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88話 ☆2『毒草調達』①(備え)

 俺はお昼のクエストが貼り出されるのを待っていた。朝に比べて冒険者の数が少ないが、みんな朝のクエストをやっていて来ていないのかと思っていたが、外を見てみると小雨が降り始めていた。もしかしたら、この雨の影響でたまたま冒険者が少ないのかもしれない。


 少しするとギルド職員が掲示板にクエストを貼り始めた。みんな邪魔にならない位置で貼り出されたクエストを品定めしている。


 (ほし)1のクエストを貼り終えると(ほし)2に、そこも貼り終えると(ほし)3のクエストを貼り始める。冒険者の何人かは(ほし)2の掲示板に近づいて行ったので、俺もつられて掲示板の前に行きクエストを探す。



「どれがいいかなー」



 俺が迷っている間に他の冒険者たちは選び終えて、掲示板の前には俺しかいなかった。


 できそうなクエストを探していると、今の俺にピッタリのクエストが見つかった。



「『毒草調達』か、これは倉庫で見たから分かるぞ。それに、ドラコニスさんからもらった指輪も早速役に立ちそうだ」



 俺はクエストを掲示板から剥がしてハンナさんの所に持って行った。






「ハンナさんこんにちは。このクエストお願いします」


「シンさんこんにちは! このクエストですね、分かりました。クエスト内容を確認します」


 ――


 (ほし)2『毒草調達』


 クリア条件:毒草を20つ納品


 報酬金:300(ゴールド) 950GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)2から(ほし)3冒険者1人


 ~依頼内容~


 毒がある場所に生えている毒草を20つ採取して、ギルドまで納品。

 葉が10枚で毒草1つとする。


 ポイズンスライム出現可能性あり。


 ――


「このような内容ですが、クエストを受けますか?」


「はい、受けます」


「それではクエストを受注します。クエスト頑張ってくださいね」


「頑張ります!」



 ギルドから出ようとすると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。



「ようシン、また会ったな」


「ナーゲさん! 一昨日ぶりですね」



 2階で俺を見下ろしているナーゲさんが飛び降りると、軽い身のこなしで楽々着地する。



「今日は何のクエストをやるつもりだ?」


「『毒草調達』を受けました!」


「毒草ね、解毒薬は持っているのか?」


「持ってないですけど、俺にはこの指輪があるので大丈夫だと思います」



 俺はドラコニスさんからもらった指輪を箱から取り出してナーゲさんに見せた。



「へぇ、毒耐性の指輪か。下位冒険者で錬金装備を持っているなんて珍しいな。武器や防具に金かけているやつばかりなのによ」


「これは買った物じゃなくて、ギルド長のドラコニスさんからお手伝いした報酬で貰いました」


「あの人か。シンが何を手伝ったか知らないが、今後のクエストに役に立つだろうよ。あとその指輪で防げるのは弱い毒までだ、毒草のある場所には毒を操る魔物だって出てくる、そいつらの毒には指輪で防ぎきれないこともある、準備は怠るなよ。だが、今は雨が降っているみたいだから、魔物は隠れているかもな」


「はい、気を付けます!」


「気を付けるなら解毒薬を何本か買ってこい、俺から言えることはそれだけだ。またな」



 ナーゲさんはそう言うと俺の横を通りすぎてギルドから出て行った。


 俺は道具屋で解毒薬を複数買って出発する。






 ギルドから出ると雨が身体に当たる、手のひらで雨を感じているが、どんどん雨は強くなっているようだ。



「うわ……これは移動中に本格的に強くなってくるな。宿に戻って装備整えてこなきゃ」



 俺は自分の部屋に戻ってレインコートを着る、ついでに毒耐性の指輪も装備するため指にはめようとすると、俺の指が小さいのか、隙間ができていて簡単に抜けそうだった。



「もしかして装備できない感じ!? うぉ!」



 装備できないと思っていたら、指にはめていた指輪が急に縮んで俺の指にピッタリくっ付いた。外そうとすると元の大きさに戻り簡単に外れ、指にはめるとまた縮んでくっ付いた。



