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87話 ドラコニスのお手伝い!(指輪)

 目が覚めると薄暗い光が窓から入ってくる、布団を片付けて外を見ると曇りだと分かった。俺は宿屋の朝食を食べてギルドへ向かう。






 ギルドに着くと、冒険者はほとんどいなかった。ギルドに設置してある時計を見ると、朝と言うには時間が経ち過ぎていた。どうやら冒険者が少ないのは俺が起きるのが遅かったからようだ。


 掲示板でクエストを探すが、ほとんどクエストがなく、あっても俺にはクリアすることが難しいものばかりだった。



「今日はクエスト受けられそうにないな……」


「おや、シンくんじゃないですか。こんな時間にまだギルドにいるなんて、何かあったのですか?」



 やれるクエストが無いことに落ち込んでいた俺に話しかけてきたのはギルド長のドラコニスだった。



「実は寝坊しちゃったみたいで、ここに来たときには俺がクリアできそうなクエストは無くなっていたんですよ……ははは……」


「そういうことは冒険者である以上当たり前のようにあることですね。みなさん生活がありますから、報酬が良いもの、楽なものと早い者勝ちで取られていきます。残るのは報酬が悪いもの、難しいものなどのクエストが残っていきます。

 我々はなるべくそのようなクエストが出ないように気を付けていますが、何百とクエストを作っているとそのようなクエストもでてきてしまいます」



 ドラコニスさんが言うことは正論だ。冒険者はみんな命がけでやっている、やるからには良いものを選ぶのは当たり前だ。



「やっぱりそうですよね、今日は宿でゆっくりしたいと思います」



 俺が宿に帰ろうとするとドラコニスさんが呼び止めてきた。



「シンくん、もし良ければ、新しいクエストが貼り出されるまでの間、我々のお手伝いをしてみる気はありませんか?」


「新しいクエストが貼り出される?」


「はい、ギルドのクエストは、朝と昼と夜の3回クエストを貼り出しています。ですので、昼に貼り出されるまでの時間潰しに、我々のお手伝いはどうでしょうか? もちろん少しばかり報酬は出しますよ」


「何を手伝えば良いのでしょうか? それを聞かないことには返事ができません」


「そうでしたね。シンくんにやってもらいたいことは、倉庫にあるアイテムを同じ個数と種類になるようにまとめて欲しいのです。例えば、薬草を10つ、毒消し草10つ、ポーション5つ、みたいな感じです」


「なるほど、そういうことでしたら俺でもできそうですね!」



 内容は簡単そうなので、俺はお手伝いをすることに決めた。早速ドラコニスさんは俺を倉庫の所まで連れて行った。






 しばらく歩くとドラコニスさん扉の前で止まる、扉には『倉庫1』と書かれた板と、小さい青い球が1つ張り付いていた。



「こちらの倉庫にあるものをシンくんにまとめてもらいます。まとめる物のリストを持ってくるので、その間にシンくんは倉庫の中がどうなっているか確認しておいてください」


「分かりました!」



 ドラコニスさんは倉庫のカギを開けると、リストを持ってくるためにこの場から立ち去った。


 俺は倉庫の扉を開け中に入る。俺が入ると、暗かった倉庫が急に明るくなった。明るくなった正体は、天井に大きめの球が設置してあり、それが光を放って倉庫を照らしているようだ。



「昨日コカさんが使っていた『ライト』みたいに明るいな。おっと、感心している場合じゃなかった。一通り中を確認しなくちゃ」



 倉庫を見渡すと扉付近は何も無いが、壁になっている所には棚がずらっと並んでいて、木箱や袋が棚の中に置かれていた。棚に近づくと『薬草』と書かれた板があり、その下にある袋を開いて中を覗くと『薬草』が入っていた。


 袋を閉じ、別の棚の所には『ポーション』と書かれた板があり、その下にある木箱を開けると、中には『ポーション』の入ったビンが綺麗に並んでいた。



「なるほど、板にアイテム名が書かれていて、その下にそのアイテムが置かれているって感じだな」



 倉庫がどういう風にアイテムを管理しているか分かったところで扉がノックされ、ドラコニスさんがリストの紙と、たくさんの袋を持って入ってくる。



「こちらがシンくんにまとめてもらいたいリストです」


「えっ……こんなにやるんですか?」



 ドラコニスさんが持ってきたリストの紙は手から肘くらいまでの高さがあった。



「いえいえ、全部をやる必要はありません、できる所までで結構です。この半分も出来れば十分だと僕は思っているので、終わらなくても気にしなくて良いですよ」



 そう聞いて俺は安心した。



「では、やり方を説明します。まずこちらのリスト1枚に必要なアイテムと個数が描かれています。それをこの袋に詰めて、全部詰め終わったら、このリストを袋に付けて邪魔にならない位置に置いてください。この説明で伝わっていますか?」


「はい、大丈夫だと思います」


「分かりました、では1度試してみましょう。このリストに描かれているアイテムを袋に入れて来てください」



 ドラコニスさんから渡されたリストには『ポーション5つ』と書かれていた。俺はポーションが置いてあった所に向かいポーションを5つ袋に詰めていく。それをドラコニスさんの所まで持って行った。



