物の討伐にと、あらゆるクエストを1人で受けていた冒険者が。彼は魔王を倒せる可能性があるほどの強さだったそうです。そんな彼はクエストで戦死……理由は過労によると言われています」
教室は静かになっていた。
「みんなでやればその人の負担も減ったのでは?」
「今と比べて昔は冒険者が少なかったのです。ほとんどが1日に1つクエストを受けるなんて当たり前でした。彼はその何倍ものクエストを受けていたそうです。彼にしかできないクエストはもちろん、彼以外でもできるクエストを……」
「……だからクエストに制限を……」
自分の両手の平を合わせ、バンッ!と音を鳴らしたランド先生。俺たちはそれに驚き身体が跳ねる。
「驚かせてしまってすみません。暗い話はここまでにしましょう。今は冒険者も数が増えましたし、受けられるクエストに制限がないと取り合いになってしまう。そう思ってもらえれば大丈夫です」
笑顔でランド先生は答えた。
「今日の授業は以上です。明日は今まで授業で学んだことをテストしますので、復習を忘れずに、それではまた明日」
「「「……えっ」」」
ランド先生はそう言って教室から出ていった。
「どうしよう!勉強なんかできない!」「勉強しなきゃ……勉強しなきゃ……」
そんな声が教室であふれかえっていた。
「みんなは勉強大丈夫なの?」
リクとハクとアオに聞いてみる。
「前にもやったことあるから多分いける!」
「……問題ない」
「僕は不安かなぁ……」
リクは顔に汗を出しながら答えていて怪しい。ハクは本当に問題なさそう。アオは素直に不安だと言ってくれた。
「よし!今から俺たちで復習するぞ!」
「シンくんありがとう!」
俺たちが復習のための準備をしていると、こちらに向かって歩いてくる人がいた。
「あの、私もその復習に参加してもいいかしら?シンくん」
そこにいたのは紫色の髪をした女の子だ。お腹くらいまで伸びている長い髪で、かわいい顔をしていた。
「あっ……あぁ良いよ、一緒にやろう……あれ?俺君に名乗ったっけ?」
「昨日木の魔物を見破ったときに名前を呼ばれていたので覚えていただけです。身体はダメでも知識ならかなりのものと思ってね。シンくんを利用するようで悪いけど」
口に手を当てながら、ふふっと彼女は笑った。
「ははは……そんなにはっきり言われちゃうか……ところで君はなんて名前なの?」
まだ彼女の名前を聞いていないので質問してみた。
女の子の名前を自分から聞くなんて初めてかもしれない。
「私はユカリって名前、よろしくね」
「よろしくユカリ!」
彼女の名前はユカリと言うらしい。リクとハクとアオもユカリに自己紹介をした。
「みんなの自己紹介も終わったことだし勉強するよ!リクはテスト受けたことあるんだよね?前はどんなテストだったの?」
「あーたしか魔物がどこで出るとか、何が苦手とかだったかな?」
「なるほど。じゃあそこを勉強してみるか。みんな本を開いて」
俺たちは本を開く。みんなはざっと読んだらパラパラと次のページをめくっていた。
「本は10ページまで読むだけで良いと思う」
「……どうしてそう思うんだ」
ハクがそのように質問してきた。
「ランド先生は『今まで授業で学んだことをテストします』と言ってた。俺たちがこの本で授業をやったのは8ページまでだからだ」
「でも、それなら8ページまでをやればいいのではないですか?」
「ユカリの言ってることは正しい。ただ10ページ目を見てほしい」
「……!なるほど」
ハクが10ページ目を開くと、そこにはゴブリンについて書かれていたページだった。
「ゴブリンは昨日戦っていたもんな!」
「確かにこれは出るかもしれないね」
リクもアオも納得してくれたようだ。それからは魔物の出現場所や攻撃方法、弱点などを問題として出して、それに答えられるかをやっていた。
「シンくんのおかげでかなり覚えられたわ!凄いわね!」
「いやいやそれほどでも、まだ魔法やアイテムについても覚えなくちゃいけないしね」
俺は顔を赤くしながらそう答えた。そうして俺たちは今日やったことはもちろん、魔法やアイテムについてもしっかり勉強した。
――
テスト当日
テストがあるからといって、俺たちは基礎体力作りの走り込みと、魔法の鍛錬として瞑想と、武器の素振りは休みにはならなかった。それが終わり次第みんなは食堂でお昼ご飯を食べながら、テスト前最後の勉強をする。昨日までできていた問題が答えられなくなっていたみたいなので、やっといてよかった。
教室に着くと教室にはもう裏向きに配置されているテストが配られていた。俺たち5人はお互いを見つめて『頑張ろう』と念じて、間隔を開けられた席に着いた。
「……ではそろそろテストを始めます。ペンはちゃんと用意しましたね。テストが始まったらまず名前を書いてくださいね。……では始めてください」
ランド先生の声を聞いて、教室には紙の擦れる音が多く聞こえた。