「装備する人に合わせて大きさが変わるのか、便利だなぁ」



 指輪の変化に感動しつつも準備を終わらせ、毒草目指して街の外に出た。






 ■






 道なりに進んで行く、いつもはここから森に向かって進む方向を変えるが、今回はもっと先に進んだ所に毒草が生えている場所がある。


 雨は徐々に強くなっているが、前からも後ろからも荷物を載せた馬車が俺の横を通っていく。こんな天候でも商人たちは仕事をしているようだ。


 しばらく歩くと、脇道に木の柵と看板が見えてきた。そちらに向かい看板を読むと『この先毒沼』と書かれていた。



「この先か……よし行くぞ!」



 俺は看板を頼りに真っすぐ歩いて行った。






 歩いていくと、膝くらいまで伸びていた雑草はどんどん少なくなってきて、枯れた草や木が所々に現れ始めた。



「この辺りから毒草がありそうだな。毒草は毒を栄養にして育っているみたいだから、まず毒のある場所を探さなきゃ」



 見逃しが無いように注意深く地面を見て歩いていく。雨の影響か水溜まりができ始めていた、その水溜まりを見ていると、紫色の液体が流れている、その液体をたどっていくと、地面が丸見えで枯れた草すら近くに生えていない紫色の水溜まりがあった。



「これが毒沼か……」



 毒沼に雨が入っていって周りに流れているようだ。雨で量が増えているので元の大きさが分からないが、直径1(メートル)くらいの大きさの毒沼になっていた。


 その毒沼の真ん中付近に草が生えている。



「あれが毒草だな、でも採るためには毒沼に足を入れないといけないのか……嫌だなぁ」



 しばらく足を入れないで採る方法を考えていたが、時間が経つにつれて、毒沼が大きくなっていることに気が付いた。このまま待っていても余計酷くなると判断して、意を決して毒沼に足を踏み入れた。



「さっさと毒草を採って出なきゃ」



 俺は急いで毒草を採って袋に詰めていく、全部採り終えるとすぐに毒沼から脱出した。靴には一切汚れが付いていなかった。



「おぉぉ! レインブーツは毒も弾くのか! 確かに毒も液体だけどこれにはビックリ、道具屋の人の押しに負けて買った割には良い買い物だったんだなぁ。指輪も効いているのか効いていないか分からないけど、毒にかかっているようには感じないし、このまま毒草採っていくぞ!」



 俺は次の毒沼を探して進んで行く、しばらく歩くと、また流れる水に紫色の液体が混ざっていた。たどっていくと大きめの毒沼があり、何本も毒草が生えていた。それを俺は袋に詰めていく。


 ここだけで毒草10つ分を手に入れることができた。



「これでようやく半分か、あれ、こんなに景色は紫色だったっけ?」



 毒草をまとめていたら、周りは紫色の霧で覆われていた。



「スラ」


「! 魔物がいるのか!?」



 俺は武器を出し周りを警戒するが魔物は見当たらない、雨で視界が悪くなっているのに更に紫色の霧まで出始めている。注意深く周りを見渡しても魔物は見つからなかった。



「スラ」


「声は聞こえるから近くにいるはずなのに見つけられない!? どこにいるんだ、それに何だこの霧、どんどん濃くなっていく」



 ふと毒沼の方を見ると紫色の霧が出てくるのが見えた。そして発生源を見つめると毒沼に隠れて何か動いている。



「『スマッシュ』!」


「スラ!」



 霧が出てきている場所に向かってスマッシュを使うと、紫色の何者かが姿を現した。



「スラ」


「あれは、何の魔物だ? もしかしてクエストに書いてあったポイズンスライムってこいつのことか!」



 ポイズンスライムは、スライムが溶けたような見た目をしている紫色のスライムだ。口からは紫色の霧を出している。



「ってことはこの霧は毒霧ってことか、結構吸い込んでいるけど毒になっていないってことは、毒耐性の指輪が効いているってことだな」


「スラ!」



 ポイズンスライムは毒沼に入って姿を隠した。



「あの毒沼のどこかにいるのは分かっているのに、どこを攻撃すればいいか分からない、どうするか……」



 ポイズンスライムと戦うか逃げるか、どちらを選択するか……俺しかこの場にいない以上、俺が考えて何とかこの状況を打開しなくちゃ!

お手伝いをしているうちに雨が降ってきたようで、お昼のクエストを受注する冒険者が少なかったみたいだ。


俺は毒耐性の指輪を貰ったことで、毒草調達のクエストを受注する。ギルドでナーゲさんに会って「準備は怠るな」とアドバイスをもらって解毒薬を買った。


雨のせいで毒沼が大きくなっていたが、なんとか10つの毒草を調達することに成功、しかし、毒沼に隠れていたポイズンスライムが毒霧を使い、辺りを紫色の霧で包み込む。


戦うか逃げるか、どちらを選択するのか!



魔物の紹介


・ポイズンスライム


スライムが溶けたような見た目をしている紫色のスライム。

毒沼に隠れて毒霧を使い、冒険者を毒状態にしてくる。


近くにある毒沼から水を集めて、それを塊として投げつけてくる攻撃をしてくる。


毒を好むためか、生息地は毒のある所が多い。また、その場所の毒の強さによって、ポイズンスライムの毒の強さも変わる。

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