「これで良いですか?」


「確認します…………はい、しっかりポーション5つ入っていますね。後はこのリストを袋に付けるだけです。袋のどこでも良いので近づけてみてください」



 俺はリストを袋に近づけると、リストは袋に軽く引っ張られているようで、手を放しても袋にくっ付いていた。



「リストの貼り方も分かりましたね。それでは邪魔にならない所に袋を置きましょう」



 俺は棚と扉から少し離れた位置に袋を置いた。



「よくできました。以上がシンくんにやってもらう内容です、よろしくお願いします」


「頑張ります!」



 ドラコニスさんが軽く頭を下げたので、俺も軽く頭を下げて頑張る気持ちを伝えた。



「では、次僕が来るときは昼のクエストが貼り出される前に来ますので、僕が来るまでは倉庫にあるアイテムを倉庫の外に出さないようにお願いします」



 そう言って、ドラコニスさんは倉庫から出て行った。



「よーし、やるぞー!」



 俺はリストに書かれているアイテムを次々袋に詰めていった。






「……えっと、この袋には、解毒薬3つとスーパーポーション3つ…………この袋には、空気草10つと毒草10つ…………この袋には、火炎草5つと冷凍草5つ…………板にアイテム名が書いてあるから良いけど、見たことも聞いたこともないアイテムがあって怖いな。間違って入れていたらどうしよう。

 リストに空気草と毒草を一緒にするものもあったけど、毒ガスでも作るつもりなのかな?」



 そういう冗談を呟きつつ、リストに書かれたアイテムを袋に詰めていった。



「次は、ポーション5つ……あっ、ポーションが4つしかない。他にポーションあったっけ?」



 倉庫中を探してみたが、別のアイテム名が書いてあるだけで、ポーションはここにある4つが最後のようだ。



「無いものは袋に詰められないから、このリストは諦めるしかないな」



 それから徐々に、倉庫に無くて袋に詰められないアイテムが増えていった。



「ふぅ……これで限界かな? 全部のリストは確認したけど、3分の1はアイテムが足りなくて達成できないリストだったなぁ。でもこれだけ袋に詰めたんだし、頑張った方だよね」



 倉庫にはリスト通りの中身が入った袋が床にたくさん置かれていた。


 やることが無くなって休んでいると、扉がノックされてドラコニスさんと数人のギルド職員が倉庫にやって来た。



「おぉ! たくさんやってくれたみたいですね。では、中身の確認をお願いします」


「「「はい!」」」



 ドラコニスさんに指示をされたギルド職員が俺の詰めた袋の中を確認し始めた。ギルド職員は「異常なし」と言うと、袋を閉じ倉庫から出て、廊下にある荷台に乗せていく。


 こうしてどんどん袋は運ばれていって、俺が詰めた袋は全て回収されていった。



「まさか1つも「異常あり」が出ないとは思いませんでした。素晴らしい」



 そう言うとドラコニスさんは拍手をして俺を褒めた。



「あ、このリストなんですけど、倉庫にアイテムが足りなくて袋に詰められなかったやつです」


「ふむ……やはりここにある分だけでは足りませんでしたか……わざわざそのことまで教えていただきありがとうございます。いやぁ、お手伝いのつもりだったので、シンくんに渡す報酬はそこまで良いものを用意していませんでした。後日追加で報酬を用意しますので、一先ずはこちらを受け取ってください」



 ドラコニスさんは俺に手のひらサイズの箱を渡してきた。中を開けると、指輪が出てきた。



「指輪?」


「この指輪は装備すると毒に強くなることができる便利な装備品です」


「そんな便利なアイテムがあるのですね」


「あくまで毒に強くなるだけですので、強い毒になると毒にかかってしまいますが、弱い毒であれば、この指輪を装備しているだけで大丈夫になります。ただ、毒にかかってから装備しても毒が消えることは無いので注意してください」


「分かりました! ありがとうございます!」


「いえいえ、ではシンくん。そろそろ昼のクエストが貼り出される時間になりますので、行きましょうか」


「はい!」



 俺はこうして、ドラコニスさんの手伝いを終え、昼のクエストが貼り出されるのを待つのであった。

寝坊してできるクエストが無くなっていたけど、ドラコニスの手伝いをすることで時間を潰すことができた。


倉庫のアイテムをリストに書かれた通りに袋に詰めていく作業をして、

ドラコニスから毒に強くなる指輪を報酬でもらった。



アイテムの紹介


・『毒草』


毒がある草、色々な毒の材料になる。

毒が多い場所によく生えている。


・『火炎草』


食べると口から火が出るらしい草、主に身体を温めるアイテムの材料。

熱い所に多く生えている。


・『冷凍草』


食べると口から冷たい息が出るらしい草、主に身体を冷やすアイテムの材料。

寒い所に多く生えている。



装備品の紹介


・『毒耐性の指輪』


装備した人に『毒耐性』のパッシブを付ける。ただ、弱い毒にしか効果は無く、

強い毒にはかかってしまう。

毒になってから装備しても、毒が消えることは無いので注意。

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